松岡正剛とボウイは似ている? 『ele-king』編集長・野田努さんが語る「情報の歴史」

2024/03/08(金)12:02
img GUESTedit

 松岡正剛さんとデイヴィッド・ボウイは似ている。

 と、ワクワクせずにはいられないこの一文から始まるエッセイ(♯4:いまになって『情報の歴史21』を読みながら)が昨日、『ele-king』のウェブサイトにアップされた。

 松岡正剛とボウイの何が似ているのか。どう似ているのか。さらに「情歴」の魅力や可能性を語るプロセスの中で「編集(工学)とは何か」の核心に触れている。
 こんな文章を書ける人は、野田努さん以外、そうはいない。
 とにもかくにも野田さんのエッセイを読んでもらいたいのだが、ボウイ、イーノ、サン・ラー、ワイルド、ヘンドリックス、ディラン、ニーチェバロウズ、リンゼイ・ケンプ、野村克也、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、美空ひばり、マーシャル・マクルーハン、ザ・ビートルズ、スチュワート・ブランド、J.R.R.トールキン、マーク・ボランがぞくぞく登場し、それほど長くはない文章の中におびただしい情報量が圧縮されている。だが、不思議なことにすらすらと読めてしまう。まるで情報の歴史の魔法のように。まるで松岡正剛スタイルのように。

 

 野田さんは36、7年前の情歴プロジェクトの立ち上げメンバーの一人でもあった(野田さんの担当は「縄文」だった!!!!!! 奇しくも「縄文」をテーマに語られた前回の情報の歴史を読むイベント安藤礼二篇を野田さんにもぜひご覧いただきたい!!!!!!)。エッセイでは、インターネットのまだ普及していない当時の制作風景が臨場感をもって語られ、「たしかにこれは編集力で作る本だった」と振り返っている。では、編集力とは何だろうか。天才のボランとボウイの編集を比べながら、野田さんは「「編集」は、天才でも作家でもないひとにとっては有益なメソッドになりうるだろう」と予見している。


 エッセイの締めくくりには『情歴21』に、こんなエールも寄せてくれた。

誰もが思い描くディストピア物語ではない、前向きな未来への筋書きをここからどう描いていけるのか、そのヒントも『情報の歴史21』にはあるはず、と生涯一編集者の背中を見ながら20代を過ごしたぼくは思うのである。

 もし、松岡正剛は知っているが、『ele-king』を知らないという人がいたら、『ele-king』とは「千夜千冊」ならぬ”千夜千曲”だと思ってくれればいい思う。『ele-king』では、ほぼ毎日のように格別なミュージックレヴューがアップされている。とはいえ、千夜千冊とは違って、野田さんが一人で書いているわけではなく、他に複数のライターさんがいて、充実のインタビュー記事やライブレポートも発信している。

 じつは『情歴21』編集部にとっても『ele-king』は超絶必の貴重な情報収集源だ(野田さんと『ele-king』のエディターやライターの皆さんには、情歴編集部一員として、この場を借りて御礼を申し上げます!!!!!)。

 

<野田努さんプロフィール>

野田 努/Tsutomu Noda
1963年、静岡市生まれ。1995年に『ele-king』を創刊。2004年~2009年までは『remix』誌編集長。2009年の秋にweb magazineとして『ele-king』復刊。著書に『ブラック・マシン・ミュージック』『ジャンク・ファンク・パンク』『ロッカーズ・ノー・クラッカーズ』『もしもパンクがなかったら』、石野卓球との共著に『テクノボン』、三田格との共著に『TECHNO defintive 1963-2013』、編著に『クラブ・ミュージックの文化誌』、『NO! WAR』など。現在、web ele-kingとele-king booksを拠点に、多数の書籍の制作・編集をしている。

 

Info 01


⊕ ele-king ⊕
∈ Editor-in-Chief:野田努
∈ Editor:小林拓音
∈ Producer:水谷聡男
∈ URL:https://www.ele-king.net
∈ Recent publication:
 『ele-king vol.32 特集:2010年代という終わりとはじまり』

 

 

 

 

 

Info 02


情報の歴史を読む

ゲスト:片山杜秀

日時:2024319日(火) 19:3022:00

参加費:リアル参加4,000円(税込4,400円)

     オンライン3,000円(税込3,300円)

会場

 リアル参加:本楼(世田谷区豪徳寺)

 オンライン参加:お申し込みの方にZOOMアクセスをお送りします。

  ※リアル参加もしくはオンライン参加のどちらかを選択いただけます。

定員:リアル参加につきましては先着20名となります。

参加資格:どなたでもご参加いただけます。

参加特典:お申込者限定のアーカイブ動画あり(視聴期間:1カ月程度)

申込締切日:2024318() 1200まで

お問い合わせ:front_es@eel.co.jp

 *『情報の歴史21』(書籍orPDF)をお持ちの方はご持参ください。

 ▶︎▶︎▶︎参加お申し込みはこちらから◀︎◀︎◀︎

「『情報の歴史21』を読む」第11弾「片山杜秀編」3月19日(火)開催。音楽を聴けば、歴史が見える!

 

  • 金 宗 代 QUIM JONG DAE

    編集的先達:宮崎滔天
    最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
    photo: yukari goto

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。