まなざしの奥にあるものは_第2視【50[破]伝習座】

2023/06/25(日)08:05
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50[破]の第2回伝習座を写真で辿る「まなざしの奥にあるものは」。

今回は2視目。さっそく辿っていこう。

※1視目の様子はこちら→第1視

 


 

自分で作った限界を破り、未知へと進む力をつける。それが応用コース[破]の編集稽古だ。

ここからは師範と番匠が、編集稽古で使うお題のレクチャーをする。

 

 

■物語編集術レクチャー襷をつないで

zoomでレクチャーを行う番匠野嶋真帆。背後には校長松岡の書や本が並ぶ。モニター越しであれ番匠野嶋の熱意が迫ってくる。

 

このレクチャーのテーマは物語編集術。英雄伝説の型に倣って物語を書く、という壮大な編集術である。壮大さゆえに、どのような指南を書けばいいか困惑する師範代も多い。そんな惑いを受けて番匠野嶋は、師範代の道標になるような言葉を置いていく。

 

第1視でお伝えした通り、交通機関の運休により急遽zoomからの参加になったメンバーが多数いる。番匠・野嶋もそのひとりだ。しかし、どこからであろうと真摯さは変わらない。

 

 

全身でレクチャーについていき、キーセンテンスを掴まえる師範代。ここでつないだ襷を学衆たちへ渡していくために。

 

 

番匠野嶋から襷を受けた師範天野陽子。言葉を弾ませながらレクチャー・次いでワークを進行する。

 

伝わる物語にするために、どんなシーンにして、どのように語るのか。師範代が事前に行ったワークをもとに、師範天野が師範代たちに問いを投げかける。

 

 

左手をマイクに添えて丁寧に問いに応じる師範代森川絢子。

 

師範代の応答を受けて、師範天野は方法の型をレクチャーに散りばめる。まるで、型が跳躍しているかのように。

 

 

ロールを越えて全座組が机上でノートを取っている。

 

伝習座のレクチャーや発言はロールが入り乱れる。例えば師範代の発した問いやふとした言葉から師範に気づきが生まれ、師範が全体に共有したら番匠の創造力が開く、ということもある。伝習座は相互編集の場なのだ。

 

 

■映画読み解きワーク見方を広げる指南に向かって

丸メガネをおしゃれにかけこなす師範華岡晃生が、ワークの意図を説明する。

 

物語編集術ではまず、複数の課題映画から1つ選んで、観る。

課題映画には共通点がある。同じ物語マザー(母型)から生まれていることだ。母型は同じ。では、相違点はどこなのか。それを考えてほしいのだと師範華岡は伝える。

 

 

事前にもらったワークの資料をPCで開きながら他の人の意見を素早く書き記す。

 

師範代と師範や評匠とがチームを組み、編集術を駆使しながら映画を読み解いていく。

 

 

zoom参加の師範代と評匠高柳康代(左)に学匠原田が駆け寄る。

 

個人知のわからなさは共同知となって、場に言葉の花が咲く。すると関わり合いが起きて、わからなさを起点につながりが生まれる。そこから交わし合うことで、相互編集が起きていく。

 

 

■プランニング編集術ディスカッション〜「ハイパー」を本気で考える〜

大雨の影響で、番匠野嶋に続いて急遽zoomからレクチャーを行う番匠福田容子予定調和の崩れも軽やかに編集する。

 

「人の生き方の琴線に触れることを目指しているんです」

番匠福田は、プランニング編集術のターゲットをこう打ち出した。

新しいミュージアムの構想をする。それがプランニングの編集稽古だ。とはいえ単なるミュージアムではない。「ハイパーミュージアム」である。ハイパーとは何か。価値観を揺るがす、見方の枠組みが外れる、行動が変わる、等々、番匠福田は小気味よくキーワードを出していく。

 

 

乱反射するミラーボールの後ろにある言葉はフリードリヒ・ガウスの「Pauca sed Matura.(少数なれど熟したり)」。校長松岡のモットーである。

 

この言葉を借りながら番匠福田は、今回のディスカッションにおけるターゲットを定めた。

「10人が1回来館するより1人が一緒に作りたくなるミュージアム」をつくるにはどうするかをディスカッションに求めるのだ、と。

 

 

師範代北條玲子(左)、師範代遠藤健史(モニター左上)、師範戸田由香評匠中村まさとしのチーム。ロールも場所も超えて交わし合う。

 

 

ディスカッションの発表をする師範代高本沙耶。共同知で広げた見方を座組に還元していく。

 

この日の発表時、師範代高本のように、全身から言葉を出そうとする師範代の姿が目についた。伝える方法が声だけでは追いつかず、身体全体の表現になっていったのだ。

 

 

P-1グランプリで審査員をしたこともある評匠中村。P-1への高揚感が手振りからも伝わる。

 

P-1グランプリでは「世の中のすごいプレゼンをも突破したい」と学匠原田は言う。ではそれをどのように編集術に落とし込むのか。

答えは、ない。どうしたら…という問いを持って、毎期お題を改編している。お題を作る指導陣も試行錯誤しているのだ。

 

全身で語る行為は、試行錯誤してどうにか目の前の人たちに言葉を伝えたい、という気持ちの表れだ。この日、師範代たちは全身で語っていた。きっと、悩める指導陣の襷をつないでくれることだろう。

 

 

つづく

 

◇シリーズ

まなざしの奥にあるものは_第1視【50[破]伝習座】

まなざしの奥にあるものは_第2視【50[破]伝習座】

まなざしの奥にあるものは_第3視【50[破]伝習座】

 


  • 宮坂由香

    編集的先達:橋本久仁彦。子どもに忍術を教え、毎日ジムに通い、夜勤あけに富士山に登る、というストイックなまでの体力限界ギリギリな経歴。現在も出版社で編集補佐、個人で画像編集・フォトグラファー、編集力チェックの師範代と八面六臂の活躍で周りに刺激を与え続ける元気印ガール。

  • まなざしの奥にあるものは_第3視【50[破]伝習座】

    50[破]の第2回伝習座を写真で辿る「まなざしの奥にあるものは」も、いよいよ最終視。ここまでの道のりを思い起こしつつ、更に奥へと進もう。 ※歩いてきた道はこちら→第1視/第2視     本楼入口にある […]

  • まなざしの奥にあるものは_第1視【50[破]伝習座】

    イシス編集学校には「伝習座」という場がある。指導陣が集い、学衆に伝える編集の方法を研鑽する場だ。 6月、編集学校の入門コース[守]と応用コース[破]が、それぞれ別日に行われた。約7時間、もしくはそれ以上の時間、英知を身体 […]