週刊キンダイ vol.007 ~二段重ねのおいしい1日~

2025/06/25(水)12:00 img
img ZESTedit

 「この部屋、昼はこんなにまぶしかったんですね」

 

 東京から駆け付けた学林局の衣笠純子が、教室を見てつぶやいた。6月17日、大阪は快晴。近畿大学・アカデミックシアターのACT-116はガラス張りで、午後の光が満ちていた。55[守]が開講した5月12日と同じ教室なのに、明るく開放的な空間に見えるのは日の光のせいだけではなかった。

 

 今回の稽古Dayは昼夜二部構成。しかもリアルとオンラインのハイブリッド。初めての試みだ。アイドルのコンサート、演劇のマチネとソワレ、プロ野球のダブルヘッダー、さらには二段重ねのお重のように、同じ舞台で違う熱を味わう楽しみがある。どちらか一方に参加してもいいし、両方も可能。何度でも足を運びたくなるお得感。それが近大番の狙いでもある。

 

 午後3時に始まった昼の部には5人の学生が参加した。稽古Dayといってもお題に向かうばかりではない。編集稽古の手応えや悩み相談など、まず雑談からスタート。そのまま終わったばかりの番選ボードレール「一種合成」の感想が行き交った。最後にはお題に取り組む時間もたっぷりだ。

 

 この日は衣笠に加え、編集工学研究所の橋本英人も顔を出した。「どうやって発想を広げたらいいのか」という学生の声に「言い換えが編集の基本だよ」と即座に返事。言い換えしながら連想を広げる方法を伝える。近大番の南田桂吾も「稽古で詰まったら、用法1の方法を思い出して」とアドバイス。会話と学びが交わるライブ感。これがリアルの場ならではの贅沢さだ。

 

橋本はマンツーマンで稽古

 

 8人が参加した夜の部には、マグロワンダフル教室の師範代・稲森久純がやってきた。学生と笑顔で語る姿は、まさにアニキだ。お題をためてしまった学生には橋本がマンツーマンでコーチする。Zoom越しにマグロワンダフル教室の師範・一倉広美、南田、景山がコメントする。この厚みと熱さ。だから参加する価値がある。

 

 「稽古Dayに来ると、編集稽古したくなる」。すっかり日が落ちたACT-116。近大生の表情は昼の光とは違うまぶしさを放っていた。

 

アイキャッチ/稲森久純(55[守]師範代)
文/景山和浩(55[守]師範)


週刊キンダイ 連載中!

週刊キンダイvol.001 ~あの大学がついに「編集工学科」設立?~
週刊キンダイvol.002 ~4日間のリアル~

週刊キンダイvol.003 ~マグロワンダフルって何?~

週刊キンダイvol.004 ~近大はマグロだけじゃない!~

週刊キンダイvol.005 ~ハンシがゆく~

週刊キンダイvol.006 ~編集ケイコが行く!~

 

  • イシス編集学校 [守]チーム

    編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。

  • オンラインに広がる「珠玉の一滴」~55守創守座~

    第2回創守座の特徴は、なんと言っても学衆のオブザーブだ。指導陣が一堂に会する場を、半分、外に開いていくというこの仕組み。第1回の創守座が師範代に「なる」場だとすると、この回では師範代になることを「見せる」場にもなる。オ […]

  • 週刊キンダイ vol.006 ~編集ケイコが行く!~

    かつて「ケイコとマナブ」というスクール情報誌があった。習い事である”稽古”と資格取得にむけた”学び”がテーマごとに並んでおり、見ているだけで学んだ気分になれたものだ。  今や小学生の約3人に2人は習いごとをしているが、 […]

  • 教室運営の頂をめざす師範代の挑戦 ~55[守]創守座~

    「山の山頂、ピークの先にある見たこともない風景を、みんなで見たい」。6月7日に開催された55[守]「第2回創守座」で山派レオモード教室の田中志穂師範代が熱を込めて語った。  「創守座」はイシス編集学校で教室をあずかる師 […]

  • 週刊キンダイ vol.005 ~ ハンシがゆく ~

    乱世には理想に燃える漢が現れる。    55[守]近大番に強い味方が加わった。その名もハンシ。「伴志」と書く。江戸時代の藩を支えた武士のようであり、志高く新時代を切り開いた幕末の志士のようでもある。近大番が、 […]

  • 週刊キンダイ vol.004 ~近大はマグロだけじゃない!~

    マグロだけが、近大ではない。  「近大マグロ」といえば、全国のスーパーに並び、飲食店で看板メニューになるほどのブランド。知名度は圧倒的だ。その名を冠した近大生だけの「マグロワンダフル教室」が、のびのびと稽古に励むのもう […]

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025