ISIS 25周年師範代リレー [第51期 南田桂吾 編集工学名人の快挙]

2024/10/13(日)08:45
img
南田桂吾

2000年に産声をあげたネットの学校[イシス編集学校]は、2025年6月に25周年を迎えます。第52期の師範代までを、1期ずつ数珠つなぎにしながら、25年のクロニクルを紹介します。

 

◇◇◇

第51期[守]が開講してまもなく、将棋界では藤井聡太竜王が前人未到の快挙を繰り広げていた。20歳10か月の最年少で名人位を獲得し、羽生善治九段以来、27年ぶり史上2人目の七冠を達成したのだ。

これに引けを取らない快挙でイシス編集学校が誇る若者がいた。それが南田桂吾師範代だ。近畿大学1年生の時にイシス編集学校の存在を知り、アカデミックシアターを監修した人が校長をしている学校だと知り、2年時に基本コース[守]を受講。続く応用コース[破]を経て、3年時には第15期[離]へ進み、2つの特別賞を受賞。その後、師範代養成コース[花伝所]に進み、51期[守]師範代へ。4年時に[破]の師範代を経験、2024年3月には[破]の師範代をやりとげた。千夜千冊に添える図版構成をてがけるチームにも参加し、松岡正剛の方法への探求を継続した。理工学部機械工学科でありながら、編集工学の学びを両立し、大学4年間をかけて編集道を駆け抜けた逸材だ。

 

51[守]師範代時代に見せた強みは集中力だった。個々の回答に対して、全力集中で指南を届けた。同時に、ゲームメイキングの視点が面白い。スーパーマリオをイメージしてゲーム感覚で取り組む指南、教室名にちなんで、ルイジ君・ソージ君のキャラクターを登場させるユニークな指南は、教室を魅了した。学衆全員がリズムにのって稽古をし、いち早く回答を寄せるトップ回答者も、お題のたびに入れ替わった。

南田師範代が、そもそも花伝所に進んだ理由は「松岡正剛の火を継ぐ者として必要だと思ったから」。教室での指南を通じて、「新しいものを生み出すこと」には生まれ持ったアイディア力ではなく、「編集力」なのだと、自ら発見した南田師範代だからこその、躍動感ある遊び心あふれる教室運営の姿があった。

 

南田師範代の編集は止まらない。近大を卒業後、人類史を広く参照し、SFの想像力を積極的に持ち出しながら、ロボット込みの実世界実装に向かうことを目指した。ただひたすらにロボットの開発に明け暮れるロボティクスではなく、人間とロボット(コンピュータ)の将来社会における関係を多様に実践するために、東京大学大学院へ進学。松岡正剛校長の著書『千夜千冊エディション少年の憂鬱』を地で行くような少年っぽさをこれからも失わずに、知の冒険を開花させ、ロボット工学と編集工学の交差点を体現してくれるだろう。

◎師範代メッセージ◎


 

>あのときメッセージ>

OpenAIのGPT-4が公開されて大規模言語モデルの衝撃が社会に拡大するのを横目に、AIが編集力にどう関わるか問われはじめた期。

さらにメモリアルな50期を超えて、5年以内の実現を目指した日本イシス化計画が始まった動き出しの期でもある。

 

>これからメッセージ>

松岡校長の親友であるルイジ君とソージ君は、編集意志を持つ私たちと既存の枠組みを飛び越える「悪だくみ」に共犯する。たくさんの書物から組み合わせと仮説の遊び方をまねび、世界や世界たちのあいだで手を取り合い羽ばたける本来へ。

 

ルイジ・ソージ教室 南田桂吾

 


 

●あの日!あの時!千夜千冊!●

◯母と子と自然環境と共同保育者とのあいだに育まれたもの

1825夜 サラ・ブラファー・ハーディー『マザー・ネイチャー(上下)「母親」はいかにヒトを進化させたか』

...2023年5月25日

◎性的マイノリティを意識した活動

1829夜 工藤万里江『クィア神学の挑戦』

...2023年6月30日

▼ISIS 25周年師範代リレー
第48期 畑本ヒロノブ:深掘りをつづける編集工学の継続者
第47期 中村慧太:急成長する近大のハニカミ王子
第46期 角山祥道:ちょっと頼れる「映画に出てくる方の」ジャイアン
第45期 梅澤光由:編集工学の求道者
第44期 佐藤裕子:すわ、御一新!20年目のすさびぶり
第43期 阿曽祐子:どろんこ遊びのごとく学び遊ぶ
第42期 網口渓太:令和のイシス的バーチャルアイドル
第41期 山田細香:苦行を足場に、見晴台へ
第40期 後田彩乃:物語ることは生きること
第39期 内海太陽:スーツと袴と作業着と ビジネスと古武道の求道者
第38期 大塚宏:牛歩む野辺のひろしや後の月
第37期 山田泰久:編集学校NPOネットワークの先導役
第36期 藤田小百合:愛と気っぷで富山を編集王国に
第35期 福田恵美:圧倒的オラリティが織りなすネットワーク
第34期 奥本英宏:頼れる兄貴はマショウの男
第33期 竹内裕明:本家本元のISIS祭でビジネス編集
第32期 長田陽子:エディストの原型はこの人のもんどりにあり
第31期 敷田信之:義に厚く、知に熱い。野武士のようなメディアマン
第30期 竹川智子:編集工学で”知の倍返し”を
第29期 田端弥生:編集の国に住み着いたアリス
第29期 石原卓也:穏やかさに潜む一種合成の魅力
第28期 真武信一:編集工学はライフワーク
第27期 鵜養保:飄々と方法をぶつけ合う神出鬼没の実験者
第26期 川野貴志:至宝が照らすイシスの10年
第25期 小坂真菜美:「胸の津波」を引き受けて
第24期 渡會眞澄:境界を見つめるラディカル・ウィル
第23期 白木賢太郎:10周年に誕生したレジェンド教室
第22期 ゆう恵朱:世界各国から指南するザ・ナラジアン
第21期 大泉智敬:全身投企する師範代夫婦
第20期 松永真由美:編集を重ねる“感”チェロ奏者
第19期 浅羽登志也:鳴り止まないセッション
第18期 福嶋秀樹:黒革の手帖にしたためた編集的方法
第17期 古田茂:編集第一線で変革期を支える
第16期 大武美和子:暖簾の奥からのぞくウィットあふれる女将
第15期 塩田克博:編集バッカス一時代を築く
第14期 竹島陽子:難波モードで腕がなる
第13期 成澤浩一:一本芯が通った兄貴な師範代
第12期 平山智史:ビジネスを再編集する国際派
第11期 伊藤真由美:指南とは学衆をいきいきとさせるもの
第10期 保坂恭史:編集的自由に向かうビジネスマン師範代
第9期 土井内英子:2期連続で走り抜ける
第8期 鈴木元一朗:編集の型でトップをとったレジェンド
第7期 古川柳子:デジタル化時代の師範代登板
第6期 立岡茂:つらなる熱烈回答ツリー
第5期 島津昌代:教室横断!讃岐大汁講
第4期 堀口裕世:初の師範代面談を経て
第3期 武沢護:唯一の走破者
第2期 川崎隆章:一字一句うちこんだお題
第1期 山田仁:てんやわんやの船出

 

 

アイキャッチデザイン:穂積晴明・山内貴暉

 

  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。