番ボーで起こる相互編集―50[守]

2022/12/23(金)08:00
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 1週間で出された回答数は5500を超えた。50[守]第1回番選ボードレールである。学衆と師範代の回答と指南のラリーにより、一種合成された数多の熟語が生み出された。

 今ある熟語は誰かによってつくられたものである。熟語だけではない、あらゆる物事がそうである。既にあるものをあるがままに使うだけでは面白くない。そこから離れて新たな見方を生み出す。それが一種合成の醍醐味でもある。

 お題となった漢字が持つ意味や由来を掬い取りながらイメージを広げていく。問感応答返を重ねることでイメージは遠くへと進み、新たな境地にいざなってくれる。この稽古で国語辞典や類義語辞典を活用した学衆も多い。エディットはコンパイルから始まるのである。これから辞典との付き合い方も変わってくるはずだ。


 学衆を飛躍に導くために、教室に新たなキャラクターが登場することもある。

 鋭いツッコミが持ち味の「大阪大根ブラザーズ・守口と田辺」(モモめぐむ教室)、師範代より厳しくバシバシいくと宣言した「彩子の姉、絵子」(異次元イーディ教室)、目的を遂行するためには手段を選ばない「ジャン=リュック・ピカード艦長」(ここいら普門教室)、歯に衣着せないタイプの古株な子ども「ざしきわらし」(カッパらくらく教室)。古今東西問わず、ワクワクするようなキャラクター達があらわれた。

 しかし、他の教室の師範代達も負けていない。時に味付けを変えながらこれまで稽古した方法や共読を織り交ぜながら指南を届けていった。

 学衆のイメージの殻を破ってもらうために師範代も自らの殻を破っていくのだ。


 教室での稽古を経てエントリーされた全ての作品は別院にも公開された。学衆と師範代の相互編集が込められた作品は、50[守]全員で共読できるのである。千態万様な漢字を目の当たりにし最初に声を挙げた学衆は異次元イーディ教室のMだった。

 

私が「ふふふ、いいなぁ」って思った作品をいくつか。
もし、違った時間に再度眺めたら、きっとまた違った作品を「いいなぁ」って思うような確かな予感があります。
ですから、ここでの出会いも一期一会。

 

 作り手と読み手のモデル交換が別院でも起こった瞬間だった。番匠の景山和浩もそれに応じる。

 

朝見るか、夜見るか。家で見るか、外で見るか。
それだけでも「いいなぁ」は時々で変わってきますよね。
まさに一期一会。

 

 そこから自分の作品の編集プロセスや共読の感想、それぞれの数寄作品の交わし合いが始まった。同朋衆は別院の賑わいを横目に見ながら、印刷・カットした作品をあちこちに動かし、辞書・書籍・千夜千冊を開く。学衆が自ら選びエントリーした496個の作品に対し、ありったけの編集を持って向かっている。

 

 

■次は[守]の出番、第1回番ボースタート―50[守]

 


  • 森本康裕

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