発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

「どこにもない学校」の20年を振り返る「多読ほんほんリレー」も、ついに2019年までバトンが渡ってきました。2020年9月のいま、多読ジム【書院】というトラックに佇むみなさまの背中をめがけて、ひと巡りの季節を走ります。
2019年。総括するにはいささか近すぎるような、それでいて、もはや遠くのこととも思える、コロナ前の世界がそこにありました。
春の出来事として記憶に鮮やかなのは、やはり新元号「令和」の発表と天皇陛下の皇位継承でしょうか。松岡校長は『万葉集の詩性 令和時代の心を読む』に、転(うたた)して継承されていく歌(うた)についての文章をよせられています。また、5月に創刊された言論誌『ひらく』の第一号巻頭対談「日本文化の根源へ」も見逃せません。
夏、海外に目を向けると、香港での大規模デモ、トランプ大統領の北朝鮮訪問、ブレグジット強硬派のジョンソン首相の就任、米中貿易摩擦など、影響の大きさを測りかねる、さまざまな政治経済のうねりがありました。国内では「来年の今頃」に控えた東京五輪・パラリンピックについて、覆りようのない予定としての想像を、誰もが持っていたことと思います。
秋には台風15号・19号をはじめとする天災が続きます。国連気候行動サミットでのグレタ・トゥンベリさんの訴えも話題を呼びました。より生活に密着した事件といえば、消費税の増税。景気の冷え込みが心配されていましたが、まさかコロナ・パンデミックで追い打ちがかかるなどとは、誰も予想していませんでした。
そして冬。多読ジム season 01の募集が始まったのがこの頃です。本楼の高い位置に掲げられた【工冊會】の書、「工」が「互」とも見えた楽しげな文字の形を、印象深く覚えています。私個人としては、自分の入門期(37守, 2016年)の感門校長校話「伝承と継承」のデータをお預かりして、わずかばかり編集を加え、遊刊エディストに公開できたことが大切な思い出となりました。
さて、この2019年を語るにふさわしい一冊は何か。
同年に刊行・翻訳された本の中では、國分功一郎・互盛央『いつもそばには本があった。』、モリー・バング『絵には何が描かれているのか』の二冊がまず候補に挙がりました。それぞれ『本から本へ』『デザイン知』とも重ねてみたい。1694夜『トポフィリア』から1729夜『牡猫ムルの人生観』に至る36冊もめくるめく陣容です。
悩んだ末に、大好きな1715夜『リヒテンベルクの雑記帳』から連想の糸をたぐり、こちらの一冊を本棚から引き出しました。刊行は、2019年10月21日。
世に放たれた弱い文脈は知らず識らずのうちにリレーされる。(…)それは微かなノイズだったのかもしれない。しかしそのノイズにこそ望みをかけたいのだ。その端緒にこそなにかが潜んでいる。
加藤めぐみ
編集的先達:山本貴光。品詞を擬人化した物語でAT大賞、予想通りにぶっちぎり典離。編纂と編集、データとカプタ、ロジカルとアナロジーを自在に綾なすリテラル・アーチスト。イシスが次の世に贈る「21世紀の女」、それがカトメグだ。
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巷では、ChatGPTが話題である。 ChatGPTは、人工知能研究所のOpenAIが2022年11月に公開したチャットボットで、インターネット上のデータを学習し、幅広い分野の質問に対して回答 […]
其処彼処に「間」が立ち現れる AIDA Season3 第4講
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聖なる顕現は必ず「しるし」をもっていた AIDA Season3 第3講後半
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むべ山風、台風と革命が渦巻く AIDA Season3 第3講前半
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コメント
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2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。