校長&林頭が現“在”美術に!!!!! 宇川直宏展@練馬区立美術館

2023/10/30(月)22:27
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 松岡正剛校長と吉村堅樹林頭が、アート作品になっているとの噂をきいた。制作者は宇川直宏氏である。2021年の「Hyper-Editing Platform[AIDA]Season2第3講」で、AIDA座衆28人の自分史を一手に引き受け、ビジネスマンたち個々の歴史をサブカル・音楽・アートの歴史と重ねて編集しまくるという番組をつくってくださった方だ。

 

 宇川さんが、校長と林頭にどんなアート編集を? ぜひとも目撃せねばと練馬区立美術館へ行ってみた。西武線中村橋駅から徒歩3分。美術館前、ゾウやキリンのオブジェがある広場で子供が遊ぶのどかなたたずまいである。ここであの「THE FINAL MEDIA SUPER DOMMUNE」主宰、現“在”美術家:宇川直宏氏の企画展が開かれているのか。健康的なシチュエーションにややギャップを感じつつ、入場する。

 

 

 展覧会の正式名は「宇川直宏展 Final Media Therapist@Dommune」である。宇川さんは映像作家、グラフィックデザイナー、VJ(ヴィデオジョッキー)、文筆家、大学教授など、全方位なアーティストだ。2010年に日本初のライブストリーミングスタジオ兼チャンネル「DOMMUNE」を個人で開局し、現在まで13年間、約5000番組/1万時間を配信してきたという。現在は「SUPER DOMMUNE」となって継続中。

 

展覧会の最初に置かれた宇川さんのポートレート

 

 SUPER DOMMUNEでは、月曜~木曜の毎晩、配信がある。渋谷PARCOの9Fにあるスタジオに、内外のアーティストが次々やってきて夜な夜な語り、パフォーマンスを繰り広げる。宇川さんはその企画、アートワークを行い、自らもゲストとトークしたり、プレイしたりし、撮影や配信、記録も担う。そのすべてが宇川さん自身の「現在美術表現」なのだ。
 番組には、菊池成孔氏やホドロフスキー監督も出演すれば、八代亜紀さんも出る。一柳慧さん、大島渚さん、山口小夜子さんの特集番組もあったようだ。(筆者のフィルターで捉えられたお名前をあげている。現代アートや海外カルチャーに詳しい方、DJやラップが好きな方なら、その方面のビッグネームを見つけ出せるだろう)

 

宇川グラフィックの壁。なかにAIDAの回も。校長のモノクロ写真に文字を組み合わせたシンプルな構成だが、これしかない!と感じるカッコよさ。

 

 さて、このたびの展示では、13年間のDOMMUNEの記録を再編集した映像作品、番組のために手掛けたグラフィック、そして宇川さんの著作やテキストを学習したAIが作成した作品を見ることができた。宇川さん仕様のAIを育てているのだという。
 ラジオにはじまり、白黒テレビからカラーテレビへ、ネットからポストコロナ時代へ、というマスメディアの歴史へ言及したインスタレーションもあった。私の知らない大きな真空管ラジオから流れる音、懐かしいブラウン管のテレビに映る切れ切れの映像、砂嵐…。


 展示に添えられた宇川さんのテキストによると、現在のテレビは、ほぼ全部収録になり、生放送のアウラは失われたという。そういわれればそうだ。一方、DOMMUNEはいつも生配信である。リアルタイムでのみ視聴でき、WEB上にアーカイブは残さないのがルールだ。このあたりに、宇川さんが展覧会のタイトルでセラピストを名乗り、「メディアをセラピーしている」と言う意図を感じる。いついつまでも残せる、という技術がありながら使わない。旬で瞬なメディアでありつづけ、アウラをまといつづけるために、「もったいない」を手放している。本来を忘れそうな既存のメディアに対して、別様の立場からゆさぶりをかけ、結果、整える。そうか、メディア界の整体師だったのか。

 なめらかすぎる動きのロボットアームにセットされたカメラがこちらを向いている。いつのまにか私も撮影されて、壁に投影される宇川作品の一部になっていた。


 そして、最後の部屋へ。ポストコロナの番組のなかからピックアップされたものが十数台のディスプレイに映し出されている。AIDAで校長と宇川さんが話している映像がエンドレスに流れる。そのディスプレイの上下に、宇川人格のAIによって生成された作品が……あった! 校長と林頭!! 

 

 

 

校長と林頭のイラストレーション。宇川さんのテキスト25万字~30万字を学習したAIが、DOMMUNEの神回を鑑賞しつつ作品をつくっている。私には、ハリウッド映画風の大物役者に見えるが、いかがだろう。


 13年間、毎日のように番組をつくって配信しつづける。豪華多彩なゲストを迎え、そのために毎回、唯一無二のグラフィックをつくり、自らもパフォーマンスする。ずっと感門之盟(編集学校が精魂込める卒業イベント)をしているようなものではないか…、そう思うと気が遠くなる。
 宇川直宏さんは、生きたものを生きたまま届けるための編集をしつづける編集的先達であった。DOMMUNEの視聴者は、宇川さんの選ぶものに今日の自分の時間を賭ける。そうしてこそ得られる情報の感染が「現在アート」の経験なのだ。
 さー、これからもっとDOMMUNEを見よう!!!!!


 展覧会は11月5日(日)まで
 3~5日は展覧会場からの配信がある。
 現場で宇川さんを目撃するもよし、配信を見るもよし。

 練馬区立美術館のお知らせページはこちら
 


  • 原田淳子

    編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。

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