人生とは、時間の積み重ねだ。人生を変えたいなら、時間を編集すればいい。イシス編集学校では、生き方を変える方法までも手に入るのかもしれない。シリーズ「イシスの推しメン」11人目は、自身で暦(こよみ)を作り、新たな時間感覚を世に広めるべく活動するこの方に話を聞いた。
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聞き手:エディスト編集部
イシスの推しメン プロフィール
藤田小百合
ハレ暦案内人。20代のころガンを患い、生き方を変えるべく「ハレ暦」という独自の暦を開発。自身のサロンで、室礼や時間に関する講座を提供している。イシス編集学校には2014年、基本コース33期[守]に入門し、2020年に全講座修了。師範代としては、36[守][破]共術かさね教室で登板後、すぐに38[守]、39[破]コノハナサクヤ教室師範代として再登板。4期連続登板は、イシス史上初。富山在住、富山シティエフエムで30分番組「藤田小百合のハレ暦」に出演中。
■月に導かれイシス編集学校へ
暦の案内人は、いかにして編集稽古に惚れ込んだのか
――藤田さんの肩書は「ハレ暦案内人」とお聞きしたのですが、それは一体……?
「ハレ暦」という暦(こよみ)を作ったんです。これはマヤ暦のカレンダーをベースに、日本の伝統行事などを組み込んだ独自の暦です。私はそれを使って、時間や室礼(しつらい)について学ぶ講座を開いています。
――学校のようなものを開いておられるんでしょうか。
私は富山にサロンをかまえていまして、そこに10〜15名程度で集ったり、ZoomやFacebook上でもやりとりをしたりしています。月の満ち欠けと同じ28日周期でテーマを決めて、毎月みなさんと交わし合っているという感じですね。
――おぉ、実際の活動も太陽暦とは異なる時間軸で行われているんですね。そんな藤田さんはなぜ編集学校へ入門されたんでしょう。
私たちの暦は「月」がテーマなんです。20年ほどまえ、月に関する本を読み漁っていて、そのとき松岡正剛校長の『ルナティックス』に出会ったんです。それを読んで「私たちと同じようなことを言っている本がある!」とびっくりしたんです。
――月という共通項で松岡校長とつながったのですね。
ええ。2013年、その松岡校長が、新潟弥彦村で行われる「全国門前町サミット」というイベントで講演をされるということを聞きまして、娘と一緒に車で駆け付けたんです。そうしたら会場の座席にイシス編集学校のパンフレットが置いてありました。
――本から講演会、そしてイシス編集学校へ辿り着いたんですね。それですぐ入門を?
いやいや、そうじゃないんです。「編集学校」と聞くと、文章を書く人たちが学ぶところなのかなと思っていて、私には関係ないやと遠巻きにしてました。でもその半年後くらいに、部屋の掃除をしていたらたまたまパンフレットが見つかって。当時は、自分の思いを伝えるということに日々限界を感じていたので、ここで何か変わるきっかけをつかめるかもしれないという淡い期待とともに入門しました。
――基本コース[守]を受講されていかがでした?
まず「文章を書く練習じゃないんだ!」ということにびっくりしました(笑)。でもなにより、感門之盟に驚いたんです。
――感門之盟って、講座の修了を祝うイシス編集学校の卒業式ですね。どこに驚いたんでしょう。
みなさんのモチベーションの高さです。イシス編集学校というところには、こんなに熱意のある方たちが、これほどたくさん集まっているのかと圧倒されました。こんなアツい場所なのに、私はここを知らなかったんだろうって不思議に思うくらい。
――感門でのイシスの熱気に驚いて、その先へ。応用コース[破]はどうでした?
イシス編集学校で学ぶ編集術こそ、私たちが欲しかったものだ!と思いましたね。
■ガンが人生の転機に
編集学校で学んだ「自由の作り方」
――暦を使った活動と、編集稽古はまったく違うように見えるんですが、何が共通していたんでしょうか。
私たちが「ハレ暦」を使っているのは、あらゆる関係を察知するためなんですね。そういう考え方と、すべての情報
に関係性を見つける《編集》はまったく同じだと思ったんです。
――なるほど。情報を関係付けるというのは、編集の基本ですね。
松岡校長の『知の編集術』を読んだとき、そこで書かれている「情報」という言葉が「時間」という単語に置き換えられると気づいて大感動しました。私は、暦を作るくらいですからふだんから「時間とはなにか」ということを考えていたのですが、それは「情報とは何か」ということにつながっていることに気づいたんです。
――「情報」を「時間」と読み替えると、編集術の威力がよく実感できたんですね。なぜ藤田さんは「時間」について関心がおありなんでしょう。
じつは私は26歳のときにガンになりまして。そのとき、「時間の使い方」を変えていかないとだめだなと思ったんです。病気という結果は、日々の過ごし方の蓄積によるものだと考えたんです。
――ご病気が転機でしたか。
そう。それで病気を治すべく、中国に行って、気功に出会いました。それが私にはすごく合って、日本に戻ってみなさんに伝えようとしたんです。でもそうすると、みなさん一様に「時間がない」とおっしゃる。
――耳が痛い。たしかに、私たちはいつも忙しくて、病気を予防するための時間はなかなか作れないです。
みなさんには、私のように病気になるまえに身体をケアしてほしかったのに、それは難しかったんですよね。そのとき、時間の概念を変えない限り、みんな健康にならないなと思ったんです。
――なるほど、だから「時間」を編集しようと思って、暦を作って広める活動を始められたんですね。
そうです。情報もどこで区切るかによって意味が変わるように、時間も切り取り方によって意味が変わるんです。人は起きてしまった出来事にとらわれるけれど、編集術を知っていれば、もっと自由になれると思ったんです。
――「時間」も情報のひとつですから、編集できますよね。
時間が編集されれば、心も編集される。心が編集されれば、悩みが解決する。そのための方法が、イシス編集学校にはありました。
――おぉ、力強い!
暦ユーザーの仲間には、編集学校で学ぶ人も多いのですが、みんな口々に「イシスに行ってよかった」と言うんです。とくに、「同時にいろんなことができるようになった」という声が多いですね。ひとつの時間だけでなく、何層もの時間が同時進行しているような感覚でしょうか。
――松岡校長は「忙しいときは仕事を5倍にしろ」とおっしゃいますが、いくつも仕事を重ねるほうが互いに関係づけられて編集が加速するんですよね。
そうだと思います。画一的な時間から抜け出して、本来の自然時間を取り戻すということが私たちの願いなので、時間感覚が変わったという声を聞くとお勧めしてよかったなあと心から感じます。
■続けることに意味がある
繰り返して進化するイシスのシステム
――藤田さんの勧めで、イシスに入門された方が15名以上もおられるんですよね。
関係性を見つける編集という方法を知ったとき、これは、ハレ暦ユーザーの仲間たちにかならず伝えなければと思ったんですよね。でも、勧めるには、イシス編集学校というところがしっかりした団体なのか偵察する必要があると思って(笑)。[守][破][花伝所]をおえて、師範代として登板するときに、一気に仲間に声をかけました。
――藤田さんは全講座を修了しておられますが、イシスのどこに魅力を感じたんでしょう。
ひとつは、惜しみなく与えてくださるところですね。たとえば師範代に対しての研修である「伝習座」などでは、一度に消化しきれないほどのレクチャーや資料を用意くださるじゃないですか。それに、編集学校での稽古のようすは、期間が終わってもずっと閲覧が出来ますよね。何度も見返すことのできるシステムが、私にはヒットしました。
――いまでも[離]のテキストである文巻を読み直しておられるとお聞きしました。イシスでは、スピード感を持って取り組むときと、あとからゆっくり味わうとき、いくつもの取り組み方ができるのはいいですよね。
もうひとつは、「二度と同じものがない」というところも気に入っています。私はもともと、同じことを繰り返すなかで、新たな何かを発見するというのが好きなんです。同じお題に取り組んでも、その都度自分から出てくる言葉が変わるし、学衆さんによっても回答はぜんぜん違う。そういう変化を感じられるのが楽しいですね。
――藤田さんは一度目の[守][破]師範代を終えると、すぐに次期[守]に登板されたんですよね。師範代の連続登板は、前代未聞です。
二度目の[守]師範代のとき、「なんでみんなやらないんですか?」って言った記憶があります(笑)。こういうお稽古ごとは、継続することに意味があると思っていたので、迷わず二度目を志願しました。
――[守][破]の師範代を1年通して終えるって42.195kmを走りきって倒れ込むような心境ですから、すぐさま[守]師範代に再登板するなんて考えられないです……
私は不足が多すぎるから、何度もやらないとわからないんですよ。たとえば一度目の[破]では学衆さんに遠慮してしまった部分がありましたが、二度目では意識的にそれを破っていきました。回答の締切を、結構厳しくアナウンスしたり。
――記事ではカットしちゃったんですが、推しメン9人目の内海さんが藤田師範代の鬼指南ぶりを暴露しておられましたよ(笑)。その強いリーダーっぷりは、当時学匠だった木村久美子月匠も絶賛しておられました。
ふふふ。自分の人生のなかは、誰かに背中を蹴られることが転機になるということがあったんです。病気になって中国に行ったのも、周囲のおかげでした。自分のペースでは絶対にできないことがあると分かっていたから、嫌われても背中を押す人になろうと思ったんですよね。
――目の前の人と関わりながら、相互編集していくというお仕事は、イシスの師範代に近いのかもしれませんね。
そうですね。私はその人の近くにいて、いざとなったときにすぐ手を差し伸べられるようにしたい。編集学校での稽古も、信頼関係がありますよね。自分が破学衆のとき「もうだめだ」と諦めかけたんですが、そんなときに仲間の学衆さんが声をかけてくれて無事突破できたんです。そういう信頼に基づく人間関係は、私がすごく好きな世界です。
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梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
イシス編集学校メルマガ「編集ウメ子」配信中。
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