今年の干支は何だっけ?もう最近全然わからなくなってしまった。
昔はそんなことはなかった。年賀状という一大イベントがあったので、いやでも頭に叩き込まれた。
若い頃から社交性に欠けていた私は、年賀状のやりとりをする知り合いなど、数えるほどもいなかったが、その数人に向けて、毎年、手の込んだ年賀状を自作していた。
それも中二病全開のバッドテイストな年賀状で、こんなの(↓)を描いて一人で喜んでる淋しいヤツだったのだ。
だいたい、上の「童夢」パロディを作ったあたりで、マンガを引用するという手に目覚めた私は、以後毎年、干支にちなんだマンガのカットを探すようになった(寅年は小説だが…)。
出典:楳図かずお「14歳」
アルフレッド・ベスタ―「虎よ、虎よ!」
水木しげる「風刺の愉しみ」
相原コージ「かってにシロクマ」
藤子不二雄「ミノタウロスの皿」
平田弘史「やんめごろ炎魂」
永井豪「デビルマン」
手塚治虫「ロストワールド 私家版」
さすがに結婚してからは、こういうイタい年賀状は打ち止めとなり、よくある子どもの写真を添えた月並みな年賀状に移行した。
そして、そんな年賀状すら、年々減少の一途をたどっていくことになる。
むかしは毎年、数枚しか年賀状が届かない私のかたわらで、大量の年賀状を受け取り、いやというほど差を見せつけていた私の妻も、最近はすっかり年賀状のやりとりをしなくなった。今では、年明けに、コンビニで買ったありものの年賀状で申し訳程度の対応をしている有様である。
こうして、昔から当たり前のようにあった風習が、徐々に衰微していく様をみていると、一抹のさみしさのようなものを感じないでもない。かといって、積極的に存続を願うほどでもないのだが…。
やっぱり面倒くさいし…。
正月は間違いなく本邦最大規模の年中行事だ。書きぞめ、門松、お年玉、餅つき、お雑煮、おせち料理、凧揚げ、羽根つき、初詣でに年始の挨拶などなど、イベントの激戦区だ。このうちの一つや二つ脱落したところで不思議はない。
その点、年賀状は分が悪い。猫も杓子もデジタルな世の中だ。けっこう面倒くさいこの風習がどんどん縮小されていき、今や風前の灯火となっているのも故なしとしない。
しかし、この風習、果たして絶滅するのかな…。細々とではあるが、意外としぶとく生き残るのでは?
年賀状とは要するに「挨拶」だ。
すれ違いざまに「どうも」と言ったり、ちょっと天気の話をしたりするのが挨拶なわけだが、これにはほとんど情報がない。
かといって、ナシにしてしまうと、何かと具合が悪い。
私たちは有用な情報のやりとり以外に、膨大な量の、一見無意味なシグナルの応酬を日々、繰り返している。
年賀状というのもその一つなのだろう。年に一度も顔を合わせない人にも、とりあえず「どうも」と言ってみる。この一言の、あるなしで随分違う。
“贈与互酬”というほどの強いものではないが(お歳暮の風習はだいぶ廃れた)、年に一度、「どうも」と言えるシステムは何かと便利だったのだ。だからこそ、この制度は長年にわたって命脈を保ってきたわけだ。
――というわけで、今年も「めんどくさいな」と言いながらも、いそいそと年賀状を書き始めていたのであった。
そうか、今年は辰年であったか。
(了)
※ひさびさに模写をやってみました
元ネタ(↓)
石ノ森章太郎『龍神沼』(朝日新聞出版)
石ノ森が真のイノベーターだったのは昭和30年代の少女マンガです。
詳しくは【マンガのスコアLEGEND36】石ノ森章太郎/カッコイイとはこういうことだをどうぞ!!
※アイキャッチ画像は、谷岡ヤスジ『アギャキャーマン』より1988/2/2号第746話。
唐突に「龍」の現れるこの回は神回とされる。
「連載終了直前の『アギャキャーマン』は毎回毎回異常なまでに面白く、谷岡の高揚を感じさせた。(中略)1988年2月2日号の分は、あまりにも面白く、既に旧知の間柄なのにあえてファンレターまで出した。谷岡も大喜びで分厚い返事をくれた。」(『谷岡ヤスジ天才の証明』より呉智英解説)
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◢◤堀江純一の遊姿綴箋
イタい年賀状を大放出!!(2024年1月) (現在の記事)
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堀江純一
編集的先達:永井均。十離で典離を受賞。近大DONDENでは、徹底した網羅力を活かし、Legendトピアを担当した。かつてマンガ家を目指していたこともある経歴の持主。画力を活かした輪読座の図象では周囲を瞠目させている。
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