キキちゃんの心も”あやつり” 本楼ET

2019/08/18(日)14:30
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 御神木を見上げるように、本棚を見上げる参加者たち。にじり口で佐々木千佳局長と吉井優子師範はぬかりなく名札を手渡す。

 

 お茶出しの林朝恵番匠はカウンターと座席を小走りに行ったり来たり。ナビゲーターの米田奈穂師範代は提灯の下で参加者を出迎える。8月10日(土)、本楼でエディットツアーが開かれた。


 大学で図書館職員をしている米田にとって、本に囲まれた空間はホームに近いはずだが、この日はドキドキが止まらなかった。

 

 それもそのはず、自身が師範代を務めた42[守]あやつり近江教室の学衆が夫と小学4年生の娘キキちゃんを連れて参加していたからだ。「責任重大です」とリハーサルの時から意気込んだ米田は、吉村堅樹林頭に笑顔の特訓まで受けた。

 いざスタートすると緊張はどこ吹く風。自身の数寄である「文楽」を生かした編集語りはやわらかくかつ、なめらか。「日本にないもの」をテーマにした編集思考素と本を使ったワークでは、参加者の心を見事あやつった。

 

 大人たちは「難しい、でも他の人の発想を聞くのは刺激的」と高揚。キキちゃんはスキップするように本選びに走った。

 

 ツアー終了後、多くの参加者が名残惜しそうにその場にとどまり、イシス編集学校に興味を示した。最後まで残ったキキちゃんは「帰りたくない、明日も来る」と椅子から動かぬ程だった。

 皆が去った本楼で、米田はホッとした表情でソファに腰掛け、テーブルコーチの吉井や林とツアーを振り返る。が、それもつかの間、吉村と9月のツアー打ち合わせが始まった。ゆるんだ糸は、またピンと張る。

  • 林朝恵

    編集的先達:ウディ・アレン。「あいだ」と「らしさ」の相互編集の達人、くすぐりポイントを見つけるとニヤリと笑う。NYへ映画留学後、千人の外国人講師の人事に。花伝所の花目付、倶楽部撮家で撮影・編集とマルチロールで進行中。

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コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。