草むらで翅を響かせるマツムシ。東京都日野市にて。
「チン・チロリン」の虫の音は、「当日は私たちのことにも触れてくださいね」との呼びかけにも聴こえるし、「もうすぐ締め切り!」とのアラートにも聞こえてくる。

菖蒲と蓬が軒先に連なり、鯉のぼりと吹き流しが悠々と空を泳ぐ。15週間の51[守]の開講直前、イシス編集学校ではためくのは19色の教室名フライヤーだ。竜を目指す19匹の鯉ならぬ19人の師範代たちが、その跳躍力を総動員して「こんな教室にしたい!」と決意を1枚にあらわした。
遊泳を心待ちにする彼らが、未だ見ぬ学衆に向け、教室名のユニークネスと編集稽古の魅力を語ったのは、4月初旬の伝習座でのことだ。以来、日々新たになる決意、今一度ここに掲げよう。
若水尽きぬ教室の師範代、吉田麻子は、熊本から本楼に馳せた。火の国であると同時に水の国でもある熊本に肖り、学衆各々に潜む編集の泉を掘り起こしたいと志は晴れやかだ。
流れる青白の絵の具が織りなす清涼感モードは、編集世界の元日に相応しい。「あらたまる」ことでこそ、情報はあらたな姿を見せる。神に捧げ、自ら口にする若水。美しい景色と眺めずに、飛び込み飲み尽くしてほしい。
紙面から蒸気が飛び出さんばかりに吹くやかんと同じく、高温なのが、熱~いヤカン教室師範代の和泉隆久である。「火加減を調節して教室を沸かせるのが私の役目」と学衆に向き合う覚悟は堅い。
「やかんモデル」で型稽古を見立てた、インタースコア編集の王道だ。モデルで見ることで「教室の火加減」を工夫しようという思考が働く。イシスの炎によって沸き出す蒸気は、情報と学衆が混然となる「才」だろうか。
カタルトシメス教室の師範代、新垣香子は、校長直筆の教室名カードで埋め尽くされた後景を背負った。前日にアップされた『全宇宙誌』册影帖から「回転」というキーワードを引く卒意が頼もしい。
分けて分けない「カタル」と「シメス」の同時性を、自転車の両輪モデルに託した。浮遊感を支える光の玉は、ETの超能力ではなく編集術だ。言葉づかいが世界そのもの。語ると、パステルアートの物語世界が生まれた。
多くの者が声を震わせるなか、科学者然と冷静なのが、配列変えます教室師範代、森下揚平だ。締切直前まで躍動感にこだわって仕上げた作品だが、学衆と共に更なる配列変えを起こす心積もりだ。
配列の典型DNA螺旋、本の並び、太陽系列に、謎のクレヨンや猫や風鈴が交わり列を乱す。異質こそ「変えます」の契機と謳う「いじりみよ」コピーがそこに呼応した。既知の配列を徹底取材し、未知の運びは猫に委ねる。
三度目の登板となる分人庭師教室の師範代、鈴木哲也は、学衆のため、生まれ変わるが如く自らに更新をかけることを課している。真直ぐな立ち姿から、本楼中に響き渡った清々しい声が耳を離れない。
剪定鋏を振りかざし街を飛び交う庭師土偶。思わぬ組み合わせ編集が、インパクトのあるヴィジュアルを生み出した。土偶は歴史か私たちの形代か? 街にどう編集の鋏を入れるのか?情報同士が出会うとき、想像を生む。
51[守]は、ゴールデンウィーク明けに開講する。教室名フライヤーは、まだ完成していない。学衆を迎えてからが本番だ。変化も成長も急流突破も、異質や異物との出会いによって加速する。教室という場に身を預け、登りきった先には、どのような作品に変身を遂げるのか。皆の衆、いざ出遊だ。
(文:阿曽祐子 アイキャッチ・フライヤーレビュー:阿久津健)
◆イシス編集学校 第51期[守]基本コース◆
日程:2023年5月8日(月)~ 2023年8月20日(日)
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
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2025-07-15
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