【田中優子の学長通信】No.12 『不確かな時代の「編集稽古」入門』予告

2025/11/01(土)08:00 img
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 この表題は、もうじき刊行される本の題名です。この本には、25名もの「もと学衆さん」や師範代経験者たちが登場します。それだけの人たちに協力していただいてできた本です。もちろん、イシス編集学校のスタッフたちにも読んでもらい、表現を検討してもらいました。

 

 松岡正剛校長の『インタースコア』は、数え切れないほど多くの人たちが関わってできた本でしたね。それほどではありませんが、やはり稽古を経験したかたでないと表現できないことが多々あり、私という著者を超えた領域を本の中に呼び込むことで、完成しました。つまり、この本そのものが一つの「場」です。そしてこの「場」が、さらに多くの学衆さんたちが集まり、わいわいと語り合う場になってほしい、という願いを込めました。

 

 先日第44回入伝式があり、新たな花伝所が始まりました。この花伝所が終わると、また新たな師範代が生まれます。師範代はまた学衆たちと稽古の時間を過ごし、その学衆たちがまた師範代になります。この循環が皆に同じような経験をもたらすかといえば、それは違います。稽古はいわゆる学校教育や学習とは異なり、それぞれの身体(年齢や経験や脳など全てを含めたもの)がそれぞれに受け止め、異なる能力が拓かれ、活かされるからです。私は25人の経験者たちの経験を通して、その多様性に驚きました。

 

 学衆として稽古をして仕事の現場に戻り、そこで稽古を活かす人もいれば、師範代を経験してさらに見事な編集能力を発揮する人もいます。医師、看護師、商社マン、音楽家、学生、編集者、経営者、教師等々、稽古の経験者は、さまざまな仕事に散らばっています。稽古とはどのような経験で、身についた編集能力がどう職場で発揮できたのか、この本から発見することができます。

 

 しかし、それでもごく一部に過ぎません。私自身の経験も書きましたが、それも私個人の経験に過ぎません。そこで、本を通して自分自身はどうだったか、思い起こしてください。さらにその経験を言葉にしてください。稽古の間は「振り返り」を書きましたが、振り返りの繰り返しは、新たな経験をもたらします。

 

 まだ刊行されていないので、予告はここまでにしますね。刊行後もう一度、いくらか皆さんの感想を伺って、また学長通信に書きます。本についての、あるいはそれぞれの稽古経験についての対話や座談を、学長通信でするのも良いかも知れません。次々とインスパイアされながら、イシス編集学校と編集工学研究所という場が、絶えず書籍を刊行している活気あふれる場になることを目指そうと思います。

 

田中優子の学長通信

 No.12 『不確かな時代の「編集稽古」入門』予告(2025/11/01)

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 No.10 指南を終えて(2025/09/01)

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 No.08 稽古とは(2025/08/01)

 No.07 問→感→応→答→返・その2(2025/07/01)

 No.06 問→感→応→答→返・その1(2025/06/01)

 No.05 「編集」をもっと外へ(2025/05/01)

 No.04 相互編集の必要性(2025/04/01)

 No.03 イシス編集学校の活気(2025/03/01)

 No.02 花伝敢談儀と新たな出発(2025/02/01)

 No.01 新年のご挨拶(2025/01/01)

 

アイキャッチデザイン:穂積晴明

写真:後藤由加里



  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。