完成しているはずの作品のなかに編集の余地があるのを見つけたとき。第83回感門之盟のフィナーレを飾った鴻巣友季子氏と松岡正剛校長との対談のなかで、鴻巣氏が翻訳の妙味をこう語った。イシス編集学校の指導陣も心の内で大きく頷いたことだろう。
半年前の2023年9月、第82回感門之盟、卒門して次の道に迷う守学衆と突破して寿ぎあう破学衆の間に立った52[守]師範の阿久津健の胸に渦渦と去来するものがあった。[守]の卒門式は感門之盟の初日、[破]の突破式は感門之盟の2日目に行なわれる。多くの者は、師範として初日の卒門式に参加し、黒膜衆のカメラマンとして2日目の突破式に参戦する阿久津のようには、守学衆と破学衆の両者の誇らしげな晴れ姿を目撃することは叶わない。これまで、[守]の指導陣たちは、卒門を果たした学衆に、汁講での指導陣の体験談語りや突破学衆からのテキストメッセージの配信など様々な手を尽くして、守稽古の先の編集の奥を示してきた。が、眼前の突破学衆のイキイキとした姿こそ可能性を秘めているのではないか。外に目をやれば、YouTubeやTikTokといった動画専用のプラットフォームだけではなく、SNS上でも動画コンテンツの配信が増えている。
「突破学衆のインタビュー映像編集に取り組みたい」。ほどなく阿久津が52[守]師範陣の集まる場で呟いた。即座に師範の角山祥道が賛意を表し、突破学衆のインタビューの映像編集は、52[守]師範陣のターゲットのひとつとなった。第83回の感門之盟の全容が見え始めた3月初旬、俄かに映像班が結成された。名のりをあげたのは、映像撮影の初心者の稲垣景子と阿曽祐子。使うツールは手軽なスマホだ。阿久津が撮影のコツを伝授し、角山が学衆の想いを引き出す問いをアドバイスする。狙うのは感門之盟2日目、突破式とP1グランプリ終了直後の20分休憩だ。仲間と寿ぎあって表情も感情もピークに達している間隙である。
51[破]の指導陣の後押しも得て、突破学衆が次々カメラの前に集まった。
「守と破は別物ではないということがわかった」
ー静かな声色だが、力強い眼差しでその確信を伝える。
「クロニクル編集術で自分を全く異なるものと重ねたことで、自分のキーワードが見えてきた」
ー”自分”という対象に編集可能性を見出した喜びに声が弾む。
「自分のなかで書きたいものが初めて出てきた」
ーもっと書きたいとう渇望が胸の奥から飛び出さんばかりに力強い。
「あまり好きではなかったモノゴトの違う面が見えてきて自分でも驚いている」
ー言葉を選び頷きながら確かめるように話す。
インタビューを決行してから5日後、11名分の映像編集を終えた阿久津からの声が52[守]別院に届いた。
今期51[破]を修めた学衆の声をあつめた映像をお届けしましょう。
物語編集術における「英雄伝説の型」でいえば、旅立った遠くから帰還した英雄たちの姿です。
情報と情報のあいだに潜む「まだ編集されていない部分」を逃さないひと潮がつながって、師範による映像編集という新たな潮流が生まれでた。師範たちの目は、編集を待っている人・場・兆しを決して逃さない。
(文:52[守]番匠 阿曽祐子)
★第52期[破]応用コース
稽古期間:2024年4月22日(月)~ 2024年8月11日(日)
申込はこちらから[破]応用コース – イシス編集学校 (isis.ne.jp)
★第53期[守]基本コース
稽古期間:2024年5月13日(月)~2024年8月25日(日)
申込はこちらから[守]基本コース – イシス編集学校 (isis.ne.jp)
守のことがわかるエディットツアー(4月14日開催)
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