週刊キンダイvol.016 〜方舟に乗って~

2025/08/27(水)12:29 img
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キンダイ

 歴史が動いた。2025年8月24日23時59分、55[守]の近大生の卒門率が57.1%に達した。5割を越えたのは6年ぶり。とりわけ、近大生だけのマグロワンダフル教室では「うわぁぁぁぁぁ!!!これで卒門ですぅぅ(´;ω;`)」と、23時から〆切までのわずか1時間のあいだに4人がゴールテープを切り、9名の大漁卒門となった。


 

予測のできない日々


 7月最後の週。たったの8投稿と、師範代の声だけが木霊して凪の一週間が過ぎていった。奇跡の狼煙が上がったのが7月29日。「定期試験が完了しましたので、編集工学に集中して参ります!」その一声が元気に響いた。「やっとテストが終わりました。」「テストの手応えが悪く、憂鬱ですがやっていきます」と一人が届くと繋がるように次々に集まってくる。「今回も1番槍ですー」とマクラの挨拶も軽やかに、溜まったお題を1日で5連投するなど次々とスターが現れる。卒門日までの1週間は181投稿と一気に祭の賑わいとなった。

 

水面下の稽古

 

 最終日、朝の時点で卒門者は3名だった。あと7名が1日で卒門できるだろうかと思ったとき「今月は毎日予定を入れてしまい、隙間時間になんとか少しずつ進めていました。」と1ヶ月ぶりにOさんから届いた声に驚いた。エディットカフェへの回答はなかったものの、授業やバイト、遊びの合間に稽古を着々と進めていたのだ!回答という形で現れていないだけで、凪に見えた教室は水面下で動いていた。その後、24回答を連打し23時43分に見事、ゴールした。

 

高速の中に見えた世界


 最後のお題は38番「編集カラオケ八段錦」。13時53分に「なんとか全部終わった」と回答したMさん。しかし33番「やわらかいダイヤモンド 」が未回答だった。そのことを告げると「次の予定があり、駅でパッパと考えたんですが、過去で一番頭が巡って、世界を見つめた気がします。」と2時間もたたないうちに、輝く回答と共に不足を埋めてゴール。

 集中したときの学生はすごい。「昨日、電車でこの歌を聞いたのでそれにしました。」と通学で聞いた音楽を回答の題材にしてみたり、「こんなにうまくはまるものですか!?」なんて驚きと共に型を自分のものにしていく。仮留めで出す回答の振り返りには「また考え直したいと思いました。」と、編集にはまだまだ先があることを感知した様子もうかがえた。

 

30分のデットヒート
 スローモーションで映画をみているようだった。23時30分の時点で卒門者はまだ5名。ここからがすごかった。34分、43分、58分と10分刻みで卒門者は8名に達した。

 

そして、23時59分。

 ここまでこれたのは、稲森さんの手厚い声掛けとサポートがあったからだと思います。一度挫折しかけましたが、稲森さんのおかげでここまで来れました!
 本当にありがとうございます!また稲森さんと一緒に稽古を進めれたらいいなと思います。今までありがとうございました!!

 

 Yさんより卒門者全員の声を代弁するかのような振り返りと共に、マグロワンダフル教室に9名の卒門者が誕生した。

 

<2025年8月24日 23時の長い長い1時間>

 

トポスとリアル


 特大の嵐がすぎた後は投稿がぱたりと消え、再び静けさが訪れた。とんでもない卒門率をたたき出した瞬間は誰もが呆然とした。しばらくすると「どうして、こんな凄いことが?」と講座に関わる指導陣から声が寄せられた。

 誰もが思うのは、稲森久純師範代のこと。どれほど教室が静かでも、明るい声を絶やさずに、ダイレクトメッセージ作戦で着実に下地を整えたていったことが最後に湧くような回答に繋がったのは明白である。

 さらに今回の取り組みには「トポス」と「リアル」があった。デジタルネイティブの学生だからこそ、大学構内のビブリオシアターでの稽古Dayリアルサポートを4回に渡り手厚く行った。直接会ったことがある、顔を知っている大人たちからの声がけが最後の粘りに繋がったのだろうと思う。


55守×近大生の忘れられない夏

 55[守]は全体の卒門率も高かった。近大生の卒門はマグロワンダフル教室だけではなく、うたしろ律走教室、ヤキノリ微塵教室、異遊トラベルソ教室からも出ている。「風が吹けば桶屋が儲かる」のごとく、たくさんのIF・THENが折り重なったことで、記憶にも記録にものこる[55守×近大生]の名が、この夏、イシス編集学校に深々と刻まれた。

 

 まだ腹落ちしてない型も、馴染んでいない型もあるかもしれないですが、日々、型を使い続け、振り返る。これを繰り返すことで、日常の地続きの世界になんなく向かっていけるようになります。

 型のある人生はもうとっくに始まっています。卒門で止まらず次に進んでいきましょう。(近大番 南田桂吾

 

 守講座を思い出にして夏のアルバムに綴じてしまってはいけない。

 この4ヶ月で過ごした稽古の日々は、文庫本のようにいつでも持ち歩いたり、服を着るよう今日の気分で型を選んでみたりして、新しい航海に向かってほしい。海に終わりがないように、編集稽古にも終わりはない。


アイキャッチ/稲森久純(55[守]師範代)
文/一倉広美(55[守]師範)


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