発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

秋葉原にトラックが突っ込んだのは、15年まえのちょうど今日だった。2021年にも、ジョーカーに扮した男が京王線内で乗客を切りつけた。目立つようになった無差別襲撃事件。一部の狂ったサイコパスがこのような凶行に及んでいるのだろうか。犯罪心理学者の見解は違う。背景には、人々の抱える「社会からの疎外感」があると分析している。
社会学者・大澤真幸氏は「『自分がこの世界にコミットしている』という感覚を得られていない人が多いのでは」と語る。どうにも自分は世界から疎外されている気がする。でも、世界に関わりたい。方法がわからない。大量殺戮は、世界にコミットするための切なる足掻きだったのかもしれないのだ。
キミとボクの関係が、すなわちセカイの命運となってしまう「セカイ系」作品。これらが流行るのも、世界に対するデタッチメント感を多くの人がもっているからではないか、と大澤氏は分析する。コミットメントしたいのにできないか。その代償行為としてファンタジーの世界に入り込むのである。
大澤氏はだからこそ、編集工学が必要だと熱を入れる。「世界をどうつかむかということを教えてくれるのが編集工学」。「松岡正剛には『世界』が見えている」。
イシス編集学校では、2022年下半期から各界の著名人による公開講義を開催している。第1回のゲストは法政大学元総長の田中優子氏。つづく第2回となるのが、社会学者・大澤真幸氏をゲストに迎えた「大澤真幸の編集宣言」である。7月2日(日)14時〜17時、東京・豪徳寺の「本楼」で開催され、オンライン配信される。
この特別講義では、イシス編集学校校長・松岡正剛と30年以上の親交のある大澤氏から見た編集工学の意義についてレクチャーされる。デタッチメントからコミットメントへむかう、その方法のひとつとして「編集」をどう活かすのか。編集工学の可能性とはどこにあるのか。さらに、千夜千冊エディション『編集力』に収録されたバルトやフーコー、ヴィトゲンシュタイン、ポランニーなどの西洋知へあらたな見方も紹介されるかもしれない。
先日、豪徳寺にて行われた打ち合わせのさい、大澤氏は、世界にコミットメントする方法のひとつを提示した。それが「死者の声に耳を傾ける」というものである。「歴史上の人物のなかで、その思いを自分が引き受けられる人はいますか。いるならば、それはなぜですか」。どうして死者の声が、私を世界につなぎとめるのか。時空を超えた世界との関わり方が、特別講義にて明かされる。
■イシス編集学校第51期[守]特別講義「大澤真幸の編集宣言」
●日時:2023年7月2日(日)14:00~17:00
●ご参加方法:zoom開催。お申し込みの方にzoom URLをご案内します。
●ご参加費:3,500円(税別)
●対象者:未入門の方もご参加いただけます。51[守]受講中の方は教室にてお申し込みください。記録動画は1週間限定で共有されますので、当日ご都合がつかなくてもご参加いただけます。
●お申し込み:https://shop.eel.co.jp/products/detail/566
■大澤真幸×編集工学 をもっと知るなら
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
イシス編集学校メルマガ「編集ウメ子」配信中。
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2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。