遊刊エディスト:松岡正剛、編集工学、イシス編集学校に関するニューメディア https://edist.ne.jp Mon, 01 Sep 2025 12:05:22 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.8.2 https://edist.ne.jp/wp-content/uploads/2019/09/cropped-icon-512x512-32x32.png 遊刊エディスト:松岡正剛、編集工学、イシス編集学校に関するニューメディア https://edist.ne.jp 32 32 玄月音夜會 第四夜 ― 静けさにひびく数寄の余韻 https://edist.ne.jp/just/onyakai04/ https://edist.ne.jp/just/onyakai04/#respond Mon, 01 Sep 2025 09:15:47 +0000 https://edist.ne.jp/?p=88563 ひとつの音が、夜の深みに沈んでいく。 その余韻を追いかけるように、もうひとつの声が寄り添う。   松岡正剛が愛した「数寄三昧」を偲び、縁ある音楽家を招いてひらく「玄月音夜會」。 第四夜の客人は、邦楽家・西松布咏さんです。 […]

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ひとつの音が、夜の深みに沈んでいく。
その余韻を追いかけるように、もうひとつの声が寄り添う。

 

松岡正剛が愛した「数寄三昧」を偲び、縁ある音楽家を招いてひらく「玄月音夜會」。
第四夜の客人は、邦楽家・西松布咏さんです。

 

25年をこえる交流の中で、松岡と布咏さんは端唄や歌沢を共に味わい、ときに曲を共作するほどに響き合ってきました。
この夜に響くのは、松岡が好んだ旋律の数々、そして布咏さんの感性から生まれた新しい邦楽。
物語のように編まれた曲順に導かれながら、しずかな光に照らされる松岡の面影が浮かび上がります。


◇ 開催概要

第四夜 9月10日(水)19:30開演(18:30開場)
ゲスト:西松布咏(邦楽家)

会場:ブックサロンスペース本楼(編集工学研究所1F)
東京都世田谷区赤堤2-15-3(小田急線「豪徳寺駅」徒歩6分)


◇ 参加方法

  • 本楼ライブ参加 16,000円(税別・飲食付)/限定30名(残席僅か)
     まほろ堂蒼月による季節の和菓子白百合醸造のワインと軽食をご用意。演奏を終えた布咏さんを囲み、余韻を分かち合うひとときもございます。

  • 配信視聴参加 4,000円(税別)


  • *いずれの参加形態でも、期間限定でアーカイブ動画をご覧いただけます。


◇ お申込み

▶ お申し込みはこちら


 

玄月の静けさに、声と三味線のひとしずくが落ちてゆく。
その波紋に触れるようにして、数寄の心が、今ふたたび息づきます。

このひとときを、どうぞご一緒ください。

 

◇ ゲストプロフィール

西松布咏 /邦楽家・西松流家元「美紗の会」「己紗の聲」主宰

6歳より長唄、三味線の手ほどきをうけ小唄・富本節・端唄・俗曲・新内・作詞作曲を修行。1981年、西松文一師に見出され地唄の修行を始める。90年に布咏の名で西松流を継承。地唄舞の地方として舞台で活躍する傍ら異ジャンルの音楽や詩、美術との融合に臨み新たなる可能性を探る「二ュアンスの会」を国内外で展開してきた。現在は東京・白金台を拠点に後進の育成に努めながら江戸中期の古曲から自作の現代曲まで「三味線と聲」に関わる演奏活動をしている。松岡正剛は西松氏の富本・地唄に心酔し、私的なサロンなどで交流と共演を重ね、邦楽に関心を寄せた知人達を西松氏のもとで稽古するよう勧めてきた。松岡作詞・西松氏作曲による「織部好み」がある。

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54[破]第2回アリスとテレス賞大賞作品発表!テレス大賞 帆良邦子さん https://edist.ne.jp/post/54ha_atteles/ https://edist.ne.jp/post/54ha_atteles/#respond Mon, 01 Sep 2025 03:00:39 +0000 https://edist.ne.jp/?p=88569 物語編集術は[破]の稽古の華である。課題映画を読み解き、翻案の工夫で別様の物語として紡ぐ。   今日紹介する物語テレス大賞は帆良邦子さん(サルサかかりっきり教室)。大航海時代のオランダを、緻密な時代考証で人々の […]

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物語編集術は[破]の稽古の華である。課題映画を読み解き、翻案の工夫で別様の物語として紡ぐ。

 

今日紹介する物語テレス大賞は帆良邦子さん(サルサかかりっきり教室)。大航海時代のオランダを、緻密な時代考証で人々の息遣いが感じられるほど見事に描いた作品だ。

クレヨンしんちゃんは、17世紀のアムステルダムというトポスで少年ヤンとして生まれ変わった。

海風を感じながら、あなたはヤンとともに出航する!

 


 54[破]≪アリスとテレス賞≫「物語編集術」


【テレス賞:大賞】

 

■帆良邦子(サルサかかりっきり教室)

『葡萄の木』            

原作:クレヨンしんちゃん

酸っぱい葡萄

 船尾の大きな白い象が朝日でいっそう眩しい。「明日、出航だ。寂しくなる。決めたの?」やらなければ、来年は徒弟に出される。でも言葉にできなかった。二つ上のクーンは船大工の息子で、この四ヶ月、父親について東インド航海船<白象>の整備を手伝っていた。クーンは気づかうように言った「無理するな」。旧教会の鐘が半時を打つ。「帰らないと」ぼくは、縄職人の所で撚り糸を受け取り、父の待つ工房に急いだ。「遅かったじゃないか、また道草か」父は息の詰まるような薄暗い工房でぼくを嗜めた。「ご飯よー!」母の声に救われ、食卓へ。タールの染み込んだ手を組み、父が祈る。ぼくはスープを食べ、パンはそっとポケットに隠した。「父さん、本を買ってくれるんでしょう?」「ああ、そうだったな」

 本屋に入るや否や『ボントク船長航海記』を手に取った。「そんな本、なんの役にも立たん」と父は『イソップ寓話集』を手渡した。口答えする勇気などなかった。

 寝つけない。『イソップ』をめくってみた。いつの間にか夢中になった。きつねがやって来る。何かくわえている。「え、葡萄?酸ぱいからいらないって…」「鶴に頭下げて背中借りて枝に飛びついてな、噛み切ってやったのさ」「案の定、酸っぱいけど、挑戦ってのは諦めの負け惜しみより尊いもんだなぁ」夢か…。よし、ぼくは目を擦り、石盤と蝋石、水筒とコップ、それに乾かしたパンを麻のズタ袋に詰め込んだ。そして夜明けとともに波止場に急いだ。

 

ド―ドの背中を借りて

 甲板の往来は激しい。今だ!ぼくは恐怖で震える膝をごまかしながらクーンの指示通りに進んだ。荷室に入ると樽の後ろの帆布や縄を掻き分け、そこに倒れ込んだ。ギシギシと船が軋む音で我に返った。出航だ。安心の涙が溢れた。翌朝、荷室に陽が射し込むと石盤にIの字を書いた。7つ揃えば一週間、バタヴィアまでは170くらいか、気が遠くなる。10日目、喉の渇きに耐えかね水樽に手を掛けた。コップに水をなみなみと注ぎ、一気に飲み干した。だが蛇口がしっかり閉まらない。ポトポト音を立てて滴る水に狼狽した。まずい誰か来る。ぼくは立ち竦んだ。炊事番の少年だ「ずっとここにいたの?――ちょっと待ってて」と、豆粉の粥を持って戻ってきた。優しさにふと母を思った。「ありがとう。ぼくはヤン、君は?」「ドド」水夫だった父親がつけた愛称だという。なるほど大柄で、おっとりしてる。ドドはクーンと同じ12歳、でも孤児だった。ある夜、ドドはぼくを大きな小麦袋に詰めると、厨房まで担いで静かに置いた。そして「君は今日から小麦だよ」と笑った。満天の星の下、ぼくらはねずみのように声を殺して寄り添った。それは白象を見ながらクーンとヒソヒソ密航の計画を練って過ごした時間に似ていた。Iの字がいつの間にか90を超えたあの日、横波が船を襲った。厨房の木炭が甲板に飛び、炎が上がった。ドドは逃げずに炎に対した。だめだ、ちがう!ぼくはマストに飛びつき夢中で警鐘を鳴らし、大声で叫んだ「火事だ!」巣からアリが出てくるように水夫が次々と甲板に現れた。甲板長の号令でバケツリレーが始まると炎はすぐに収まったが、火傷を負ったドドは力なく甲板に横たわっていた。「ドッ、ドド――!」ぼくの叫びを甲板長の怒鳴り声が掻き消した――「密航者だ、捕えろ!」

 

海の掟

 マストに縛りつけられ、目を瞑ってクーンの言ってた鞭打ちを待った。歯を食い縛るが、甲板は静まり返り、コツン、コツンと靴音だけが響いた。「おまえの勇気が大事を防いだ。着いて来い」提督室に入ると、大きな海図に見入った。「名前?」「ヤン」「年?」「11歳」「父親は?」「新市場区の靴職人ハンス・ダース」「なぜ密航を?」「船乗りになりたいんです」「よかろう。密航者は次の寄港地で降ろすのが決まりだ」提督の言葉は、概ねクーンから聞いてた通りだったから、驚きもしなかった。

 「提督、炊事番を葬ります。お出でください!」

「う、うそだーー!ドド―――!」提督の低い声が響いた。「泣くな。船に乗るとは、こういうことだ。送ってやれ」

 鞭打ちを逃れたぼくに課されたのは水夫の手伝い、これもクーンの想定内だった。圧倒的な権力を振りかざす甲板長に水夫は脅え、保身のために平気で仲間を裏切った。厨房から物を掠めようものなら、容赦なく鞭で打たれた。

 

ドードーの住む島

 船団はモーリシャス南東の港に錨を下ろした。陸に上がれば甲板長などただの人。肉に飢えた水夫はここぞとばかりに棍棒でドードーを殴り、敵を知らぬ鳥は抵抗せずに息絶えた。身を守らず火傷を負って蹲っていたドドの姿が重なり、ぼくは泣いた。会社が西アフリカから連れて来た奴隷は休む間なく森林伐採に駆り出され、ドードーの住処を奪っていた。簡素な要塞には30人程が常駐し、酒を煽っては、船の寄港を今か今かと待っていた。罪の意識に襲われた。正義って、いったい誰が決めるんだろう。材木と食料と水が積み込まれ、白象の出航準備が整うと、提督が言った。「水夫として登録した。行く先は自分で決めろ」ありったけの勇気をぶつけた。「ドードーを守らないのですか?」提督は一瞬、顔を強張らせたが、言った。「我々商人が守るのは利益だけだ、覚えとけ」ぼくは渾身の力を込めて提督を睨み返すと、言ってやった。「ぼく、職人の息子です。必ず帰ると父に知らせてください」提督は頷くと、去った。力を使い果たし、その場に倒れ込んだ。どこからか、きつねの声が聞こえた。「よくやったぜ。飛びつかない方がいい時もある。葡萄なんてさ、熟せば、落ちる。生きて帰るんだな」今、何ができるか。ぼくは石盤と蝋石を取り出すと、ドードーの姿を忠実に残そうと懸命に写生した。絶対に忘れないと。

 

葡萄の蔓 

 5ヶ月が過ぎ、菜園の作業にも慣れた。熱帯では野菜を育てるのむずかしい。それでも毎日、芥子菜、キャベツ、サツマイモを採った。真っ黒い手は父の手に似て、なぜか嬉しかった。その時、要塞の鐘が高らかに鳴った。急いで要塞に戻り、双眼鏡を手にする。まちがいない、オランダ船団だ!新米水夫のぼくはハーレム号に乗船し、帰路に着いた。喜望峰を過ぎ北上中、南東風に煽られ、ハーレムは座礁した。乗員と積荷を他の二隻に振り分けるが、すべてを積みきるわけがない。バラックを建て、積荷とその見張りに60人もの仲間を残し、二隻船団は再び出航した。航海なんて聞こえはいいけど、ただの荷運びだ。8月末、16ヶ月ぶりにアムステルダムの波止場に戻ったぼくは12歳になっていた。父の姿が見えた。胸に飛び込んだ。タールの匂いが懐かしかった。父は同僚親方に言った。「三年で葡萄を実らせて、私に返してくれ」

そして、ぼくには「母さんが待ってる。クリスマスには帰れ」と言って、足早に去って行った。父らしかった。背後に穏やかな視線を感じ、振り返った。クーンが駆け寄ってぼくを抱きしめた。「父さんのように、根を張って、蔓を伸ばし、葡萄を実らせる木になるよ」と、ドードーを描いた石盤を託した。クーンはそれを見つめ、嬉しそう言った。「この町で一緒に親方を目指そうな!」

 

◆講評◆

 しんちゃんを少年に、イーサンをスパイに、寅さんをはぐれ者に翻案するとどうしても焼き直しに陥りやすいのですが、本作は、徹底した時代考証をテレスの帆として、見事まったく異なる世界に帰航しました。17世紀オランダ。大航海時代全盛期のアムステルダム。一切の緩みを見せずディテールを緻密に描き切り、撚り糸の手触りやタールの匂いから、熱帯の潮風、職人の子の価値観まで、細部の彫琢によって時代の空気感を立ち上げた手際は圧巻でした。

 物語の転機となったのは、モーリシャス島の固有種ドードー。欧州人に乱獲され絶滅したドードー鳥の悲劇は、その先触れとして散った心優しい炊事番の少年ドドの最期とも重なり、主人公に気づきを与えます。父と息子をつないだイソップ寓話のメタファーもきいていました。

 マタ・タミが序盤で死んでしまうことや、プリリンが誘惑者というよりある種の導き手になっていること、嫌々ながら召喚される英雄という原作モデルを外れていること、しんちゃんにしては立派に成長しすぎたことなど、クレヨンしんちゃんらしい翻案かと言われれば気になる点はあるものの、そんなことが吹き飛ぶほどの豊潤なテレスの滋味に敬意を表します。帆良さん、見事な稽古ぶり、書きぶり、描きぶりでした。テレス大賞、おめでとうございます。

講評=評匠:福田容子

 

 

54[破]第2回アリスとテレス賞大賞作品発表!

アリストテレス大賞 高橋杏奈さん
アリス大賞 中山香里さん
テレス大賞 帆良邦子さん

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【田中優子の学長通信】No.10 指南を終えて https://edist.ne.jp/mast/gakucho10/ https://edist.ne.jp/mast/gakucho10/#respond Sun, 31 Aug 2025 23:00:47 +0000 https://edist.ne.jp/?p=88450  [守][破][離][花伝所]を終え、その間に[風韻講座]や[多読ジム]や[物語講座]を経験しながら、この春夏はついに、師範代になりました。    指南とは何か、指導や教育や添削とどこが違うかは、[花伝所]で身 […]

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 [守][破][離][花伝所]を終え、その間に[風韻講座]や[多読ジム]や[物語講座]を経験しながら、この春夏はついに、師範代になりました。

 

 指南とは何か、指導や教育や添削とどこが違うかは、[花伝所]で身に染みましたが、指南をする中で一層、その違いを感じました。

 

 気がついたのは、学衆がそれぞれ「異なる人間である」ということです。当たり前なのですが、学校教育ではそれぞれ違うという前提がありながら、極端に言うと「できるだけ同じような人に育て上げる」ことを目標にします。社会に出てから困らないように、ということなのです。そこで「問題」は「正解」と組み合わせ、その正解に辿り着くように導きます。読書は、その内容の要約ができるようにする。文章は主語をはっきりさせながら、誰にでもわかりやすく論理的に書けるようにする。そうすると、読書も文章も、そのテーマの範囲をできるだけ出ないように集中する習慣が出来上がります。つまらなくとも、脱線してはならないし、他の本に目移りしてはならないのです。もちろん、問題に回答する前に他の人の回答を見るなど、とんでもありません。それは「カンニング」つまり「ずるをすること」とされます。

 

 しかしイシス編集学校では、回答の前でも後でも、他の学衆の回答をどんどん見てください、と勧めます。それは、正確が無いからです。しかし不思議なことに、絶対に同じ回答になりません。学衆は他の回答を参考にしながらも「違う回答にしよう」と思っているとは思います。でも、そう思わなくても、同じことは書けないものなのです。しかも、どういう回答が面白いか、その感じ方もさまざまでした。

 

 人は個々、別々の身体を持っています。身体は感覚器官の集まりです。そうすると、インプットの段階でまず感じ方が違う。感じ方が違うので、応じ方が異なる。そして文章になると身体のリズムや、記憶にある語彙が異なるので、書き方が違ってきます。その結果、アウトプットも異なるのです。

 

 論文などでは剽窃が問題になることがあります。それは、事実関係や調査・実験結果など、自分が調べてもいないのに、自分で調査したり実験したことにして発表することです。しかしその場合でも、文章は同じにはなりません。従って、引用元を明らかにした上での「引用」は、良いことになっています。イシス編集学校では、引用はもちろん、松岡校長が使っている言葉や、千夜千冊の一節等々、どんどん使うことを勧めています。本はよそ見しながら複数の本を同時に読むことも、勧めています。閉じこもらない。開いていく。繋がっていく。いくらそれをしたとしても、あなたは、あなただからです。そのあなたを、広く豊かにして欲しいからです。

 

 [守]を卒門したら、ぜひ[破]に進んで欲しい。[破]を突破したらぜひ、 [花伝所] に進んで欲しい。なぜなら、見える景色が違うからです。借りものの範囲が広がり、読むことと書くことが面白くなるからです。

 

 皆さん、次の扉を開けて、他の世界に入ってみてください!!

 

イシス編集学校

学長 田中優子

 

 

田中優子の学長通信

 No.10 指南を終えて(2025/09/01)

 No.09 松岡正剛校長の一周忌に寄せて(2025/08/12)

 No.08 稽古とは(2025/08/01)

 No.07 問→感→応→答→返・その2(2025/07/01)

 No.06 問→感→応→答→返・その1(2025/06/01)

 No.05 「編集」をもっと外へ(2025/05/01)

 No.04 相互編集の必要性(2025/04/01)

 No.03 イシス編集学校の活気(2025/03/01)

 No.02 花伝敢談儀と新たな出発(2025/02/01)

 No.01 新年のご挨拶(2025/01/01)

 

アイキャッチデザイン:穂積晴明

写真:後藤由加里

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54[破]第2回アリスとテレス賞大賞作品発表!アリス大賞 中山香里さん https://edist.ne.jp/post/54ha_atalice/ https://edist.ne.jp/post/54ha_atalice/#respond Sun, 31 Aug 2025 10:00:05 +0000 https://edist.ne.jp/?p=88567 物語編集術は[破]の稽古の華である。課題映画を読み解き、翻案の工夫で別様の物語として紡ぐ。今日紹介する物語アリス大賞は中山香里さん(うごめきDD教室)。   日本と韓国のクラブシーンを描き、音楽数奇の岡村評匠を […]

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物語編集術は[破]の稽古の華である。課題映画を読み解き、翻案の工夫で別様の物語として紡ぐ。今日紹介する物語アリス大賞は中山香里さん(うごめきDD教室)。

 

日本と韓国のクラブシーンを描き、音楽数奇の岡村評匠をして「群を抜いてリアルな質感、空気感を持つ」と唸らせた作品だ。葛飾柴又から梨泰院のクラブに場所を移し、ビートメイカーのタイガとラッパーのユリとして出会うところから物語は動き出す。

ビートの躍動を身体で感じよう。

 


54[破]≪アリスとテレス賞≫「物語編集術」


【アリス賞:大賞】

 

■中山香里(うごめきDD教室)

『フッドの向こう』            

原作:男はつらいよ

クマとタイガ

 8月の東京は狂ったように暑い。三茶の自宅から太子堂の商店街をだらだらと歩き、池尻に向かう。日は落ちてきたが、徒歩15分の道のりが寝不足の身体に堪える。クマの会社にラッパーのグッズ発注が入り、今日は奢ってくれるらしい。「最近どうよ?」「昨日サンクラにビート上げたけど、まずまず」と、卓上のベタついた調味料を並べ直しながら答える。「まだヘッズに届いてないんじゃね?」クマがニヤリとしてこちらを覗き込むので、わざと鬱陶しい顔でため息をついてみせる。テーブルの上のスマホが鳴る。後輩のヒロシからLINEだ。来月韓国のイベントで回すらしい。俺はあまり乗り気ではないが、クマはもう予定もブロックして、行く気満々。お待ちどうさまー、と店のおばちゃんがグツグツ音を立てるカムジャタンを運んでくる。ニンニクとエゴマの香りがたまらない。

 「じゃあ韓国は決まりな、あっちの銭湯寄ろう」。店を出るクマの足取りは軽い。歩きながら煙草に火を付ける。湿度の高い夜の空気が、吐いた煙にじっとりと絡みついてくる。

 

白虎と白百合

 梨泰院のクラブの入口で20,000ウォンを払い、地下フロアに降りると、DJブースの脇でヒロシが待っている。妹の美桜が来ないと知り、わかりやすく残念そうな顔をした。笑える。バーカンでKellyの小瓶を買い、照明で赤く染まったフロアを眺める。ミラーボールに反射する大小の光の隙間から、人々の表情が見え隠れする。

 狭い階段を上がり、入口付近でたむろしている若者たちを避けて煙草に火を付けた。「日本から来た?」後ろから声がして振り返ると、長い黒髪の女性がいる。驚いて小さく頷く。涼しげな瞳の奥に、憂いのようなものを感じた。日本語が少しだけわかるらしい。煙草を一本取り出し、吸う?とジェスチャーをしてみる。カムサハムニダ、と白く細い指で煙草を受け取る。彼女が煙を吐き出す。「私はユリ、あなたは?」タイガ、シライタイガ、と伝えると、ユリは「白いtiger?Coolだね」と笑う。「私はペク・ユリで、ペクは白の意味、同じだね」。首筋のタトゥーが白百合の花だと気付く。仕事を聞かれたので、ちょっと濁しながらビートを作っていることを伝えた。我ながらカッコ悪い返事だと思った。

 道の向こう側からユリを呼ぶ声が聞こえる。今度tigerのビートを送ってよ、と言いながら、ユリは手を振って横断歩道を駆けていった。クマに話すと、ユリが前にSMTMに出場したラッパーだと教えてくれた。クマは韓国のアングラシーンにも精通している。俺にヒップホップを教えてくれたのもクマだ。ラッパーが厳しい境遇を乗り越えて成功する姿に、自分を重ね合わせているらしい。それはいつの間にか 人並みな俺にとっても生きる指針になっていた。煙草の火を踏み消し、遠ざかるユリの姿を見送った。

 

リスナーとプレイヤー

 美桜が遅れて居酒屋の席についた。先輩の常子さんも一緒だ。頼まれていた韓国コスメを手渡す。酒が入った二人は、推しのトレカのためにCDを何枚積むかを熱心に相談している。肝心の曲にはさほど興味がないらしい。適当に相槌を打ちながら、飲み終えたウーロンハイの水滴を拭った。二人を見送り、イヤホンをして246沿いを三宿方向に歩く。あれからK-HIPHOPのプレイリストも聴くようになった。たまにYuriの曲も流れてくるが、リリックから彼女の日常を覗き見しているようで、なんだかむず痒い。

 「SOOP」のネオンが光る重たいドアを押すと、マスターの森さんがレコードに針を落とすところだった。韓国に行っていたことを伝えて酒を頼む。ヒロシの活躍を聞いて、森さんも嬉しそうだった。曲間を滑る針がチリチリと音を立て、数秒だけ店内が静まる。「ねえ、Yuriの新譜聴いた?」奥に座る男女の会話が耳に入る。聴いたよ、俺は前の方が好きかなー、わかる、最近変わり映えしないっていうかさ、と批評が続いた。グラスに残ったジントニックをゴクリと飲み込む。曲を作る立場になってから、プレイヤーの苦悩が手に取るようにわかる。それなのに、俺は土俵にすら上がれていない。森さんまたです、と小さく告げ、代金を置いて足早に席を立つ。 「これウォン札じゃんー 」と呆れた森さんの声が聞こえた。

 

狭小と無限

 起動した大きなモニターの灯りが、煌々と自分の顔を照らし出す。熱いよもぎ茶を一口飲み、Ableton Liveを開く。黒い背景の上にドラムループを敷いてから、ベースのクリップを追加。小さな音の欠片を左右にドラッグし、細かくタイミングを調整する。MPCの鍵盤を叩いてメロディーラインを模索しながら、静かに目を閉じた。

 六畳の部屋が透明の立方体に切り取られ、だだっ広い暗闇に放たれた。遠くにうっすらと聴こえる音を手繰り寄せる。くぐもった音が梨泰院のクラブのフロアを思い出させた。気付くと吸いかけの煙草はすっかり燃え尽きていた。ビートを再生すると、ユリの乾いた声と流れるようなフロウが脳裏に浮かぶ。

 instagramでYuriのプロフィールを開き、曲のURLを貼って送信ボタンを押す。すぐに既読が付く。「tiger?」YESのスタンプを送る。トーク画面に「入力中」の表示。「今はちょっと元気がなくて、少し時間がかかる」「でもカッコいいビート、challengeしてみるよ」。ほっとして椅子にもたれかかる。思えば、誰かのことを考えて曲を作ったのは初めてかもしれない。

 

有形と無形

 Yuriが表紙を飾るHIPHOP専門誌を手に取る。黒い背景と黒い花に囲まれ、首筋に入った白百合のタトゥーが映えている。

 

 ー最新曲「white」はどのようにして作りましたか?

Yuri:前作はトラップに強めのリリックを乗せるスタイルだったのですが、リスナーの反応を見てかなり落ちていました。そんな時にいつもと違うビートに出会って。必死にリリックを書き上げて録音しました。

 ―日本の新進気鋭のビートメイカーTIGRのメロウなトラックを採用しましたね。

Yuri:はい。彼のシンプルなビートを聴いて、私ももっと自然体でいいんじゃないかって思って。けど、いつも自分の気持ちを確認しないと、まだ不安に押しつぶされそうになります。

 

 ユリが秋にリリースした曲が評価され、俺のビートも注目されるようになった。ユリとは楽曲制作が終わってから連絡を取っていない。あの曲を最後に、自らこの世を去ったからだ。完璧主義で自分にプレッシャーをかけすぎていたと、後に彼女の事務所から聞かされた。味わう隙もないくらい、出会いも別れも呆気なかった。

 韓国の音楽事務所から依頼があったと美桜に伝えると、驚きのあまり硬直していた。推しが所属しているらしい。まだわかんないけどなーと、ついすかして言ったが、トレカじゃなくて曲を聴いてくれるなら引き受けるべきか。三人でいつものカムジャタンを平らげて店を出る。「寒いし銭湯寄るかあ」。クマが肩をすくめながら歩き出す。「韓国行ってよかったよなー」「まあね」「冷たっ」「感謝してるよ、やっと人間になれそうだわ」「人間?それは大げさだろ」と、クマが笑い出す。銭湯に入り、クマが素っ裸で大浴場に向

かう。鏡に映る自分の腕には、白い虎のタトゥーが光っている。

 

◆講評◆

 サンクラ:SoundCloud / SMTM:SHOW ME THE MONEY / Ableton Live ……

 HIPHOPの楽曲製作や韓国の流行に詳しくなければ目にすることのない用語が無造作に放り込まれ、時として略されます。また、冒頭では三茶~太子堂~池尻という街並み、その距離感や入った店の雰囲気、べたついた調味料やカムジャタンの香りが描かれます。今回の53本の中では群を抜いてリアルな質感、空気感を持った、その物語世界の中で生きて呼吸しているような作品でした。

 ワールドモデルを設定するというとき、何百年か先の未来や過去がどうなっているかを考える方が難しいと思う人がいるかもしれません。また、現実よりも架空の世界の方が決めごとが多いと思う人もいるかもしれません。しかし、実際にはどのようなワールドモデルであれ、整合性をもってイキイキとした世界観を作るというのはおしなべて労力のかかるものです。

 中山さんの作品も好きなもの、よく知るものをただ並べただけではなく、その場面を象徴するものが選び抜かれていました。そこから生まれた、メロウなHIPHOPを聴くかのような文章の流れにも心地よいものがありました。

 寅さん:タイガとリリー:ユリの人生がほんのひととき交差して、それぞれのその後に決して小さくはない影響を及ぼす。その切ない出会いと別れ。『男はつらいよ』に準じたストーリー展開も見事でした。

講評=評匠:岡村豊彦

 

 

54[破]第2回アリスとテレス賞大賞作品発表!

アリストテレス大賞 高橋杏奈さん
アリス大賞 中山香里さん
テレス大賞 Coming soon

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【群島ククムイ】霧の中からの生成ーーー今福龍太船長との台湾旅(2) https://edist.ne.jp/post/kukumuitaiwan02/ https://edist.ne.jp/post/kukumuitaiwan02/#respond Sun, 31 Aug 2025 06:00:09 +0000 https://edist.ne.jp/?p=88241  生成とは、たんに一つの存在が別の存在を因果論的に生み出すことではまったくない。それは操作的な情報になることを拒否するような、不定形の共鳴体・共振体のことである。     今福龍太船長の『霧のコミューン』を共読したとき、 […]

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 生成とは、たんに一つの存在が別の存在を因果論的に生み出すことではまったくない。それは操作的な情報になることを拒否するような、不定形の共鳴体・共振体のことである。 

 

 今福龍太船長の『霧のコミューン』を共読したとき、群島ククムイのメンバーの多くが取りあげた一節だ。船長の言葉に背中を押されるように、台湾旅が形を帯びていった。

 

 

~『群島認識地図』モドキ・小島伸吾さん~

 船長の方法を借りて旅の感謝と発見とをあらわしたのが小島さんだ。

今福船長&明子さんへの感謝の気持ちをこめて、『群島 世界論』の冒頭にある「群島認識地図」を擬いてつくってみました。いま振り返ってみると夢のような時間でした。

 

 

 

~タブたびの記録・山本昭子さん~
 植物への造詣が深い山本さんは、旅の最中も、植物を通して台湾を見続けた。旅に先んじて取り組んだ船長からの「タブ」のお題が水先案内人となってくれた。

タブ本が台湾へと誘ってくれました。タブのお題に感謝です。

 

 

タブ本=

 『タブノキ ものと人間の文化史』山形健介/法政大学出版局
   タブノキを追うと見えてくる、黒潮でつながる台湾と日本。
   さらに南のフィリピンやインドネシアの島々にも続くはず…
   タブ文化とモンスーン文化は重なっているのかも。
 『サピエンス日本上陸 3万年前の大航海』海部陽介/講談社

   行ってみようか、行ける、行くぞ! 
   3万年前台湾から与那国へ
渡ったのは、やらなくてもいいこと
   を懸命にやる、
普通の男女だった…台湾と人々を近しく感じます。



~たびの栞・木藤良沢さん~
 旅の間中、大きなカメラを携えて、静かに撮影をし続けたのが木藤さんだ。

このたびは、ありがとうございました。たびを繰り返すように『霧のコミューン』を読んで、栞をつくりました。栞でまたたびにでます。

 

 

 

 

 

~ラジオ番組「台湾の病院、突撃レポート!」・山口イズミさん~
 医療関係のお仕事に従事する山口さんは、今福船長が尊敬の念をもって紹介したカナダ人宣教師で医師のマッケイ博士に由来する病院への取材を決行。病院の音ごとをラジオ番組に再構成した。

最終日、ホテルの向かいにあった馬偕記念病院を見学に行きました。
その生音を交えラジオ番組を作りましたので、共有させていただきます。
仕事で関わっている番組で、ククムイ旅そのものには触れていませんが、船長やみなさんと過ごした時間がなければ、この話はできなかったと思っています。
ぜひ、お聞きいただければ幸いです。

 

台湾の病院、突撃レポート!
~台北で、イズミンが感じたこと~
https://voicy.jp/channel/3632/6728806

 


馬偕記念病院のマッケイ博士像とともに

 

 「群島ククムイのみごとな連帯!」。それぞれの多様なメディエーションに、船長からの声が届いた。

 どこに至るのか? 何が出てくるのか? 先が見通せずとも、目を凝らし、耳を澄ませ、足を踏みだす。霧の中の連帯と生成が続く。

 

(文・編集:阿曽祐子)

 


★多読アレゴリア【群島ククムイ】、今福龍太さんについて、こちらも参照ください。

【群島ククムイ】霧の中の台湾ーーー今福龍太船長との台湾旅(1)
世界とわたしのあいだ、半影の海へ。【群島ククムイ:25秋の募集】
   ただいま、一緒に旅をしてくださる仲間を募集中です。

【多読アレゴリア:群島ククムイ】今福龍太と夏の島旅へヨーソロー

生きることは霧とともにあること――今福龍太『霧のコミューン』発刊記念ISIS FESTA SP報告

霧中からひらく新たな「わたし」――今福龍太さん・第3回青貓堂セミナー報告

 

 

 

 

 

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P-1グランプリへの道 vol.2 ぶらんこの宇宙感覚【88感門】 https://edist.ne.jp/zest/88kanmon_54ha_p1-2/ https://edist.ne.jp/zest/88kanmon_54ha_p1-2/#respond Sun, 31 Aug 2025 03:02:40 +0000 https://edist.ne.jp/?p=88542 「ポケットに入っているこの玩具は、6歳の私がコンビニで万引きしたものです」   北川周哉がポケットを入り口にして世界を語ってみせたのは、今から3期を遡る51[破]のときだった。当時学衆だった北川はその後も編集道 […]

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「ポケットに入っているこの玩具は、6歳の私がコンビニで万引きしたものです」

 

北川周哉がポケットを入り口にして世界を語ってみせたのは、今から3期を遡る51[破]のときだった。当時学衆だった北川はその後も編集道をまっすぐに駆け、今期55[破]では北川師範代として夕刊ちぐはぐ教室を受け持った。そこに機を図ったかのように、P-1グランプリが復活する。奇しくもというべきか、案の定というべきか、北川師範代の教室からP-1プレゼンターを輩出することになった。

 

学衆は、教室をトップ回答で率いていた佐藤玄さん。プランのために選んだ数寄三夜は、『クラブとサロン』『コミュニティ』『忘れられた日本人』だった。現代に失われつつある公共や共同体を取り戻したい。そう考えた佐藤は当初「趣味」をテーマにプランを構想するが、もっと具体性を持たせるべしとの指南を受けて「公園」、その中でも「ぶらんこ」に目をつけた。

 

公園には、よく子供と遊びに行くという。そこにはもともと知り合いでもない大人や子供が集まっている。まさしく公共であり、共同体の場所だ。ぶらんこは公園の中でも、特に人気の遊具らしい。子供たちは順番にぶらんこに乗りこんでゆく。ぶらんこを漕ぐと、吊り下げられた板に乗った体が前後にゆれる。スピードをあげると肌は風を切って、視界はぐわんぐわんとスイングする。ぶらんこには将棋ともサッカーともおままごととも違う、身体的に純粋な享楽がある。

 

佐藤の調査はつぎつぎと、歴史に埋もれたぶらんこの秘密を明らかにする。ぶらんこはもともと遊具ではなかった。古代では悪魔祓いの儀式に使われていたり、近代では精神病の治療にも使われていた。フラゴナールは「ぶらんこ」という絵画を描いたが、そこには無邪気と欲望が絡み合っていた。佐藤の探求はアーキタイプを掘り下げ、催眠術師の振り子や地球の自転現象を示すフーコーの振り子といった大小宇宙にまで広がっていった。ぶらんこから宇宙が見えた。

 

「パパ、ブランコが壊れるくらい押して。宇宙に届くくらい押して」

 

実際に、佐藤が子供に言われた言葉である。なぜ人はぶらんこに乗って宇宙を感じるのか。ぶらんこは文明や宗教や精神にどのように関与してきたのか。ぶらんこに乗ることで、私たちは何を思いだすのか。P-1の場で、古代からぶらんこに託されてきた宇宙感覚が明かされる。

 


イシス編集学校 第88・89回感門之盟「遊撃ブックウェア」

 

★54[破]、43[花]の方はこちら
■日時:2025年9月6日(土)12:30-19:30(予定)
■会場:豪徳寺イシス館 本楼(https://es.isis.ne.jp/access/
■費用:4,400円(税込)
■申込締切:2025年8月29日(金)
■申込先:https://shop.eel.co.jp/products/es_kanmom88

 

★55[守]の方はこちら
■日時:2025年9月20日(土)13:00-19:00(予定)
■会場:豪徳寺イシス館 本楼(https://es.isis.ne.jp/access/
■費用:4,400円(税込)
■申込締切:2025年9月12日(金)
■申込先:https://shop.eel.co.jp/products/es_kanmom89

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【受講者募集中!物語講座第18綴】物語から物語を生む/動的な関係を紐解く https://edist.ne.jp/just/18tetsu_shihan01/ https://edist.ne.jp/just/18tetsu_shihan01/#respond Sun, 31 Aug 2025 02:30:15 +0000 https://edist.ne.jp/?p=88562 吉村林頭が「講座の中で最高に面白い」と断言するイシス物語講座。   18綴師脚座が8月24日に開催され、そこで3つの文叢名が明らかになった。「師脚座」とは、[守][破]の「伝習座」にあたる、物語講座指導陣による […]

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吉村林頭が「講座の中で最高に面白い」と断言するイシス物語講座。

 

18綴師脚座が8月24日に開催され、そこで3つの文叢名が明らかになった。「師脚座」とは、[守][破]の「伝習座」にあたる、物語講座指導陣による「方法物語」の学びと相互編集の場である。
物語講座では、[守][破]の教室に相当する場を文叢と呼び、文叢名は「二つの物語の一種合成」によりネーミングされる。各文叢名は、担当師範代の「らしさ」を仄かに連想させるとともに、文叢での物語編集の起点や手すりともなる。

4ヶ月で5編の物語を書き上げる講座開講に先立ち、まずは師脚座で明かされた3つの文叢名と6つの文叢物語を、エディスト読者に先行公開する。

 

沼地の果ての温室 文叢 (北條 玲子 師範代/森井 一徳 師範)

 

『沼地のある森を抜けて』梨木香歩/新潮文庫
『地球の果ての温室で』キム・チョヨプ/早川書房

 

地球星人服従 文叢 (畑本 浩伸 師範代/高橋 陽一 師範)

 

『地球星人』村田沙耶香/新潮文庫
『服従』ミシェル・ウエルベック/河出文庫

 

産霊山ランデヴー 文叢 (堀田 幸義 師範代/小林 奈緒 師範)

 

『産霊山秘録』半村良/ハヤカワ文庫
『宇宙のランデヴー』アーサー・C・クラーク/ハヤカワ文庫

 

自明/普遍とされてきた前提やルールを問い直し、ありえた歴史/おこりうる未来など、世界の別様をアブダクションする。

 

気候変動や社会的混迷がエスカレートする渦中にこそ読んでほしい、歴史的現在を再編集する契機ともなる物語が、ここには揃っている。

 

「方法的に読む」から「方法的に書く」へ

 

物語を「読む/書く」の間には「物語が物語を生む動的な関係」が存在する。

これを「書く」の側から紐解けば、「擬く/準える/肖る」を駆使した方法物語と言い換えることができる。他方で「読む」の側から紐解くと、物語の読み手を媒介して動き出す「物語の自己編集性」と言い換えることができる。

 

この「物語の自己編集性」をリバース・エンジニアリングし、自らも物語編集において実践したのが、松岡校長が敬愛したウンベルト・エーコである。

 

エーコの根幹にあるのは、物語を読むとは、作者と読者の「協力によって遂行される相互的な作業」であるという考え方だ。エーコは、「作者の意図こそが唯一絶対の真理である」とする立場と、「解釈は読者の自由であり、無限の可能性がある」とする立場の両方を批判した。そして、読者の自由な解釈は、テクスト自体が持つ構造や文体など(テクストの意図)によって方向づけられ、制御されるとし、こうした解釈の枠組みを「モデル読者」という概念を用い説明した。

 

「モデル読者」とは、個々の物語テクストが要請する「理想的な読み手像」である。物語テクストから「モデル読者」に要求されるのは、物語の「筋」を追うことだけでなく、物語テクストの随所に仕掛けられた「鍵穴」と、物語テクストの内外に広がる「物語知識間のハイパーリンク構造」を何度も推論的に散策し、仮説的に物語の意味を解釈することである。

 

このように、物語の読み手は「物語の自己編集性」に導かれ、「モデル読者」たらんとする経験を通して、物語テクストに織り込まれた「方法物語」を引き受ける。そして、物語を読む/書くの円環的な往還の中で、世界を方法的に問い直し/編み直してゆく…


物語講座第18綴では…

 

文叢物語の方法的な「共読」を契機として、文叢や講座全体で相互共振しつつ「方法的に書く」ことを加速させます。

「方法物語」の真髄に迫りたい方の受講、お待ちしています!


文/高橋陽一(18綴・物語講座 師範)

 


 

[遊]技法研鑽コース 「物語講座」第18綴
https://es.isis.ne.jp/course/yu-narrative

 

■ 期間:2025年10月6日(月)~2026年2月1日(日)

 ライブ稽古「蒐譚場」2025年12月13日(土)
 編集工学研究所(本楼)

 

■ 資格:[破]応用コース修了者(突破)以上

 

■ プログラム:窯変三譚/トリガー・クエスト/編伝1910

 

■ お申込み ※再受講割引あり。
https://shop.eel.co.jp/products/es_yu_mono_018

 

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イシスDO-SAY 2025年9月 https://edist.ne.jp/just/isis-do-say-202509/ https://edist.ne.jp/just/isis-do-say-202509/#respond Sat, 30 Aug 2025 23:30:36 +0000 https://edist.ne.jp/?p=88572 イシス編集学校で予定されている毎月の活動をご案内する短信「イシスDO-SAY(ドウ-セイ)」。   早いもので、9月を迎えます。今月は、多読アレゴリアの秋シーズン開講もあれば、コース修了を祝う感門之盟や、多読ス […]

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イシス編集学校で予定されている毎月の活動をご案内する短信「イシスDO-SAY(ドウ-セイ)」。

 

早いもので、9月を迎えます。今月は、多読アレゴリアの秋シーズン開講もあれば、コース修了を祝う感門之盟や、多読スペシャル読了式も行われます。はじまりがあるから終わりがくる。終わりがあるから、はじまる。そんな季節を楽しんで、皆さんも編集道のスタート地点を、見つけてください。

 

では、今日は2025年9月のDo-Sayをお届けします。今月も皆さんとともに、アレコレDOしてSAYしていきます。

(今月のカバー写真は9月のアイテム「アフタヌーンティー」
※9月3日はアフタヌーンティー文化の日)

 

202591日(月) 多読アレゴリア2025秋開講(〜12/21

2024年12月からスタートしたイシス編集学校の新しいコース「多読アレゴリア」、新シーズンが始動。今期から「ほんのれんクラブ」が新設される。

詳細・お申込はこちら

▶ 関連情報 【2025秋募集★多読アレゴリア】「別典祭」ダイダイ大開催!!!! イシスの新しいお祭り?

 

202596日(土)感門之盟(54[]43[]

第54期[破]、第43期[花伝所]の感門之盟(修了式)が開催される。講座運営に携わる指導陣たちが企画し、運営する感門之盟、濃密な準備が進めれてきた。テーマは「遊撃ブックウェア」。 (※参加は当期限定)

詳細はこちら

▶ 関連記事 「遊撃ブックウェア」―第88-89回感門之盟タイトル決定!

▶ 関連記事 P-1グランプリへの道 vol.1 役者は揃った!【88感門】

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▶ 関連記事 「アフ感」への参加は感門之盟のあとがきを綴ることである【88感門】

 

202597日(日)多読アレゴリア OUTLYINGイベント開催

武邑光裕氏が監修し、武邑氏の自叙伝と同じ名前を冠した唯一無二のクラブが、クラブ参加者限定でのイベントを豪徳寺で開催。

▶関連記事 【2025秋募集:OUTLYING CLUB】通過儀礼を経て、記憶の旅へ

 

202599日(火)オンライン学校説明会

イシス編集学校の学校説明会を開催。編集術を簡単に体験いただくほか、受講方法のご説明や、受講にあたって気になることなど個別のご質問にも対応。

お申込はこちら

▶ 関連記事 自分の思考のクセを知り、表現の幅を広げる体験をー学校説明会レポート

 

2025910日(水) 玄月音夜會

松岡正剛校長はさまざまなジャンルのアーティストと親交を深めてきた。音楽家の方々と楽しんだ、音楽と言葉が交錯する“夜会”を引き継ぎ、全7夜のシリーズで開催する。9月のゲストは邦楽家・西松流家元の西松布咏さん。

お申込はこちら

▶ 関連記事 松岡正剛を偲ぶ、音楽と語らいの特別な夜「玄月音夜會」開幕

2025912日(金)世界読書扇伝[離] 課題提出期限

イシス編集学校は、[守][破][離]で構成される方法の学校。この[離]を目指さなければ、編集道は未完のままだ。[離]を終えてもなお未完ではあるが、[離]をくぐらなければ見えてこない編集的世界が広がっている。[破]を終了したのなら、[離]へ。第17期[離]、残席僅か。9月12日が事前課題提出日。詳細・お申込はこちら

▶ 関連記事 【第十七季】[離]の方法が今、再生者を待つ

▶ 関連記事 【第十七季】複雑化する[離]に飛び込め

 

 

2025913日(土)学校説明会(本楼)

イシス編集学校の学校説明会を、豪徳寺のブックサロンスペース本楼にて開催。編集術を簡単に体験いただくほか、受講方法のご説明や、受講にあたって気になることなど個別のご質問にも対応。

お申込はこちら

▶ 関連記事 自分の思考のクセを知り、表現の幅を広げる体験をー学校説明会レポート

 

2025914日(日) 「多読ジムスペシャル杉浦康平を読む読了式

7月に開講した『多読ジムスペシャルコース 佐藤優を読む』が9月初旬に修了。この読了式が開催される。

▶ 関連記事 「杉浦康平を読む」に決定! 多読SP第6弾【先着30名】

 

2025915日(月・祝) ISIS co-mission 会議

ISIS co-missionが一堂に会し、イシス編集学校のアドバイザリーとして期待や助言を語りあう。

▶ 関連記事 「脱編集」という方法 宇川直宏”番神”【ISIS co-missionハイライト】

▶ 関連記事 「遅延」が常識に対する対抗策になる 武邑光裕さん【ISIS co-missionハイライト】

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2025920日(土) 感門之盟(55[]

第55期[守]の感門之盟(修了式)が開催される。テーマは9月6日に続き、「遊撃ブックウェア」。 (※参加は当期限定)

詳細はこちら

▶ 関連記事 「遊撃ブックウェア」―第88-89回感門之盟タイトル決定!

 

2025923日(火) オンライン学校説明会

イシス編集学校の学校説明会を開催。編集術を簡単に体験いただくほか、受講方法のご説明や、受講にあたって気になることなど個別のご質問にも対応。

お申込はこちら

▶ 関連記事 自分の思考のクセを知り、表現の幅を広げる体験をー学校説明会レポート

 

2025923日(火) 第十七季[離]第1回別当会議

第十七季[離]の指導人たちが集まり、別当会議が行われる。

▶ 関連記事 【第十七季】[離]の方法が今、再生者を待つ

▶ 関連記事 【第十七季】複雑化する[離]に飛び込め

 

2025927日(土) 180回伝習座

次回伝習座は、ISIS co-mission である今福龍太氏の講義を予定している。松岡正剛校長のRemix講義も。指導陣だけに閉じた研鑽の場から、すべての方が無料で視聴できる新スタイルに。Youtube Liveで配信予定。多くの皆様のご参加をお待ちしています。

詳細はComing soon!

 

2025928日(日)突破講

第55期[破]の指導陣たちが自ら企画し、集い、研鑽する場[突破講]が開催される。

▶ 関連記事 54[破]突破講で校長松岡正剛のラストメッセージを共読!

 

2025928日(日) 日本哲学シリーズ輪読座 新シーズン 第6

図解で古典を読み解く輪読座、今シーズンは『古今和歌集』『新古今和歌集』両読みを行ってきた。9月でシーズン最終回を迎える。

詳細・お申込はこちら

▶ 関連記事 ◎『古今』と「ボカロ」の相似性◎【輪読座「『古今和歌集』『新古今和歌集』を読む」第二輪】

▶ 関連記事 ★空海が準備し古今が仕立てた日本語の奥★【輪読座「『古今和歌集』『新古今和歌集』を読む」第一輪】

▶ 関連記事 ◎4/27スタート◎Adoは新古今!?『古今和歌集』『新古今和歌集』両読みで日本語の表現の根本に迫る【イシス唯一のリアル読書講座「輪読座」】

 

 


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ゴジラはなぜ皇居を避けるのか?昭和史おさらいシリーズ#4ゴジラで読み解く戦争の亡霊と昭和の謎 https://edist.ne.jp/list/honnoren_war_8/ https://edist.ne.jp/list/honnoren_war_8/#respond Sat, 30 Aug 2025 21:00:38 +0000 https://edist.ne.jp/?p=88625 読書対話を楽しむpodcast「ほんのれんラジオ」の最新エピソードが公開されました!   ほんのれんvol.29のテーマは、“私たちの戦争?戦後80年、忘れないでいたいこと”。 8本目は助っ人編集部員「バニー」 […]

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読書対話を楽しむpodcast「ほんのれんラジオ」の最新エピソードが公開されました!

 

ほんのれんvol.29のテーマは、“私たちの戦争?戦後80年、忘れないでいたいこと”。
8本目は助っ人編集部員「バニー」の持ち込み企画として、「ゴジラ」を読み解いてみます。

 

ゴジラはなぜ皇居を避けるのか?昭和史おさらいシリーズ#4ゴジラで読み解く戦争の亡霊と昭和の謎/松岡正剛・田中優子『昭和問答』&加藤典洋『さようなら、ゴジラたち』

 

▼目次
お昼ごはん食べるか論争/松岡正剛、最後の原稿/「昭和問答』を問答します/「突き刺さったまま」/松岡正剛が残した問い:日の丸を背負ったゴジラ/ゴジラっていいヤツ?悪いヤツ?/岡本太郎が描いた第五福竜丸事件/ゴジラが夜に来る理由/加藤典洋、二段階の哀悼/グッバイ・ゴジラ、ハロー・キティ/なぜコジラは何度も日本に上陸するのか/ゴジラ=亡霊(Revenant)
説/複式夢幻能/「サイパンの海が見える…」/ゴジラ=戦艦大和説/ゴジラが皇居を避ける理由/三島由紀夫『英霊の聲』/などてすめろぎは人間となりたまひし/ミニラやばくね/アオミドロ
をスライム化/松岡正剛マネージャー太田香保さんの問い/正当な後継者:シン・ゴジラ/村上春樹「ねじまき鳥クロニクル』/現代の負をどう表現するか

▼今月の旬感本

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(1)『私たちの戦争社会学入門』野上元(著)大和書房 2025
(2)『国家を考えてみよう』橋本治(著)筑摩書房 2016
(3)『新書 昭和史短い戦争と長い平和』井上 寿一(著)講談社 2025
(4)『我々の死者と未来の他者』大澤真幸(著)集英社インターナショナル 2024
(5)『世代とは何か』ティム・インゴルド(著)奥野克巳、鹿野マティアス(訳)亜紀書房 2024

 

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2期限定開講。申込は8/25(月)まで。詳しくはこちらのエディスト記事をご覧ください。

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54[破]第2回アリスとテレス賞大賞作品発表!アリストテレス大賞 高橋杏奈さん https://edist.ne.jp/post/54ha_attaisho/ https://edist.ne.jp/post/54ha_attaisho/#respond Sat, 30 Aug 2025 09:18:34 +0000 https://edist.ne.jp/?p=88527 物語編集術は[破]の華である。実際、物語を書いてみたいから、と[守]から進破する理由に挙げる学衆は多い。だが、人気があるという理由だけでは華とは呼べない。 物語編集術は、「スター・ウォーズ」「ミッションインポッシブル」と […]

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物語編集術は[破]の華である。実際、物語を書いてみたいから、と[守]から進破する理由に挙げる学衆は多い。だが、人気があるという理由だけでは華とは呼べない。

物語編集術は、「スター・ウォーズ」「ミッションインポッシブル」といった課題映画の中から一作を選び、その作品のキャラクターやストーリーを読みとる。さらに、時代を取り替えたり、主人公の性格や属性を読み替えたりして「翻案」し、新しい物語をつくる。1カ月に及ぶ稽古の末に生まれる物語は、種から発芽し風雨を耐え忍び、光合成と呼吸を繰り返した先に開く一輪の華のごとくである。そこに、師範代の指南によって学衆の中に潜む数寄や葛藤、切実やメッセージが引き出され相転移が起きたとき、自分にしか書きえなかったであろう破格の華が開くのである。

 

8月3日に突破日を迎え幕を閉じた54[破]では、5本の映画から53もの華が開いた。商店街のラジオ体操という日常世界での小学生の大冒険、動乱の18世紀末フランス革命期を革装の手帳が語る結構の幻想ファンタジー、江戸時代に始まる伊勢湾干拓という人間の営みの奥にありえたであろうドラマ……。

 

これから紹介するのは高橋杏奈さん(カオスの縁子さん教室)のアリストテレス大賞作品。映画『エイリアン』を翻案し、どんな大輪を咲させたのか。選評委員による講評とともに、とくとご覧あれ。

 


 54[破]≪アリスとテレス賞≫「物語編集術」


【アリストテレス賞:大賞】

 

■高橋杏奈(カオスの縁子さん教室)

『故郷を見つめて』

原作:エイリアン

 

 

第一章:栄光の曝露

 

 故郷は遥か東。1850年、フランクリン遠征調査の命を受けた一隻が、キングウィリアムランドの近くを漂っていた。5年前に北西航路発見を目指した遠征隊が行方不明となった、その原因追及のための国の威信をかけた航海であった。甲板に立つ若き航海士リチャードの頬を鋭い寒風が切り裂く。生まれは工場労働者の息子だが士官学校でその才覚を現し、帝国の使命をその胸に抱いた青年だ。船内では、冬の閉塞感と配給の乏しさに、計8人の乗組員たちの心が軋んでいた。陽気な航海士のトーマスでさえ、苛立ちを隠さず「焼いた肉が食べたいな、リチャード」とこぼした。「これより我々は上陸し、原住民からの情報収集にあたる」艦長フレデリックの声を聞いて、計画変更をリチャードは不思議に思った。「まともなものにありつけるかもな」とトーマスが耳打ちする。船の惨状を思うと沿海調査だけでなく上陸もやむなしである。海氷を慎重に回避して上陸した。ツンドラと石灰岩、そして氷。トーマスは言葉の壁をものともせず、原住民と火を囲み交わった。彼らは帝国産の缶詰が漂着していたことを教えた。フランクリンの船はこの近郊で沈没したようだ。調査の成果としては十分だった。帰路の食料を補給するべく、原住民に交渉したが、この土地には分けるほどの食料はない。代わりに長老が差し出したのは、寒冷地にのみ育つという苔──儀礼の核を担う薬だった。苔を乾燥させたものを火にくべると細く煙が立ち上った。好奇心に駆られたトーマスがそれに近づき吸い込むと、たちまち高揚と陶酔に包まれ、長き航海の疲労が消え去った。その多幸感に満ちた表情は、どこか虚でもあり、リチャードを不安にさせた。「フレデリック艦長、これは帰路で役立ちます」というトーマス。リチャードは持ち込みに反対したが、医師のセオドアが賛成の意を示し、フレデリックもそれを認め、帰郷のために出航した。

 

 

第二章:欲動の感作

 

 薬は徐々に、艦内に静かに広がり始めた。最初は少量だったが、やがて水夫たちの手で加速し、船の秩序は徐々に崩壊の兆しを見せた。機関室の隅で薬を吸う男たちを見て、機関士アーサーは不機嫌に「禁煙中だ、俺ァな」と言い放ち、深く帽子を被り直した。リチャードはこの異様さを不安に思っていた。トーマスは薬を吸って以降、眠らず、食わず、瞳の奥にかつての彼の温かさはなかった。リチャードが医務室でセオドアに直訴するも、彼は冷たく「医者は私だ」と返し、ただ乗員たちの変容を記録し続けていた。やがてトーマスは泡を吹いて絶命した。薬の凶悪さが露わになり、船員たちも恐怖したが、依存に侵された彼らはやめられなかった。フレデリックの禁令も無力だった。そして彼自身も、陰ではその使用を理性で止めることができなくなっており、艦長室にて冷たくなって発見された。リチャードは彼らの遺体を暗い海に投げ込む。闇に吸い込まれていくそれを見て、疑念と焦りが彼の心を渦巻いていた。

 

 

第三章:中枢の覚醒

 

 リチャードは打開策を求めてセオドアが不在の医務室に忍び込んだ。重々しい書架を漁ると『異国の神秘』『儀礼と神懸かり』など、医務室に似合わない本の中から帝国支給の教範の古い版を見つけた。それを開いたとき、一枚の手紙が彼の目に留まった。『エラバス号及びテラー号捜索遠征の目的は、極北先住民の儀礼薬草による精神状態の変容過程の記録にあり。船員を被験者とし十分な記録を残すこと。目的のため食料配給に制限を施す。食欲減退、休息の削減…』それは、すべてが計画されていた証だった。セオドアはただの軍医ではなく、帝国の特命を受けて「人間を越える力」を研究していた。戻ってきたセオドアは、リチャードの手にあるメモを見ると、淡々と語った。「これは人類の夢なんだ」「それがあの惨状の理由か?」とリチャードは怒りを抑えた声で返す。突然セオドアはリチャードに小型のナイフを向け、その刃は防御しようとしたリチャードの左前腕を傷つけた。リチャードはバランスを崩して転倒した。そのまま二人は揉み合いになる。騒動を聞きつけてそこにアーサーが飛び込んだ。「離れろ、このクソ野郎!」彼のスパナがセオドアの頭部を打ち抜いた。血が床に音を立てて広がる。セオドアは、静かに絶命した。アーサーとリチャードは、無言でメモを見つめていた。あの薬なら自分を助けてくれるかもしれないとリチャードは揺らいだ。誇り高い帝国はどこにあるのだろう。一度芽生えた闘志は嘘でない。

 

 

第四章:名誉の逸脱

 

 薬に蝕まれた乗組員たちは、理性の枷を完全に失っていた。船員に事態を共有するべく向かった石炭貯蔵庫でアーサーは一人の水夫に襲われる。凄まじい力で暴れる男と、鉄パイプで応戦するリチャードとアーサー。「目を覚ませ!」という叫びと共に、血飛沫が吹き上がる。アーサーは意図せず男の胸にパイプを突き刺した。二人は肩で息をしながら、沈黙を迎えた室内を見回した。船員の一人が座っているのを見つけたが、その彼も死亡していた。リチャードは彼のこけた頬と目の下の隈をなぞり、その瞼をおろした。二人はこの異様な船からの脱出と、薬を封じ込めるために遺体を載せた船を降りることを決意した。小型船の整備を進め、まだ生き残っている船員との脱出を計画した。しかし、準備の最中、その彼も痙攣を起こし、泡を吹いて死亡。「そんなにこの煙がいいのかよ」と幾重もの罪悪感と孤独感に苛まれたアーサー。リチャードは彼と自分を慰める言葉も持っていなかった。アーサーはリチャードが目を離した隙に甲板に出て行方不明となった。アーサーの帽子だけが残る。リチャードはたった一人になった。しかし、彼は己の意志を忘れてはいない。汚染された船が国に戻れば、国民が混沌に包まれてしまう。暗い世界にこれ以上誰かが吸い込まれるのは嫌だった。疲労のせいか彼の体はふらつく。彼は遺体と薬を載せた本船を手放した。このまま沈むだろう。小型船には最低限の装備のみである。

 

 

第五章:統合の断裂

 

 小型艇で凍る北極海を漂いながら、リチャードは艦と共に薬が上陸することを防いだ。唯一の生存者だ。帝国への報告として記録日誌に「乗組員7名、原因不明の精神変調により死亡」と記す指は震えていた。使命から逸れた真実は記さない。左腕の傷が痛む。指先はすでに冷たく、紫色に変色していた。教範の知識しかない彼だが、寒さですでに壊死が始まっていることを理解した。解体用ロープで上腕をきつく巻き、その一端を力強く咥えた。歯の根は合わず、ガチガチと音が鳴る。再び帝国に戻ることができるかどうかはわからない。小さな空き缶に脂を注ぎ、帆布をねじって火を灯した。彼は震える手で工具箱から釘打ち用の斧と古びたノミを取り出す。ゴリッ。最初の一撃は鈍く温かい血が飛び散る。「この血は俺のものだ」。激痛で喉が焼けるようだった。波、甲板の軋み、そして自分の荒い呼吸の音だけが耳に響く。力を込め、斧頭を叩く。パキッ。小さな音がして、骨にひびが入った。意識が遠のく。「この痛みは俺のものだ」。何度も、何度も叩きつけた。八撃目。骨が砕けた。皮膚と腱だけがまだ彼の体にしがみついていた。彼は短く叫び、ノミを咥え、右手でナイフを引き抜くと、腱を切った。船が大きく傾いたとき、ぼたりとそれが落ちた。鉄ノミを熱し、残された肩を焼いた。焦げた肉の匂いが立ち昇る。海の上に、煙がひとすじ上がった。彼は拾い上げたものを抱きしめ、ゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

◆講評◆
 2隻の調査船、隊員129名が全滅した悲惨な史実フランクリン遠征をもとに、彼らの捜索に向かった船が遭遇した事件を描いた物語です。高橋さんは、舞台を宇宙から、地球上の辺境である北極圏に移し、エイリアンの物語マザーを丁寧に翻案することで「人間を超える力」を読み手に問う物語を創り上げました。映画が描くのは未知の生物に寄生される恐怖ですが、高橋さんの物語が描いたのは、依存することがもたらす恐怖です。快楽を与える習慣性のある苔に依存し、次々と絶命する機関士トーマスたち。帝国の特命のため、隊員で生体実験を行う医師セオドア。そして、孤独に耐えきれず自らの命を断つアーサー。極限状態が暴くのは、生きるために人は自分を超える何かに頼り、依存せざるを得ないということ。このことが印象的なシーンから見事に浮かび上がります。大英帝国の誇りで自らを律する主人公リチャードが、壊死した自分の腕を切り落とす凄惨なシーンも、母国のために生きることの凄まじさを伝えます。何ものかに頼る意思は、時に人間らしさを超える怖ろしいものを私たちにもたらすのでしょう。「栄光の曝露」から「統合の断裂」に至る各章のタイトルも人間らしく生きることに、相反するものをはらんでいることを示しています。端正な翻案と極限状態に置かれた人間の描写で、生きることへの恐れを実感させる高橋さんの物語にアリストテレス大賞を贈ります。

講評=評匠:北原ひでお

 

54[破]第2回アリスとテレス賞大賞作品発表!
アリストテレス大賞 高橋杏奈さん
アリス大賞 Coming soon
テレス大賞 Coming soon

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