「忌まわしさ」という文化的なベールの向こう側では、アーティスト顔負けの職人技をふるう蟲たちが、無垢なカーソルの訪れを待っていてくれる。
このゲホウグモには、別口の超能力もあるけれど、それはまたの機会に。

▲今の世は「笑い」が足りない。
▲おぼしき事言はぬは腹ふくるるわざなれば、筆にまかせつつ……(『徒然草』十九段)。愚痴も言わず、文句も言わず、しかめっ面で溜め込んでいれば、吉田兼好じゃないが、「腹ふくるる」だけである。笑って息を吐き出さないと、そりゃもたない。
▲そういえば、天の岩戸に隠れた天照大神が、うっかり顔を出したのは、外で神様たちが笑っていたからだっけ。木村洋二は、神聖な神や象徴を笑うことは、そこに封入されたエネルギーを簒奪・解放することだといい、「爆弾テロより強力な破壊力をもつ」(『笑いを科学する』)と断じたが、そうか岩戸は笑いで吹っ飛ばされたのか。
▲『万葉集』で大伴家持が詠んだ歌。「痩(や)す痩(や)すも 生(い)けらばあらむを はたやはた 鰻(むなぎ)を捕(と)ると 川に流るな」。痩せすぎた男で鰻を捕る姿を見て「川に流されるなよ」と家持。思い切り笑うてるやん。ま、「生ける者 遂にも死ぬる ものにあれば この世にある間(ま)は 楽しくをあらな」、なんて歌を詠んでいるだけのことはあるか。
▲源平の合戦は最終盤、壇ノ浦に追い詰められた平氏一門。知盛(清盛四男)は船の上から「めづらしきあづま男をこそご覧ぜられ候はんずらめ」(珍しい東国の男を目にする時がきました)と、大ピンチにカラカラと笑った。『ONE PIECE』のルフィも死刑台で「わりい おれ死んだ」と笑ったっけ。
▲狂言は、痛烈に、現実を直視し、笑いを見つけ、観客といっしょに、社会もろとも笑おうとするものであり、「狂言が笑いの対象とするのは、その時代の目立つもの、威張っている人種たちです」と藤原成一(『日本文化を読み返す かさねの作法』)。さしずめ今なら、論破王やナントカ眼鏡を笑い飛ばすに違いない。
▲「日本人はどちらかというと、よく笑う民族である」と書いたのは柳田国男だったか。そんな日本人、今やいませんよ、柳田さん。
▲[守]の稽古「032番:21世紀枕草子」で「パロディア」(諧謔)に遊んでみたのは言わずもがな。
▲相好が崩れ、破顔する義で、ワルル(破)から「わらう」が生まれたという語源説がある(『日本国語大辞典』)。破る=笑う、なのだ。さあ、では何を破ろう。
▲今の世には、「笑い」が足りない。イシスには「シン・お笑い大惨寺」があるじゃないか。令和五年のクリスマスの朝は、大破顔の朝となる。
角山祥道
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama
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2025-09-16
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2025-09-09
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2025-09-04
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