多読ジムでは、様々なマーキング読書を試す稽古がある。マーキングについては、以前、国語教諭の川野貴志師範から国語問題におけるコツを伺ったことがあった。
中学受験を控えて、兄よりも文章がしっかり読めそうな娘の国語の成績が伸び悩んでいた頃、川野師範に相談してみた。
かわ 「国語に限って苦手」は、まじめなタイプの子に意外と多いんですよね。労力を惜しまないから、どの情報が重要で、どの情報が枝葉でスルーしてよいのか、みたいな加減が性格的につけづらいのです。全ての情報にマジレスしてしまう。
おぐ ま、まじれす… たしかに彼女、すごくまじめにマーキングしながら文章を読んでいるのですが、よく観察していると線を引きすぎなんです(笑)
かわ 線引きまくりは、まさにオールマジレスの証拠です(笑)「ここも大事だったらどうしよう…」という不安が先立って、不要な情報が捨てられないんですね。
おぐ 兄の拓海は、おおざっぱすぎて必要な情報を読み飛ばす傾向が…
かわ うん、わかります(笑)拓海くんと美南ちゃん、足して二で割りたいですね。
おぐ はい(笑)
その後、川野師範は、娘に国語試験用のマーキングポイントを箇条書きで教えてくださった。川野師範直伝、国語試験用マーキングポイントは以下のごとくである。
◆マーキングすべき箇所◆
●具体例が展開されているエリアの直前・直後。(逆に具体例は基本マジレス禁止。時間がないときは斜め読み)
●ということは、「たとえば」の直前。(「たとえば」は一般論と具体例の境界の印なので)
●「つまり」「要するに」など、言いかえ系接続詞の直後。
●巷の講義や参考書だと逆接の接続詞の後ろは重要とよく言いますが、逆接は普通に文章書いていれば頻繁に使われるので、全ての逆接にマジレスすると、すぐ線だらけになります。よって、「たしかに」「もちろん」など、譲歩とセットになっている逆接に、マジレス相手は絞るべきです。
以上、脱・オールマジレスの第一歩として、ご活用ください(by. 川野)。
オールマジレスの娘は、川野先生のアドバイスは全部、マジレスする。以前、子ども編集学校のモニター受講をした際、作文のコツとして、書き出しには、読者に問いかける方法が有効ですよ、と教えてもらった。それ以降、彼女は作文を書くたびに「みなさんは、○○を知っていますか」「みなさんは、○○と思ったことはありますか」と、問いかけで始めるようになり、中2になった今は英作文でも、付加疑問文がお気に入りになった。don’t we?、will you?と、文末に疑問符をつけて、問いかけまくっている。彼女のマジレスぶりは今でも健在である。
川野師範直伝マーキング法のおかげで、だいぶ読解に濃淡がついてきて楽に読めるようになっていった彼女であるが、次に彼女を待ち構えていたのは「選択肢問題」だった。特に物語文でその問題が顕在化した。そこでまた、川野師範に相談することになるのだが、それはまた別のエッセイでお話する。
さて、現在、Season03の開講を待つ「多読ジム」では、いったいどんな多読マーキングを教えてくれるのだろうか。
多読ジムのマーキング読書で、国語の試験の成績が上がるかは試したことはないが、多様な読書筋が鍛えられ、読み方が自在になるのはたしかである。ボディービル用語でいうところの「カットの美しい(意味:ひとつひとつの筋肉の筋(すじ)がすべて別々に鍛えられ切れ味抜群に見えること)」読書筋が出来上がる。本の種類、その時の心身のコンディションなどによってマーキングの方法を選択できる。そして、著者との対話が自在になるのである。
多読ジムでは、お互いのマーキングの成果を見せ合う稽古も用意されている。同じダブルページでもこんなにマーキングは異なるのか!と、お仲間の読書の足跡を観察しては、毎回驚いている。気になってきた方(イシス編集学校の[破]のコース修了が条件です~)は、多読ジムへぜひ!お待ちしております。
ほんの少しだけ、マーキング読書法を鍛えるコツを。ひとつは、本をノートだと思うこと。ふたつめはその本のキーワードと対にして、その時気になる言葉、お気に入りの言葉をホットワードとして決めること。その対を手すりに読んでいくと、著者と対話するように読むことができるのである。「読書は交際である」と校長。リモートに疲れたら、著者とランデブーはいかがでしょうか。
おっとっと。これ以上おしゃべりすると大音美弥子冊匠に怒られてしまうのでこのあたりで。冊匠にも、いつかエディストに「読めば、美弥子」のタイトルでご登場いただきたいですね。
川野師範のマーキングは、要約的、かつ論理抽出読み。文章の骨組みを理解し、そこから重要ポイントだけを抜きだすマーキング法のひとつである。国語の成績に悩むみなさん、お試しあれ!
多読マーキング読書
小倉加奈子
編集的先達:ブライアン・グリーン。病理医で、妻で、二児の母で、天然”じゅんちゃん”の娘、そしてイシス編集学校「析匠」。仕事も生活もイシスもすべて重ねて超加速する編集アスリート。『おしゃべり病理医』シリーズ本の執筆から経産省STEAMライブラリー教材「おしゃべり病理医のMEdit Lab」開発し、順天堂大学内に「MEdit Lab 順天堂大学STEAM教育研究会」http://meditlab.jpを発足。野望は、編集工学パンデミック。
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