若者よ、ふざけなさい。近大生24名がイシスに挑む【49[守]開講】

2022/04/25(月)20:54
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廊下は走るな、教室で騒ぐな、寄り道はダメ、いい子でいなさい――。学校には禁止事項が多い。しかしこの学校は真逆だった。教員川野貴志は言った。「みなさんには、ふざけてもらいたい」イシス編集学校49[守]開講日の晩である。

 

基本コース[守]は、今期も近畿大学の学生24名を学衆として迎えた。近大といえば、近大マグロとして研究成果が知られる、人気がうなぎのぼりの私立大学だ。ビブリオシアターと呼ばれる図書館を松岡正剛が監修し、イシスとも縁が深い。編集術を身につけて、大学での学びに活かしたい。そう闘志に燃える24名が開講日の4月25日18時半、授業を終えた身でZoomに集い、特別なワークショップに参加していた。近大学生のみに用意された「交流会」である。

 

自分をお菓子に喩える「おかしなわたし」の自己紹介。それを聞けば、彼らの秘めたる熱意がわかる。

「私は非常食に使われる乾パンです。まじめで頭が固いと言われるけれど、切羽詰ったとききには役に立ちます」(脱皮ザリガニ教室K)
「私はくっつくとなかなか離れないガムです。やると決めたら、諦めずにやりきります」(三叉毘沙門教室N)

さすが選考を勝ち抜いた学生だけある。熱量も器量も度量も十分だ。そんな彼らに、近大番として今期も並走する川野貴志が伝えたのだ。

「中学高校で教員をしているとわかります。学年があがるほど、生徒の作る短歌や俳句がつまらなくなるんです」

 

社会化されるほどに、思考の自由が奪われてしまうのだ。イシス編集学校はそこに抗う学校である。
川野は続けた。「みなさんには、ぜひとも小学生のときの調子のった自分をひっぱり出してみてください。自由に考えることを思い出せるはずです」「ぜひ、ふざけてもらいたい」

 

近大学衆を統べる敏腕プロジェクトマネージャー衣笠純子も重ねた。「イシスではかたまった思考をほぐす場です。かけっこで野原を駆けまわったあのときのように、未知なる場で遊んでくださいね」

 

それを聞き、近大学衆はさっそく001番の回答を始めた。コップの使い方を問われるこのお題でも、彼らの思考はみずみずしかった。農学部のY(アニマ臨風教室)が「畑の水路の、ろ過装置として使う」と答えれば、国際学部のO(きざし旬然教室)が「バーニャカウダの野菜を立てる」と応じた。彼らはすでに、真面目にふざけることのコツがわかっている。近大学衆総勢24名、大人たちの凝った思考を軽やかに粉砕してゆくこと間違いない。

 


イシス編集学校49[守]近大番

 景山和浩川野貴志梅澤奈央(イシス編集学校)

 衣笠純子、橋本英人、山本春奈、富田七海(編集工学研究所)


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  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
    イシス編集学校メルマガ「編集ウメ子」配信中。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025