遊刊エディストは創刊以来3度目の新年を迎えました。2022年も「新春エディスト編集部放談」をお届けしてまいります。
2021年は皆さんにとってどんな1年でしたか? 大活躍のエディスト・ライターやニューカマーズをゲストに招き、過剰に過激に放談します。2022年が格別な編集イヤーになりますよう、放談連載を読んで幸先のよい編集スタートを切っていただきたく。其の弐では、マンガのスコア・堀江純一さんが参入、2022年は「マンガのスコア」の書籍化なるか?!存分にお楽しみください。
◎遊刊エディスト編集部◎
吉村堅樹 林頭, 金宗代 代将, 川野貴志 師範, 後藤由加里 師範, 松原朋子 師範代, 上杉公志 師範代, 梅澤奈央 師範,穂積晴明 デザイナー, 『マンガのスコア』堀江純一
金 今日僕がお呼びしたゲストは堀江純一さんです。近畿大学のアカデミックシアター2FにあるDONDENに置かれている漫画家「レジェンド50」の模写を、ずっと連載してくれています。
吉村 堀江さん、いよいよゴールが見えてきましたね。
堀江 いやあ、50人ですからね。終わるのは最速が5月ぐらいですかね。今は安彦良和さんをやっているんですよ。
堀江純一 編集的先達:永井均。十離で典離を受賞。近大DONDENでは、徹底した網羅力を活かし、Legendトピアを担当した。かつてマンガ家を目指していたこともある経歴の持主。画力を活かした輪読座の図象では周囲を瞠目させている。
「マンガのスコア」LEGEND 1-10 /連載された堀江純一の模写
吉村 ガンダムの映画最新作で監督をやっていらっしゃるようですね。
堀江 本格的にアニメに復帰するんですかね。アニメはやらないみたいな雰囲気でしたけれども。
吉村 『ククルス・ドアンの島』、夏に公開みたいですね。
堀江 実は最近、書きあぐねているんですよ。みなさん、安彦は読まれていますか?
吉村 『虹色のトロツキー』『ナムジ』、その続編の『神武』。『クルドの星』『ジャンヌ』『イエス』『王道の狗』は持っていますね。後は『三河物語』も読んだけれど。
堀江 かなり読んでますね。
金 『虹色のトロツキー』は千夜千冊されていますね。
吉村 エディションのブックフェアでは『虹色のトロツキー』がすごく売れ行きが良かったんですよ。文庫なので手に取りやすかったんでしょうね。
堀江 大きいサイズの方がかっこいいので、漫画は大きい本で読みたい派です。電子ってあまり読まないんですけれども、どうですか?
吉村 流行り漫画は電子で読むことが多いですね。漫画は本当に場所ふさぎですよね。年末に引っ越しをしたんですが、段ボールに入れたままだと読まないので、どこかに見えるように出したいなとは思いますけれども。
金 僕もだいたい電子ですね。あまり買わないですね、キリがないので(笑)。漫画は1巻で終わるものってほとんどないじゃないですか。
堀江 置き場に困りますよね。金さんは基本電子で、どうしてもなければ紙の本を買う?
金 これはほしい、というのは本で買いますけどね。最近だと近藤ようこさんの『高丘親王航海記』(KADOKAWA)とか。
吉村 手塚治虫はサンコミックスのものを全部持っていますよ。
堀江 ちょっと前書きがついているんですよね。色もいいし、持っていると価値がありますね。私は電子の流れについていけないので、「マンガのスコア」は基本的にはすべて紙の本を前提に書いています。DONDENレジェンドの作家たちは電子化されていない人が多い。
吉村 そういえば、『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリさんと松岡校長のラジオ対談の放送が大晦日にありました。ヤマザキさんも本を相当読んでいらして、知のつながりが自在でしたね。美術志望のヤマザキさんが漫画家になるときに参考にしたのがつげや花輪和一だったというのも驚きでした。映画監督の山中貞雄や伊藤大輔に見る負の悲哀を抱え込む力みたいなものが、小津以降の現代の日本人からはなくなっているという話もされていて、なかなかすごいところに目を付けるなと思いました。
「マンガのスコア」LEGEND 11-20 /連載された堀江純一の模写
金 堀江さんが今年ゴールということで、松岡校長からこれは本にした方がいい、という話が出てきています。僕も最初から伴走して一緒につくってきた連載でもあるし、ぜひ本にしていきたいですよね。この出版社から出したいというイメージはありますか?
堀江 全然イメージがわかないので、途方もない話に聞こえますが……。
吉村 角川とか河出とか。キワドサでいくなら太田出版か。
堀江 マンガコーナーの一角に漫画評論が置いてあるんですが、カバーがかかってるんです。ああいう状態で置かれているとよっぽどじゃないと買おうという感じにならないので、カバーをかけない形になればなと思います。
吉村 普通の単行本で平積みができるといいですね。
堀江 手に取ってパラパラしてもらえるといいですね。「マンガのスコア」というタイトルだけでは買わないじゃないですか。まあでも、私は分からないので皆さんにお任せします。
金 ちくま学芸文庫が現代漫画のシリーズ本を出していたけれども、関心持ってくれないですかね。文庫本で出してますからね。DONDENのイベントにゲストに来てくれた永山薫さんの『エロマンガ・スタディーズ』もちくまから出ています。あのサイズから出るというのがいいですよ。「マンガのスコア」も文庫版の時はぜひ。
「マンガのスコア」LEGEND 21-30 /連載された堀江純一の模写
吉村 50人分、ゴールしたら休みたいとおっしゃっていましたが、今はどうですか?
堀江 連載が始まってからこの2年ぐらい、本も映画もろくに見ていないんですよ。漫画に関係のある本は読みますけれども。
金 ここまでやり続けているのが、すごいですね。
堀江 ええ、修行になりました。
吉村 今まで書いてきて、自分自身で気に入っているものはありますか?
堀江 どちらかというと、最近のものの方に愛着があります。
吉村 荒木飛呂彦のJOJOとか、めちゃめちゃうまいじゃないですか。一瞬これは模写なの?と思いましたね。
堀江 実は、背景を完全にカットしてしまったんですよね。
Zoomごしに違いを披露。左が作者の画、右が「マンガのスコア」堀江の模写。右は背景がないことがわかる。
金 左右に並べると似すぎているから、ここがスコアなんだということがわかるようにズームアップしたり、カッティングした方がいいですよね。
堀江 文章については最初の方は気楽に勢いで書いていたんですが、途中から調べないとしょうがないなという感じになってきて、だんだん文章を書くのが重くなってきているんです。
金 だいぶ最初のころと書く内容と分量が変わってきているんですよね。書籍にするとなると絶対直したくなると思いますよ。
堀江 燃えつきているので、できませんけれどもね(笑)
金 僕はスパルタなのでそれは許さないです(笑)
堀江 連載がスタートしたころとはモードが全然ちがっているのでね。
栄えある連載1本目
マンガのスコア LEGEND01手塚治虫①『火の鳥』模写
吉村 今年は堀江さんには、書籍化に向かっていただこうと思います。それまでに僕と金くんで、企画を準備して、堀江さんを迎えて企画会議をしたいですね。
金 僕は厳しいですから、覚悟してくださいね(笑)。 この後は残っているのは?
堀江 安彦良和、江口寿史、丸尾末広、杉浦日向子、浦沢直樹、松本大洋、鳩山郁子、梶原一騎、かわぐちかいじ…。ちょっとどれも大変ですよね。
松原 どういう方々が残されているのですか?
堀江 粗く順番をきめたんですよ、似た感じのものが続かないように、つながりがない人をピックアップしてきたんです。そうしたら自然とさっき挙げた方たちが残ってきた。早くやりたい人はもうやってしまったので、自然に残っちゃっている感がありますね。書きにくい感じの人ともいえます。
吉村 江口寿史の美少女をどう描くかも気になりますねえ。僕は『寿五郎ショウ』の「下品な家族」を描いてほしいです(笑)。
「マンガのスコア」LEGEND 31-40 /連載された堀江純一の模写
堀江 はじめたころは模写がしんどかったんです、絵を描く習慣がなかったので。なので最初のころは何人も先まで文章ができていて、模写ができていない状態でした。ですが、今は模写が先にできていて、文章ができていない状態になっているんです。連載スタート時には「文章が長いですね」と言われていたのですが、その頃よりも長いんですよね。
吉村 松岡さんの千夜千冊と同じですね。だんだん長くなっていくという。
堀江 なんでこうなるんだろうと、分からないんですよね。文章のボリュームを下げていこうと思っているんですが、そうならなくて。読むほうも大変じゃないですか。最後まで読んでほしくて、おもしろく書いているつもりなんですが、読んでいる人の気持ちがわからないんですがね……。
金 今は確かに少し長いですが、おもしろいので一気に読めますよ。
吉村 松岡さんは毎回おもしろいと言われていますよ。
後藤 少女漫画が少ないのが残念なのですが、少女漫画は早めに終わってしまったんですよね。
堀江 そうですね、少女漫画は大変そうなので、最初にやりました。
マンガのスコア LEGEND04 近藤ようこ 中世説話ものから現代ものまで (2020年5月)
マンガのスコア LEGEND05 水野英子 少女マンガの創始者 (2020年5月)
後藤 もともとレジェンド50のなかに少女漫画が少ないのかもしれないですよね。ごりごりな男っぽいものが多い。
堀江 当時レジェンド50を選んだのは吉村林頭と金さんと西藤太郎さんですか?
金 50の下地は僕が出して、それをみんなで入れ替えたんですよね。ただ、僕が選んだというよりも、千夜千冊で書かれている人を入れるという方針があったのと、漫画評論のなかで重視されている人を選んでいるので納得感があるかもしれないです。僕らの好みではなくても抑えた方がいい作家は入れています。
堀江 一瞬「?」と思った人も取り組んでみるとこの人重要だと思ったし、園山俊二も実は謎でしたが独自のポジションをもっているので、レジェンド50に入っていないと大人マンガの話がすっぽり抜けてしまうので、大事だったなと。
マンガのスコア LEGEND35園山俊二 分類不能な人 (2021年8月)
後藤 漫画を読んできていない私みたいな人にとっては、堀江さんの連載で漫画が身近に感じられるようになりました。
堀江 あまり漫画が詳しくない人でも知っているような漫画家たちなのですが、読んでいないことがあると思うのです。記事を読んで、この人はこういう人だったのかと思って作品を手に取って読んでくれるのが理想ですね。
後藤 竹宮恵子先生は堀江さんの記事をきっかけに読みましたよ。
マンガのスコア LEGEND14竹宮惠子 BLはここから始まった (2020年10月)
堀江 それはうれしいですね。金さんからの「これを読んで別の関連本が読みたくなりました」というコメントがうれしかったんですよ。
吉村 そういう行為をそそるようなものになっていますよ。呉智英が若者にしっかりマンガを紹介したという感じがありましたが、堀江さんの本がそうなるんじゃないかと思っています。
金 マンガ紹介といえば、ちくま学芸文庫の漫画のアンソロジー『現代マンガ選集』では、中条省平さんが1968年を境にマンガ史が変わったことを核にしていて、普通じゃ読めないものを編集方針にしていますね。
堀江 最近、小学館でも『日本短編漫画傑作集』が出ていました。結構いいと思いました。皆さんにおススメできますね。
吉村 今年は堀江さんの「マンガのスコア」を通じて、若い人たちがレジェンド50の漫画に手を伸ばすということが起こっていくでしょう!!ぜひ引き続きお願いします。
堀江 記事を最後まで読んでもらうのが目標ですが、それから興味を持って漫画を手に取って読んでもらうということがゴールですね。「マンガのスコア」を2022年も読んでいただけたらうれしいです。
「マンガのスコア」LEGEND 41-50 /連載された堀江純一の模写
※1月3日に「其の参」を公開いたします。どうぞお楽しみに。
2021新春放談企画「エディスト、装い新たに大ブレイクだ!」
其の壱 – 常時編集状態のイシス(1月1日公開)
其の弐 – マンガのスコア、書籍化間近か?!(1月2日 公開)
其の参 – 全国の子どもたちに編集術を手渡す(1月3日 公開)
其の肆 – 四人四様、新コーナー企画会議(1月4日 公開)
其の伍 – 同時多発・連続・連動で火をつけろ!!! (1月5日 公開)
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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