私の28[花]キャンプは、吉阪隆正の建築思想【不連続統一体】の体験だった。場面ごとに異なる空間が次々と立ち現われてくる。よく分からないままに一周すると、ようやく建物を貫く原理のようなものが見えてくる。この「遅れて」やってくる全体性がたまらなかった。

「わかる」というのは、学びの終着点ではありません。
深谷は、ざくりとハサミを入れた。33[花]入伝式のことだった。
イシスの美容師は、マインドセットさえイメチェンできる。15年以上書き継がれる編集学校秘伝の式目に、大胆に剃りをいれたのが深谷もと佳花伝師範。自身が営む美容室から、斜め15度でカメラを見つめ問いかける。
人はなぜ、学ぶのでしょう?
ざっくり申しあげれば、
「わかる」ということを目指しているわけです。
学びたいと思う前提には、「わからない」という状態がある。つまり、不足という【原郷】を旅立つところから学びは始まる。
深谷は、[破]で学ぶ【英雄五段階構造】と照らして説明する。
【原郷】を出立した私たちは、なんらかの【困難】と遭遇しながら、「わかる」にたどり着く。
でも、その「わかる」は決してゴールではない、と低音のハスキーボイスが轟く。
「わかる」というステージは、
【目的の察知】です。
「わかる」というところで止まっていては、
十分ではありません。
「わからない」ということが「わかる」に変わった瞬間、世界の見え方が更新される。その新しい世界で、わかったことを実践せよ。それこそが【彼方での闘争】である。
編集術を学び、手に入れたならば、それを使い倒すべし。
商売道具のハサミを見せながら、編集術もプラグマティックなツールであることを印象づける。
では、と深谷は問う。
その実践を通して、私たちはどこへ【帰還】するのか、と。
『ただわからない』という状態から、
『わかる』という状態を経由して向かうのは、
『まだわからない』の境地。
使命感に満ちた口ぶりだった。「わかる」のその先にこそ、まだ見ぬ世界が広がっているのだ。33[花]は全員でそこを目指すのだと旗を振る。その熱風は、画面のむこうにも吹きこんだ。
オブザーブしていた梅澤奈央(42[破]師範代)は思い出していた。2年前、29[花]入伝式で深谷の話を棒立ちで聞いたことを。本楼を飛び交うジャーゴンに半泣きになった。「わからない」の泥沼でもがき、[守][破]師範代を経たいま、ようやく深谷の言葉がすこし「わかる」。【困難】が派手なほど、【察知】の喜びも【帰還】への期待もひとしおだ。
深谷はこう結んだ。
「わかる」までは個人戦。でもその先は、師範代も師範もおなじこと。
編集学校の同志として、
ともに、未知へ冒険していこうではありませんか。
たった2分間で、学びの本質までリバースし、ターゲットを更新してみせた。
(本楼写真:後藤由加里)
▼もっと学びたい方に
・髪棚の三冊 vol.1-2「たくさんの私」と「なめらかな自分」
・キエラン・イーガン『想像力を触発する教育』(1540夜)
・ジョセフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』(704夜)
入伝式の1週間前、オンラインガイダンスで「コップを空にせよ」と説く深谷。毎度、松岡校長が賞賛する語り。その秘訣は、徹底したツール活用にある。ハサミ、コップだけでなく、[守][破]編集術、さらに花伝所必携「15のイーガンの想像力解発ツール」まで。
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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2025-07-03
私の28[花]キャンプは、吉阪隆正の建築思想【不連続統一体】の体験だった。場面ごとに異なる空間が次々と立ち現われてくる。よく分からないままに一周すると、ようやく建物を貫く原理のようなものが見えてくる。この「遅れて」やってくる全体性がたまらなかった。
2025-07-02
連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。