ハンノキの葉のうえで、総身を白い菌に侵されて命を終えていたキハダケンモンの幼虫。見なかったことにしてしまいたくなるこんな存在も、アングルを変えてレンズを向けてみると、メルヘン世界の住人に様変わりする。
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
「編集の引き出しを増やしたい」とイシス編集学校に入門した染矢真帆さん。フリーランスの編集・ライターである染矢さんは、基本コース[守]、応用コース[破]の受講と並行して、一冊の本を編集していた。
「型」はどう仕事に生かされたのか。染矢さんの編集稽古×仕事のエッセイをお届けします。
■■「サイケデリックス」の可能性
[守]の受講を決めたのは、ある書籍の編集に取り組み始めた時でした。書籍の題材は、「サイケデリックス」。「規制薬物」とか「カウンターカルチャー」と結びついたマイナスイメージから、忌避感を抱いているか、そもそも何を指しているのか見当もつかない、という人が多いかもしれません。かくいうわたしも、つい最近まで、全く未知の領域でした。本を作りたいと思うほど、その世界に魅了されたきっかけは、著者である蛭川立氏(人類学者・明治大学准教授)との出会いをとおして、次の2つを知ったこと。
・サイケデリックスはうつ病をはじめ、不安障害、トラウマ、依存症などの特効薬として欧米を中心に日本でも研究が進んでいる。
・サイケデリックスが安全かつ適切に利用できるようになれば、神秘体験が特定の宗教や教祖によらず日常生活者に開かれ、深い内省と自己受容から利他的な生き方へと変容できる。
「神秘を日常に」を本づくりの密かなテーマにしているわたしにとって、サイケデリックスに強い期待と可能性を感じたのはいうまでもありません。とはいえ、ただサイケデリックスを礼賛する本にはしたくない。まずは多くの人が抱いている偏見を解き、たくさんの人に興味を持ってもらえるような一冊にしたい。そう考えていたタイミングでのイシス入門だったのです。そして、本格的な編集作業を開始した時期に[破]に進んだことで、編集視点がスパーク! 特に「注意のカーソル」、「地と図」、「見立て」、「ミメロギア」は、煮え切った思考から新しい発想を生み出す突破口となりました。
これまでも、本を作る際には、想定する読者(地)に向けて、表現(図)を変えることはやってきましたし、表現方法は、「注意のカーソル」を働かせながら著者「らしさ」や取り上げる題材のもつ「らしさ」を見出すことも無意識のうちに行なっていたのだと思います。それが、自分のなかでひとつの「型」として使えるようになったことで、どこか曖昧だった編集工程の一つひとつが整い、より効率的に思考を働かせられるようになったのは、大きな収穫でした。
かくして、サイケデリックス作用をもたらす物質や植物を精霊に見立てた、哲学絵本『ゾルゲンキンドはかく語りき』が完成! サイケデリックスの不思議な神秘性と、著者が醸し出すシュールさ、そしてそのシュールさを支える深い哲学的な思索と芸術性が立ち上がる、ユニークな一冊になっています。
▲染矢さんが「型」を用いて編集した『ゾルゲンキンドはかく語りき』
「守」から「破」へ。それは、社会に潜む「デーモン」を、サイケデリック(潜在的なものを明らかに)し、新たな「潮流(タイド)」を生み出す、大胆な編集的旅路を支えるセットとセッティングとして機能したのでした。
文・写真/染矢真帆(51[守]カルメンおいで教室、51[破]アスロン・ショーコ教室)
編集/羽根田月香、角山祥道
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
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コメント
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2026-02-10
ハンノキの葉のうえで、総身を白い菌に侵されて命を終えていたキハダケンモンの幼虫。見なかったことにしてしまいたくなるこんな存在も、アングルを変えてレンズを向けてみると、メルヘン世界の住人に様変わりする。
2026-02-05
誰にでも必ず訪れる最期の日。
それが、どのような形で訪れるかはわからないが、一番ありえそうなパターンの一つが終末介護病棟での最期じゃないだろうか。沖田×華先生と言えば、自虐ネタのエッセイマンガでよく知られるが、物語作家としても超一流だった。深く死に向き合いたい方は、是非ご一読を。
(沖田×華『お別れホスピタル』)
2026-02-03
鋸鍬形、犀兜、鰹象虫、乳母玉虫、碁石蜆、姫蛇の目、漣雀、星枯葉、舞妓虎蛾、雛鯱、韋駄天茶立、鶏冠軍配、鶉亀虫。見立ては、得体の知れないものたちを、手近に引き寄せたり、風雅に遊ばせることの糸口にもなる。