12ショットでダイジェストー第175回伝習座

2024/04/16(火)08:00
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東京の桜もようやく盛りを迎えた2024年4月6日(土)、イシス編集学校は「伝習座」の真っ盛りだった。第53期[守]基本コース(5月13日開講)第52期[破]応用コース(4月22日開講)の指導陣たちが世田谷豪徳寺のISIS館に集い、方法を交わし合いながら開講に向けて一座建立する場である。今回は12枚の写真で伝習座の様子をお届けする。

 

▲[守]師範代から[破]師範代へとロールを着替えた10名の新師範代に対して、原田淳子[破]学匠は「もっとインプットしてアウトプットすることを貪欲にやってほしい」と[破]ならではのハイチャージを求めた。学匠として多くの師範代を見てきたからこそ「他からもらってきたものを指南に織り交ぜて場に返していくほうが、師範代として愉快にも豊かにもなる」と語る言葉には、新師範代への期待と方法への確信が滲み出る。「厳しいからこそ面白くなる52[破]」を旗印に、指導陣一丸となって4/22(月)の開講に向けた疾走がはじまっている。

 

▲前夜、[守・破・離]三講座の学匠・総匠が揃った三匠会議の場で、校長の第一声が「託したい」だったと明かした鈴木康代[守]学匠。校長からのお題を引き受け、「守・破・離という大きなスコープのなかにある[守]」という鳥の目と、「小さなひとつの回答にも世界がある」という虫の目、この両輪で53[守]はいきたいと語った。新師範代たちは事前に課されたお題にも果敢に取り組み、過去期と比べても群を抜くラウンジ発言数だったという。EDIT TIDEのTシャツを着た康代学匠の「みなさんならいける!」という激励によって、新師範代のEDIT TIDE(編集態度)もさらに勢いづくに違いない。

 

▲10期前の42[守]から先月幕を下ろしたばかりの52[守]まで、さまざまな期で[守]師範代を担った者たちが一座を組む。師範代のプロフィールの多様さが52[破]の魅力だ。なかでも[守]入門から休むことなく走り続けてきたふたりの初々しさと真剣な眼差しが目を引いた。バイク女子でもある変速背負投げ教室の石井晴美師範代(上)は目から好奇心のハイビームを出し続け、語部ミメーシス教室の高田智英子師範代は熱心にメモをとってミメーシスの準備は万全(下)。「中高と柔道をやっていて、柔道稽古のようにぶつかりあう教室にしたい。得意技は袖釣込腰です♡」(石井師範代)、「世界と未来をつなぐ、いまの時代の私たちにしか紡げない言葉を学衆さんとともに見つけていきたい。紋切型を打ち破っていきたい。」(高田師範代)

 

 

▲53[守]では学生師範代が3人も誕生!これからのイシスを担うハイパーエディターズ、どうぞお見知りおきを。

 

▲イシス歴が長いベテラン師範でありながら、意外にも[破]の師範は初というふたりがレクチャーを行った。
(上)[遊]物語講座の大人気師範代で「ぜひ指南を受けたい!」とファンが続出している小林奈緒師範は、《文体編集術》を担当。《いじりみよ》の〈み:見方づけ〉に苦手意識を持っている学衆が多いことへの危機感に触れ、「見方づけは勇気がいるけれど、見方づけこそが情報を動かしていく。それまでの情報の捉え方の閾値を超えていく力を持っています」と力強くメッセージを放った。小林師範の熱を受け取った新師範代たちから、52[破]はミカタヅケダイスキ病が大流行の予感!
(下)企業家でファッショニスタでWikipediaにページもある桂大介師範は、《クロニクル編集術》は「自分発見ワークショップじゃない」とバッサリ。松岡正剛校長の著書『フラジャイル』から「われわれは、つねづね自分はまるごと『一人ぶんのじぶん』だとおもいこみすぎている」という言葉を引き、編集的自己への思い溢れる桂師範の語りを聞いているうちに[破]を再受講したくなってしまった。
「[守]の稽古の《たくさんの私》は、家では父親をやっていて会社では仕事をしていて…というものではない。託したり託されたり、借りたり貸したりしながら何かを出入りさせていくこと。課題本の著者の見方を借り、本に委ねることの痛快さを味わいながら、硬直した〈本当の自分〉ではなく相互編集される〈別様の自分〉へ向かってほしい。」

 

 

 

▲[守]の用法解説を担当したのは石黒好美師範(上)と北條玲子師範(下)。上野の国立科学博物館で開催中の「大哺乳類展3-わけてつなげて大行進」を先日訪れたという石黒師範は、この展示内容に重ねて[守]の用法1「わける・あつめる」を解説。「分断せよ!」というピリリとしたメッセージで「わかる」ために「わける」ことの大切さを紐解きながら、「分けて、分けない」という日本的方法にも踏み込んだ。昨年の用法4の解説にはじまり、今回で[守]の4つの用法解説をすべてコンプリート!師範陣のなかでも数人しか成し遂げていない偉業だ。

北條師範は、前期は[遊]物語講座で師範代を務め、担当していた文叢(教室)から最優秀賞の冠綴賞受賞者を出した腕利き師範。今期は[守]師範初登板にして、用法2「つなぐ・かさねる」で初の用法解説に挑んだ。北條師範の流麗な語りに惹きつけられたある師範代は、「はじめて編集思考素は美しいと思った」と感想を述べていた。

 

 

▲林頭・吉村堅樹は、先月の第83回感門之盟「EDIT TIDE」の本番、耳からくる体調不良で本楼に来られなかったことを詫びながら、実は内耳まで傷つき、いまも左耳がよく聞こえず耳のなかでいろいろな音が渦巻いていることを明かした。「僕の耳がEDIT TIDEで…」と笑いをとりつつ、これからはじまるイシス編集学校25周年の大変革を予告。1)松岡校長悲願のISIS co-missionの始動 2)伝習座・感門之盟のスタイル一新 3)多読ジムから多読アレゴリアへ の3つだ。さらに、イシスが”編集を社会する”に向かっていくために「企画書のススメ」をレクチャー。企画書を編集的にするポイントとして林頭が挙げたのは、1)ソリューションではなくアブダクションになっているか 2)自分の「感」が動くか、乗れるものになっているか 3)スコープをどこまで広げられるか。「企画書は思考速度を遅くしないということ(つまりまどろっこしく書かない)、必ず驚きと突破を意識することが大事。失敗しながら繰り返しやっていくしかない」というポイントも後日聞いた。大きな節目に居合わせていることを自覚した新師範代は「このタイミングで師範代として立てることが嬉しい。波に乗るだけでなく、自分たちがEDIT TIDEを巻き起こしていきたい」と意気込んでいた。

 

▲ラストは[守][破]の全指導陣が本楼に集合。第77回感門之盟「DANZENイシス」の校長校話「断点から断然へ~17歳パネル使って」の映像を見ながら、1)最小のものを最大にする 2)引き算 3)モード などについて全員で交わし合った。同席していた松岡校長からも最後にヒントが。「モード、ひとことでいえば様子。[守]の稽古でたくさんやっているのは様子です。様子というのはみんながなんとなくわかるもの。椎名林檎と中島みゆきの違いはわかる。だけど説明しろと言われると困るようなものですね。若林さんのストールでも桂くんの帽子でもいいんだけれど、そういう様子を出すことによって〈A, B or C〉のCが、自分が思いもかけなかった様子との逢着になる。学衆が様子でなにかを見せていることに対しても、たくさんの言葉や指南を返せるようになってほしい」

 

 

 

本楼の外へ出ると、桜の向こうで二羽のムクドリが小休止。春がきて鳥は番いになり、イシスの師範代たちは番稽古に向かっている。

 

写真:後藤由加里(石黒師範、北條師範)、福井千裕(その他)

 

  • 福井千裕

    編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。