木々が色づきを増すこの季節、日当たりがよくて展望の利く場所で、いつまでも日光浴するバッタをたまに見かける。日々の生き残り競争からしばし解放された彼らのことをこれからは「楽康バッタ」と呼ぶことにしよう。
「この部屋、昼はこんなにまぶしかったんですね」
東京から駆け付けた学林局の衣笠純子が、教室を見てつぶやいた。6月17日、大阪は快晴。近畿大学・アカデミックシアターのACT-116はガラス張りで、午後の光が満ちていた。55[守]が開講した5月12日と同じ教室なのに、明るく開放的な空間に見えるのは日の光のせいだけではなかった。
今回の稽古Dayは昼夜二部構成。しかもリアルとオンラインのハイブリッド。初めての試みだ。アイドルのコンサート、演劇のマチネとソワレ、プロ野球のダブルヘッダー、さらには二段重ねのお重のように、同じ舞台で違う熱を味わう楽しみがある。どちらか一方に参加してもいいし、両方も可能。何度でも足を運びたくなるお得感。それが近大番の狙いでもある。
午後3時に始まった昼の部には5人の学生が参加した。稽古Dayといってもお題に向かうばかりではない。編集稽古の手応えや悩み相談など、まず雑談からスタート。そのまま終わったばかりの番選ボードレール「一種合成」の感想が行き交った。最後にはお題に取り組む時間もたっぷりだ。
この日は衣笠に加え、編集工学研究所の橋本英人も顔を出した。「どうやって発想を広げたらいいのか」という学生の声に「言い換えが編集の基本だよ」と即座に返事。言い換えしながら連想を広げる方法を伝える。近大番の南田桂吾も「稽古で詰まったら、用法1の方法を思い出して」とアドバイス。会話と学びが交わるライブ感。これがリアルの場ならではの贅沢さだ。
橋本はマンツーマンで稽古
8人が参加した夜の部には、マグロワンダフル教室の師範代・稲森久純がやってきた。学生と笑顔で語る姿は、まさにアニキだ。お題をためてしまった学生には橋本がマンツーマンでコーチする。Zoom越しにマグロワンダフル教室の師範・一倉広美、南田、景山がコメントする。この厚みと熱さ。だから参加する価値がある。
「稽古Dayに来ると、編集稽古したくなる」。すっかり日が落ちたACT-116。近大生の表情は昼の光とは違うまぶしさを放っていた。
アイキャッチ/稲森久純(55[守]師範代)
文/景山和浩(55[守]師範)
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