もやもやをカタチにする――加藤万季のISIS wave #43

2025/01/27(月)07:55
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普段は出版社で広告デザインをメインの仕事としているという加藤万季さん。でも、イシスに入門したのは、仕事のためではないという。ではなぜ?


イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
イシス修了生によるエッセイ「ISIS wave」。今回は加藤万季さんの[破]番外稽古体験を通じた気づきをお送りします。

 

■■破の集大成「全然アートなわたし」

 

 「全然アートなわたし」は、[破]のクロニクル編集術番外稽古だ。これは、言葉では表しきれないエディティング・セルフを図象として表現するものだ。

▲加藤さんは、1772夜『占星術 天と地のドラマ』981夜『かたち誕生』1771夜『神秘主義』の3つの千夜を手がかりに、「全然アートなわたし」を創り上げた。


 魂はどこから来てどこへ帰るのか? 物質的には、人は産道を螺旋状にくぐり抜け母の身体から生まれてくる。人の能力、人生も垂直ではなく螺旋上に、何度か同じ問題にたち返りながらも、レイヤーを重ねて以前とは違う意識でものごとに取り組む。自分の原型をカタチづくるのは、おさなごころ、育った環境。私はそれを暗い森の中に置いた。自身の歴象を、メインテーマとした螺旋上に配置し、終着点、松岡校長(図右上)の手元に「霊性は藝術の種」との言葉を置いた。大いなるものの存在、空中の精気、ギリシア語で言うプシュケー、そういったものをつかまえて人々に伝えたい。
 この番外稽古に取り組んでいる最中に松岡校長の訃報を聴き、月のない夜空に玄月(校長の俳号)が浮かび上がる絵が浮かんだ。魂は天に螺旋を描き、宇宙(そら)に還ってゆく。少しでもそこに自分を昇らせてゆこうと決めた。
 イシス編集学校に入門したのは、自身の奥深くで感じているものを藝術表現として創りだしてゆくために、まずは言葉として捕まえる必要性を感じたから。とらまえ難い稜威をどうにかカタチにしてゆきたい。
 私は子どもの頃の父の死によるトラウマから自閉気味な10代だった。表現することがどうにも苦手なまま大人になった。藝術の最高学府と言われる大学でも、もやもやしている感覚をカタチにしていくその方法については教えてもらえなかった。
 「」を使うことで、隠れている思想をつかまえることを、イシス編集学校で初めて体験し驚いた。意識していなかったが、たくさんの想いや考えがあったこと、稽古のお題に回答していくことに依って自分がこんなにも豊かな感性を持っていたことを知った。もっともっと、気づいていなかった自分を知りたい、表現の高みに昇りたい。[破]では[守]で学んだ38の型を生かしつつ、自分だけの表現に取り組んだ。編集は人生そのもの。編集稽古とは人生をよりよく生きるための力を得るすべだ。「全然アートなわたし」はその集大成となった。宇宙(そら)の光に校長の面影を求めて昇った結果、最高賞の『神月賞』をいただいた。おかげで私は表現することが今生のお題との確信をもち、これに生涯取り組んでいく覚悟ができた。ここからが始まりだ。螺旋はいつまでもどこまでも上昇し続ける。宇宙(そら)に還るその日まで、止まることはないだろう。

松岡校長は、「人生を編集する」のではなく、「編集を人生する」のだと説いた。もちろん「人生する」なんて言葉はない。だがここに込められたメッセージは、「わたし」が人生を支配するのではなく、編集に学び、編集を展き、編集と遊ぶこと――編集そのものを人生とすることなのではないか。今春、55[守]師範代として登板予定の加藤さんは今、そのとばぐちに立っています。

文・写真/加藤万季(52[守]千里万象教室、52[破]イーディQ+教室)

編集/角山祥道

 


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日程:2025年5月12日(月)~2025年8月24日(日)
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  • エディストチーム渦edist-uzu

    編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。