『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。

ありがとう、蕃山。
現代社会と熊沢蕃山の関係を紐解いた輪読座『三輪物語を読む』が終了した。
東京を春の大雪が襲った日だった。
輪読師・高橋秀元は「蕃山こそが資本主義だ」と、熊沢蕃山を資本主義という見方で語り、最終回をしめた。
今期の輪読座は、蕃山の見方を借りて、現代の経済、学問、政治、環境など、あらゆる課題を考える契機となっていた。
高橋秀元、通称バジラは毎回「今回もおもしろいよ~」と言いながら豪徳寺ISIS館にやってくる。
蕃山最終回のために、バジラが用意したのはなんと7枚もの図象だった。枚数はいつもの倍。書かれている“概念曼荼羅”は、3回も書き直したという渾身の作。パソコンがクラッシュするたびに書き直した結果、推敲が進み「いい図象になった」とバジラはご満悦だった。
7枚もの図象。このままでは図象解説だけで最終回が終わってしまう。
バジラに1枚15分で話してくれと依頼をし、タイムキープをしながら図象解説が行われた。「若干」50分の時間超過がありながらも図象解説を終え、大雪にもかかわらず駆け付けた参加者とともに『大学或問』を輪読し『三輪物語を読む』の幕をおろした。
熊沢蕃山は、「ヒト」は良知を発揮することで開発力を持ち、何かを創出できるものだととらえた。
良知を発現させるヒトには、男女も階級の差別もなく、平等に教育を受けることができる。
バジラが言う。「日本人は今こそ蕃山に学ぶべきだ!」。
蕃山は、中江藤樹に学び日本陽明学を確立し、陽明学は佐藤一斎をはじめ、一斎の門下である山田方谷、渡辺崋山、佐久間象山、横井小楠、安積艮斎、大橋訥庵、中村敬宇など多くの志士により広がっていった。
日本陽明学が、幕末から明治維新への新たな時代をつくる運動を進めたといえる。では陽明学を手にした幕末の志士は、なぜ時代を動かそうとしたのか。
佐藤一斎は『言志四録』の中で、どのような方向に学ぶべきかを指す「志」を示した。佐藤一斎は蕃山以降の日本陽明学を代表する一人である。
教育者は知識を教えるのではなく、「志」を教えている、とバジラは語る。
志を持つには「学ぶこと」に徹しろと一斎は言った。志は、自分のおおもとであり、志を持つとは自分自身の根幹を緩めないという覚悟である。
幕末の志士は『言志四録』を読み、自分の良知を求める行動をつづけ、新たな時代の扉を開いていったのだ。その後も、明治中期までは陽明学という泉が枯れることはなかった。
蕃山の志は佐藤一斎に、幕末志士に、そして時を超え、輪読座の一座に受け継がれている。
次回の輪読座は『世阿弥を読む』。2020年4月26日(日)から、イシス20周年記念の講座がはじまる。
衣笠純子
編集的先達:モーリス・ラヴェル。劇団四季元団員で何を歌ってもミュージカルになる特技の持ち主。折れない編集メンタルと無尽蔵の編集体力、編集工学への使命感の三位一体を備える。オリエンタルな魅力で、なぜかイタリア人に愛される、らしい。
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コメント
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