巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。
海に舟を出すこと。それは「週刊キンダイ」を始めたときの心持ちと重なる。釣れるかどうかはわからない。だが、竿を握り、ただ糸を落とす。その一投がすべてを変える。
全ては、この一言から始まった。
「週刊近大」(日刊ゲンダイ的な?)としてお教室のことなど、いろいろ記事化できたらいいな…と思いました。(現時点では、一倉のモウソウレベルである。)
< 記事化したくなる事件があるはず、と発刊を決意 >
舟を漕ぎ出したのは、俳句を武器に編集工学をひらく一倉広美。日本伝統俳句協会新人賞を得て、イシス編集学校では師範を務める。問いを立て、日常を編み直す術を、一倉は長く探ってきた。週刊キンダイは、その探求心から生まれた舟だった。
週刊キンダイ vol.001で出会った近大生の声が耳に残っている。
「大学では色んなことを試してみたい」
「サービスデザインや、企画の仕事に興味がある」
「編集に興味がある」
この言葉は最初に釣り上げた一尾だった。小さくとも力強い手応え。編集の海は確かに豊かだと知った瞬間だ。ただ、航海は順調ではなかった。仕掛けを投じても魚影は現れず、ただ波ばかりが広がる夜もあった。筆が進まない。竿を握ったまま、「この道でいいのか」と自問した。
「一倉@最後がなかなか決まらない~」。
原稿の結びを探しながら、頭の中で糸が絡まるように迷った。
「いつものまとめがまとまらないまま、、です…汗」。
「眠すぎて魂が抜けかけているので推敲が微妙ですが、、」
その吐露もまた、荒海に立つ釣り人の素顔である。釣れない時間を抱えながら、じっと待ち続ける。
人間は、完璧ではない。
弱さこそ、その人の強さ。
なぜ、「弱さ」のほうが、「強さ」より深いのか、なぜ、「欠如」のほうが、「充足」よりラディカルなのかということである。
『フラジャイル 弱さからの出発』松岡正剛
弱さこそ、新しい力を生みうる。
そんな時、サッと登場し、シュッと言葉を送る景山番。
稽古Dayの模様も少しいれて、稽古に向かってもらうエールを送りたいですね。
番ボー講評でもマグロワンダフルは大活躍でしたし、そことつないで。
ちょっと考えてみます。
大空を舞い、海に漂う小魚を正確に狙いすまし、獲物を仕留める鷹のように。的確なアドバイスと、引き取る男気。その一言が、迷いの糸をたぐり寄せる。
vol.004にはこう記した。
「マグロだけが、近大ではない。…挑戦し続ける姿勢こそ、近大そのものなのだ。」
近大といえばマグロで名を馳せた大学だ。だが魅力は大物だけではない。ゼミでの小さな実験や、授業でのアイデア出し、編集学校の稽古を導入する新たな試み──そうした“小魚を追う挑戦”こそ近大らしさを形づくっている。大きな挑戦も、小さな挑戦も、その一尾一尾に挑戦の軌跡が宿る。すべてを釣果と見なす眼差しこそ、編集という営みの骨格である。
この言葉もまた、羅針盤になった。
「世界から切り離されていないことに気づいてほしい」
一倉自身が、51守師範代の時に、鈴木学匠からいただいた言葉だ。
海はひとつにつながっている。迷いも、葛藤も、必ず次の波に溶けて、新しい流れを呼び込む。
こうして続いた17回の釣行。糸を結び直すたびに、助け合い、少しずつ深い海へと漕ぎ出した。最後の一投で竿が大きくしなる。水面を割って姿を見せたのは、投じ続けた問いと仲間と共に試行錯誤が形を成した“一尾”である。
週刊キンダイの舟はここで一度、港に帰る。だが航海は終わらない。海はまだ広がり、水平線は果てがない。次の海でどんな魚と出会うか。それを決めるのは、自らの手で投じる一投だ。
この先にはワンダホーと叫びたくなる冒険が待っている。時には、辛く、時には、楽しく。困難があるからこそ、冒険はワクワクする。大学を卒業し、社会という大海原に駆り出されたとき、この15週間での経験は、計り知れない。
竿を置くのではない。新しい海へ、さらに深い水域へ。釣りも編集もつづく。さぁ、これからの日本を背負う近大生たちにエールを送る。
海よりも風を求めて鯉のぼり
近大生よ、鯉のぼれ!
その先は、龍だ!!!!
アイキャッチ・文/稲森久純(55[守]師範代)
週刊キンダイ バックナンバー
週刊キンダイvol.001 ~あの大学がついに「編集工学科」設立?~
週刊キンダイvol.002 ~4日間のリアル~
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
番選ボードレール(番ボー)エントリー明けの56[守]第2回創守座には、教室から1名ずつの学衆が参加した。師範代と師範が交わし合う一座だが、その裏側には学衆たちの賑やかな世界が広がっていた。 師範の一倉弘美が俳句で用法3を […]
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