空中戦で捉えた獲物(下)をメス(中)にプレゼントし、前脚二本だけで三匹分の重量を支えながら契りを交わすオドリバエのオス(上)。
豊かさをもたらす贈りものの母型は、私欲を満たすための釣り餌に少し似ている。

世界は偶然に満ちている。
アメリカ作家オースターの持論であり、「偶然」を好んで小説に取り入れてきた。それが人気の一因となる一方、偶然はそうそう起きるものではないという批判もある。そんなオースターが意を強くする事件が、49[破]で起きた。
事の顛末はこうだ。
藍染発する教室の師範代として49[破]に登板する古谷奈々は、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンをもつ中川政七商店に務めている。その古谷が11月初旬、visionsというサイトのライター2人から取材を受けた。Zoomでの取材が始まるや否や、ライターのひとりから「私はあなたを知っている」と告げられる。きょとんとする古谷に、もうひとりのライターが、自分は49[破]の学衆であると明かしたのだ。
前者はかつてイシス編集学校の学衆、いまは感門団で活躍する内村寿之、後者は縞状アンサンブル教室の学衆、鳥本菜々美である。「自分らしい社会への役立ち方」をテーマに取材をし情報を発信するvisionsと、日本工芸の活性化に取り組む中川政七商店と、双方のビジョンが共鳴した結果、古谷の取材へとつながったのである。
「インタビュー編集術みたいなインタビューを受けました。いや、ビックリした」
取材後、学衆・鳥本が聞き手だったことに古谷は驚きつつ、あらかじめ絞られたテーマについて多様な角度から質問を重ね話を引き出す鳥本の手際を[破]の編集稽古にたとえた。
インタビューの中で古谷は、「私たちが届けることによって、それが100年後も残る」と、工芸復活に取り組む自社の仕事を誇る。たまたま巡り合った人とモノ、人と人との出会いによって後世に残りつづけるものがある。
そう、世界は偶然に満ちているのだ。
▼49[破]学衆が49[破]師範代に取材したインタビュー編集
◎これからの生き方学/古谷奈々さん
白川雅敏
編集的先達:柴田元幸。イシス砂漠を~はぁるばぁると白川らくだがゆきました~ 家族から「あなたはらくだよ」と言われ、自身を「らくだ」に戯画化し、渾名が定着。編集ロードをキャメル、ダンドリ番長。
54[破]第2回アリスとテレス賞大賞作品発表!アリストテレス大賞 高橋杏奈さん
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53[破]第2回アリスとテレス賞大賞作品発表!アリストテレス大賞 小笠原優美さん
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コメント
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2025-09-09
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2025-09-04
「どろろ」や「リボンの騎士」など、ジェンダーを越境するテーマを好んで描いてきた手塚治虫が、ド直球で挑んだのが「MW(ムウ)」という作品。妖艶な美青年が悪逆の限りを尽くすピカレスクロマン。このときの手塚先生は完全にどうかしていて、リミッターの外れたどす黒い展開に、こちらの頭もクラクラしてきます。
2025-09-02
百合の葉にぬらぬらした不審物がくっついていたら見過ごすべからず。
ヒトが繋げた植物のその先を、人知れずこっそり繋げ足している小さな命。その正体は、自らの排泄物を背負って育つユリクビナガハムシの幼虫です。