アレゴリーが運ぶアウトライングの行方

2024/11/13(水)12:00 img
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■多読アレゴリアという問い

 

多読アレゴリアは、編集しながら編集を学ぶプロジェクトだ。

 

豪徳寺本楼で開催された工冊會(こうさつえ)で、金宗代代将はそう切り出した。プランニング編集術でいうところの【与件の整理】はもちろん、【目的の拡張】こそ、その先の自由につながるのだと言う。

 

多読アレゴリアを率いる金宗代代将(撮影:後藤由加里)

 

──アレゴリアという言葉には、どんな意味があるだろうか?

 

金代将の問いに、松丸本舗のBSE(ブックショップエディター)として活躍した森山智子が応えた。

 

allegoriaは「寓意」「別のものを語る」などと訳される。allegoryの「al-」は「向こうに」「他の」といった意味をもつ。遠く別のところにあるものをこちらに持って来る、あるいは描いた連想がそちらに飛んでいく。そんな広がりを思わせる。

 

さらに、0025夜『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』レオナルド・ダ・ヴィンチをひいてこう述べた。

 

ダヴィンチは湧き出る連想で飛躍し、新たに見つけた思想に次々とひきつけられていった。わたしたちも多読によってそれができるのではないか。

 

これに応じるかたちで、金代将は1813夜『アレゴリー』アンガス・フレッチャーを取り上げた。

 

アレゴリーは比喩や類推のための道具や分類概念なのではなく、われわれが何かを表現(表象)するときの「モードの行方を握っている母なる方法」だったということだ。

 

アレゴリーの作用はいちじるしくモード的ないしはスタイル的なのである。

1813夜『アレゴリー』アンガス・フレッチャー

 

コードにとどまるな。アレゴリーがモードとなってあらわれるよう拡張に向かえ。多読アレゴリアにはそれが託されているのだと、金代将はうったえた。

 

「資本主義も編集術も、“あきる”ことと闘っている」のだという森山智子。多読アレゴリアでは「別様の珍しきは花」をサブタイトルに、《着物コンパ☆クラブ》を来シーズンに立ち上げる。着物の部品、構造、歴史、気分をコンパイルし、組みかえや連想によって自在に「うつし」と「やつし」ができる、新鮮な体験を提供する。

 

「アレゴリア」という松岡校長からの問いに感応した多読アレゴリア集団は、それぞれの活動を通じて何を返していくのか。

 

 

 

■辺縁からのアプローチ

 

ISIS co-missionメンバーでもある武邑光裕氏は、多読アレゴリアのクラブのひとつである<OUTLING CULB>を監修する。

 

世界が情報を簡素化し合理化する方向に進んでいるいま、型破りな思考が求められているのだと武邑氏は言う。

 

ISIS co-missionメンバーのひとりでもある武邑光裕氏(撮影:後藤由加里)

「カウンターカルチャーのような文化的イノベーションが、主流のトレンドによって強制された無感覚な同調主義の時代に最も大きな影響力を持つ」

 

 

アウトライングとは、異端、辺縁、中心から遠くにあるもの、はぐれものといった意味をもつ。国防総省のネットアセスメント局長を務めたアンドリュー・マーシャルが提唱した、隠れた要因に着目する長期的で型破りな戦略、アウトライング・アプローチを指す。

 

型破りは型があってこそ。サブジェクトよりもオブジェクト。「もの」にこだわる。「もの」に文脈を与え、「もの」と情報の新たな関係を創出する。松岡校長のメソッドで規格外なプロジェクトを立ち上げ、それを見える形にしていきたい。

 

ここで武邑氏は、TikTokなどが提供するマイクロドラマの脅威について取り上げた。

 

TikTokを介して青少年の個人情報が中国に流出していることに加え、短く中毒性のあるマイクロドラマは過剰なドーパミン分泌を誘発し、三億人を超えるアメリカ人を中毒状態にしている。気晴らし文化は余暇の充実などではなく、人間への神経学的な影響を与えている。ものごとに対し別の観点をもつことで次のアプローチが出てくる。

 

【参照】武邑光裕の新·メディアの理解 ② スマートフォンと「気晴らし文化」の闇

 

OUTLING CULBのメンバー/増岡麻子、西宮・B・牧人。「根本に着目し、真の異端者として体制に流されないアウトライング・アプローチをとる」

 

OUTLING CULBのメインお題

 

《トランスエディスト》

武邑氏による遊刊エディストでの連載記事「新・メディアの理解」をメディエーションする。

《読相フラットNOW》

リアルイベントの企画。本楼GOLDの立上げを目指し、既存のロールやツールを再デザインする。

《OBJECTダンディズム》

ハイパープランニングによるオブジェクトの創出。「別」の発想をもたらすノートを制作する。

 

なにかを生み出すときに必要なもの。それは大いなる文脈と、それを支える共有知だと、編集工学研究所の安藤昭子社長は言う。

 

編集工学研究所 代表取締役社長 安藤昭子(撮影:後藤由加里)

 

イシス編集学校には「編集術」という豊潤な共有知がある。多読アレゴリアは、この実りを交換することができるひとつの市場。中心からそれた多焦点なアプローチによって、新たなエネルギーを生み出すことができる。

 

編集工学研究所 代表取締役社長 安藤昭子

 

「編集術」に支えられたアウトライングなアレゴリーの束が、これまでにない新たなモードを創出する。

 

 

アイキャッチ:西宮・B・牧人

 

 

Info 多読アレゴリア

 

【URL】https://shop.eel.co.jp/products/detail/765

【定員】300名

【開講日】2024年12月2日(月)

【申込締切日】2024年11月25日(月)

【受講費】月額11,000円(税込)

 ※ クレジット払いのみ

 ※ 初月度分のみ購入時決済

  以後毎月26日に翌月受講料を自動課金

  例)2024冬申し込みの場合

    購入時に2024年12月分を決済

    2024年12月26日に2025年1月分、以後継続

 ※申込後最初の期間(2024冬)の間は

  イシス編集学校規約第6条に定める

  期間後の解約はできません。

  あらかじめご了承ください。

  → 解約については募集概要をご確認ください。

 

 *希望するクラブの申請はお申し込み後、

  随時希望クラブ申請メールをお届けさせていただきます。

 

2クラブ目以降は、半額でお申し込みいただけます。

1クラブ申し込みされた方にはクーポンが発行されますので、

そちらをご利用の上、2クラブ目以降をお申し込みください。

 

 

 

【多読アレゴリア開催期間】

2024冬:2024年12月2日(月)~2025年2月23日(日)

  • 阿部幸織

    編集的先達:細馬宏通。会社ではちゃんとしすぎと評される労働組合のリーダー。ネットワークを活かし組織のためのエディットツアー も師範として初開催。一方、小学校のころから漫画執筆に没頭し、今でもコマのカケアミを眺めたり、感門のメッセージでは鈴を鳴らしてみたり、不思議な一面もある。