かつて「大人マンガ」というジャンルがあった(詳しくは「マンガのスコア 園山俊二」参照)。この周辺には、ファインアートと踵を接する作家たちが数多く存在する。タイガー立石もその一人。1982年、工作舎から刊行された『虎の巻』は、まさしくオトナのためのマンガの最極北。いいお酒といっしょにちびちび味わいたい。
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
「編集学校で習ったことを社会で実装実験してみたい」。そう宣言してから3年。起業アドバイザーとして編集学校で学んだ考えを生かそうとビジネスシーンで奮闘する齊藤さんの日常を、エッセイとしてお届けします。
■■異なるモノの「あいだ」に対角線を引く
「齊藤さん、そのアプローチでやってもうまくいきませんよ」
IPO(株式新規公開)を狙うベンチャー企業の若手社長が思いっきりかましてきた。AIとかロボットとか先端技術が未来をどう変えていくか、そんな議論が熱を帯びてきた時だった。
編集学校で学んだ考えをベンチャー投資の世界でも生かそうと、思考パターンの必要性をクライアントである若い経営者たちに語ってきた。「技術×コンテンツ×顧客からの支持の広がり=企業価値の創造」という「図式」を持つことが大事だとくどいほど強調した。異なるモノの「あいだ」に対角線を引き掛け合わせる、という方法は、私がイシスで得た方法のひとつだった。新技術は新たなコンテンツを通じて顧客を創る循環を招来すると説いたのだが、彼はそれを声高に否定したのだ。
彼の説明はこうだ。AIやロボットは人間がやることを置き換えるだけだ。この置換は完全競争下であれば売上価格の切下げ競争をあおり、結果利益ゼロになりかねない。ビジネスとして成功する世界とは逆の方向に向かっていると。
理屈は通っている。打ち返す言葉がない。確かにAIやロボットを軸にしたベンチャー企業は苦戦している。開発がうまくいっていないわけではないが、しっかりした利益に結びつかない。サービスや商品の価値が想定していた金銭的価格と大きく乖離するケースが多いのだ。
これまでベンチャーの経営者には「図式」を完成させるために、まずは問題を「みつける」こと、次に新しいサービスや商品に対してお金を払う財布を持っている「主人」は誰なのか、最後、行き詰まったら「パーツ」を組み替えることを勧めた。AIを駆使する新規企業も、「図式」の作成は決して難しくない。
しかし、IPOとなると難しくなる。AIを使う理由が人間の補助あるいは代替の役割に留まっていてこじんまりとしているからか、それとも競争が激しいからなのか。待て待て、まだ基礎技術の域にいるだけでこれからが本番だ。いや、資本主義の枠組みの中で企業利益という尺度で価値を測るのが間違っているのだ。いろいろな仮説が浮かぶが、答えが見つからない。
冒頭の彼は、「AIやロボットへの置換がさらに進めば、最後人間には遊ぶことしか無くなる。だから自分はゲームを創る」といい、別れ際「最近、シニア向けのゲームを作っています。齊藤さん、ハマりますよ」とにやりとした。
そうか、遊び・ゲーム・シニアの「あいだ」に、彼は対角線を引いたのか。向かう方向は私とはズレてはいるが、狙ったターゲットに対する迫り方は私が強調してきた方法そのものではないか。彼には伝わっていた。そう思うと少し嬉しくなった。
▲YouTube<東証図鑑 上場の鐘編>(日本取引所グループ公式チャンネルより)
株式新規公開を果たすベンチャー企業は、この鐘を鳴らすのが目的だ。その瞬間、東証にいる人間が一斉に拍手する。自身がコンサルティングした会社の上場は、齋藤さんにとっても至福の時だ。
文・写真提供/齊藤肇(43[守]はぐくみ温線教室、43[破]どろんこ天鵞絨教室)
編集/角山祥道、羽根田月香
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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