発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

令和7年5月17日に開催された【春の候・遊山表象】。あの田中優子宗風と同じ舟に乗り、神田川を周遊しながら江戸の面影をたどるというスペシャルな企ては、荒天により夢まぼろしと相成った。代わりに、EDО風狂連が集ったのは「上野」である。そこで何をしたのか。やけっぱちでカラオケにでも行ったのか。イシス編集学校未入門者にして連中が一人、“徨兎”が当日のうちに書き上げた〈かわら版〉をお届けする。
皆が面を揃へし時分には、横殴りの雨にて樹々ざわめきたり。不穏な空模様なりしも、見知れる姿に安堵して、笑みの溢れる者もあり。誰あらうか舟遊びに興じようとの目論見は、口惜しけれど破れたり。やをら声のかかるに、雨風のなかに歩みを進めたり。
やがて大きな館へと至りしを、その名を東京国立博物館は平成館と言へり。蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児なる特別展が行はれり。館へと招き入れられて後は見上げし高みへと導かれり。回廊を通じて往来を許さるるに、左手はすぐより入られしも右手は奥へと回るもよしとされたり。天の声の聞かれしやう絡繰を授けたるなど、現世との橋渡しもぬかりなく、まさしくべらぼうな歓迎ぶりにて候。
さては多くに連なりゆくに、眼前には大門が聳えたり。奥には常夜燈に照らされし櫻の咲けるが垣間見えたり。吸ひ込まれるやうに門をくぐれるに、此処に江戸は吉原にか思はれり。其処彼処に江戸の様相などうかがはれしあれやこれやが所狭しと並べられたり。人たちもまた、層を成して並びたり。所々に大きな人だかり見られり。なるほど美人画のあたりと思はれり。
江戸の営みは様々にして映し出されり。色鮮やかにや、ときに墨黒にて粋にや、いづれも生き生きと描かれり。さほどには大きくあらずも、細やかに描き上げられたるは見事なり。おほかたは摺物にて、戯作者や絵師ばかりのものにやあらず、彫師や摺師の手による技巧の集大成にて、版元のネットワークが生みしものなり。姿形あるものに仕立てるに、かかはる者には皆に名がありては、戯作者などが筆名を用ゐたるをもつて皆が名をつらねるに相成らんとされまいか。
いつしか江戸の町に迷ひ入りたるか、蔦屋耕書堂の店前に立てり。ときに重三郎なる者はをらねど、商ひの繁盛はうかがはれたり。日本橋の空に花火が打ち揚がりて宴に興じたる町を照らし出せり。かくて栄華乃夢噺は醒めやらず、今また蔦重的なる者が空を見上げてポンと膝を打つを、雲の流れて出づる月に願はんとす。
文:徨兎(鈴木達也)
写真:大武美和子歌雀、木村久美子月匠
編集:本惚(吉居奈々)
EDО風狂連では〈かわら版〉のみならず芭蕉翁にならって紀行文〈旅の記〉を物するなど、益々メディエーションの風が立っております。徨兎の例のように、イシスの受講歴は関係ありません。狂風ならぬ風狂に遊びたい方、ぜひこの夏よりご一緒いたしましょう。
《多読アレゴリア2025夏 EDO風狂連》
【定員】30名
【申込】https://shop.eel.co.jp/products/tadoku_allegoria_2025summer
【開講期間】2025年6月2日(月)~8月24日(日)
【受講資格】どなたでも受講できます
【受講費】月額11,000円(税込)
※ クレジット払いのみ
※ 初月度分のみ購入時決済
以後毎月26日に翌月受講料を自動課金
例)2025夏申し込みの場合
購入時に2025年6月分を決済
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夢の続きは上野で。――続・栄華乃夢噺〈かわら版〉
EDO風狂連
【EDO風狂連】は、江戸の文化を「読む」「書く」「遊ぶ」連です。江戸以前の文化を本歌取りした江戸文化をまるごと受け止め、江戸から日本の方法を学ぶ。目指すは「一人前の江戸人」です。
【7/20開催★ISIS FESTA】田中優子の「江戸の音」
時は享保18年(1733)、前年に起きた大飢饉と疫病流行による犠牲者の慰霊と悪疫退散を祈り、両国橋周辺の料理屋が公許により花火を上げました。これが「両国の川開き」での花火の由来、現在の隅田川花火大会へとつながります。 […]
【EDO風狂連】編集別世にいざ参らん~夏の候の船出は間近(残席僅か)
守師範代としてのロールも担い、八面六臂の大活躍、イシス編集学校の田中優子学長を宗風に迎え、監修いただくは【EDO風狂連】。一人前の江戸人を目指して歩む道中も、3シーズンめの夏の候を迎えます。 「連」と言えば江戸の […]
**多読アレゴリア【EDO風狂連】2/16<遊山表象>体験録 ** イシス編集学校学長・田中優子氏を“宗風”に迎え、江戸の文化を読み書き遊ぶ【EDO風狂連】。『蔦屋重三郎 江戸を編集した男』(文春新書)を […]
【2/16開催★ISIS FESTA】田中優子の江戸・蔦重の編集力
カンカンカーンと半鐘を打ち鳴らしていたかと思えば、吉原のために奔走する。2025年の大河ドラマ『べらぼう』の主人公は蔦重こと蔦屋重三郎。第1回の放送以降、このドラマが気になってしょうがない、そんな人も少なくないでしょう […]
コメント
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2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。