多読ジム出版社コラボ企画第四弾は、小倉加奈子析匠が主催するMEditLab(順天堂大学STEAM教育研究会)! お題のテーマは「お医者さんに読ませたい三冊」。MEdit Labが編集工学研究所とともに開発したSTEAM教材「おしゃべり病理医のMEdit Lab-医学にまつわるコトバ・カラダ・ココロワーク」で作成したブックリストから今回のコラボ企画のために厳選した30冊が課題本だ。読衆はここから1冊選び、独自に2冊を加えて三冊セットを作り、レコメンドエッセイ三冊屋(500〜600字)を書く。MEdit賞はいったい誰の手に?
そむけたる医師の目をにくみつつうべなひ難きこころ昂る(『白描』明石海人)
『ハンセン病を生きて きみたちに伝えたいこと』の伊波敏男は、高校で学びたい一心で、施設を脱走した。すでにハンセン病は、適正な治療をすれば伝染を恐れる必要がないにも関わらず、日本では隔離政策が続けられた。
社会から隔絶された著者は、施設を脱走し入学した高校の図書館のたくさんの本を読むことで、心を支え、癩者を拒んだ社会を見据えた。医師の中にすら、ハンセン病の隔離を訴え続ける者はおり、忌避の心は根深かったのである。差別によって壊された心は誰が癒すのであろうか。
『フラジャイル』には、ハンセン病患者がどのように社会から、この世の果てに押し込まれたか、その過程が浮き彫りにされている。社会が差別の病を作ったのだ。
歌人、明石海人は、朽ちゆく体で歌を詠み続けた。明晰な思考に磨き抜かれた『明石海人歌集』は心に迫る。冒頭に掲げた歌は診断の日の苦悩だ。しかし、歌を作り続け、癩は天啓であると病を受け入れた。生きるとは表象することであり、社会と繋がることである。治療は体だけではなく、社会と繋がることができるよう、医師と患者の相互編集が求められている。
さくら花かつ散る今日の夕ぐれを幾世の底より鐘の鳴りくる(明石海人)
Info
⊕アイキャッチ画像⊕
∈『ハンセン病を生きて きみたちに伝えたいこと』伊波敏男/岩波ジュニア新書
∈『フラジャイル』松岡正剛/ちくま学芸文庫
∈『明石海人歌集』明石海人/岩波文庫
⊕多読ジムSeason13・冬⊕
∈選本テーマ:お医者さんに読ませたい三冊
∈スタジオらん(松井路代冊師)
北條玲子
編集的先達:池澤祐子師範。没頭こそが生きがい。没入こそが本懐。書道、ヨガを経て、タンゴを愛する情熱の師範代。柔らかくて動じない受容力の編集ファンタジスタでもある。レコードプレイヤーを購入し、SP盤沼にダイブ中。
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