「旗」は古来、何かを指し示すものとしてあった。日本では旗(幡)は神を招き入れるものであり、古代イスラエルでは人々の集まる中心地に旗が掲げられた。古代ギリシャは都市ごとに旗にしるしを描き、戦国武将も海賊も、おのれの旗をあげた。
[守]の師範代たちもまた、それぞれの教室に旗を掲げる。「フライヤー」という名の旗だ。師範代になってまずやることは、フライヤー制作なのだ。なぜか。教室の世界観をイメージで伝えるビジュアル、見る人の「注意のカーソル」をひきつけるキャッチコピー、守の講座や教室の魅力を伝えるボディコピーの三位一体で、自分たちが向かう「南」を示すためにほかならない。
では、10月30日に開講を控える、52[守]の師範代たちは、どんな「旗」で学衆たちを迎えようとしているのか。
18教室のフライヤーの中から際立ったものを、相部礼子、角山祥道の両師範が紹介する。
フライヤーが真っ先にはためく
大和丈紘師範代●ノート結索教室
相部:早さに目を見張りました。52[守]では、フライヤー制作のガイダンスを実施ししたのですが、終了後2時間も経たないうちに「一つ作ってみました」と初稿をアップ。初稿からすでに、蠢き出す情報の音が聞こえてくるようでした。
角山:完成形も遊び心満載です。現代社会を「ふきげんな検索」と見立て、「ゆかいな結索」=編集稽古と対にする。ビジュアルといい、この編集方針に貫かれていましたね。
教室模様がまなこに浮かぶ
高田智英子師範代●語部おめざめ教室
角山:案を提出するたびにビジュアルもボディコピーも変わりました。「捨てる」ことを厭わないのは、高田師範代の強みでしょう。
相部:手描きの目に注目しました。暗闇の中で大きな目が開くと、そこには学衆が集っている様子が。高田師範代には、もう教室の将来像が見えていますね。「編集稽古、目覚めろ我ら」という力強いキャッチコピーも、語部が民衆の心を振るいたたせるかのようでした。
角山:睫毛が「ISIS」なのも隠れたポイントです。
かすかな声に耳をすませて
瀬尾真喜子師範代●即断ピアニッシモ教室
相部:余計なものをそぎ落としたシンプルな線が力強いです。
角山:ビジュアルとしては非常にインパクトのある作品になりました。石井晴美師範代の変速シフト教室といい、町田有理師範代の校長バージョン教室といい、52[守]は、キレのいいビジュアルが揃いましたね。
相部:瀬尾師範代はフライヤーの制作過程で、「師範代になるとはどういうことか」という学びも得ていました。「フライヤーを作る理由」のひとつが、ここにありますね。
編集的自己の生まれる日
野崎和彦師範代●はじき・おはじき教室
相部:真ん中にどんとある「遊」の一文字に、「遊びをせんとや生まれけむ/戯れせんとや生まれけん」の今様が頭に浮かびました。稽古を遊びつくし、編集の世界に新たに生まれなおす体験をするんだ、という野崎師範代の強い意志を感じます。
角山:ソフトを駆使せずに手作業でやり尽くしたところに、「編集」のひとつの形をみました。望むらくは、もっとボディコピーをしっかり書いても……。
相部:フライヤー制作は多くの師範代にとって「未知」の体験です。しかし「仮留め」を恐れず、案をどんどん出していった師範代のフライヤーは、「こんな教室にしたい!」という意気込みも鮮明になりましたね。
角山:しかし、出来上がったフライヤーも、いってみれば「仮留め」。未知の学衆の出会いで、旗の色も形も変わっていくのでしょう。
相部:翻る旗の下、いよいよ52[守]の未知への旅が始まります。
文:相部礼子、角山祥道
アイキャッチ:掲載したフライヤーは、左上から順に、飯田泰興師範代/風月盆をどり教室、内村放師範代/カミ・カゲ・イノリ教室、大濱朋子師範代/白墨ZPD教室、新井隆子師範代/北方ボタニカル教室。
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