巣の入口に集結して、何やら相談中のニホンミツバチたち。言葉はなくても、ダンスや触れ合いやそれに基づく現場探索の積み重ねによって、短時間で最良の意思決定に辿り着く。人間はどこで間違ってしまったのだろう。
日本列島に猛暑の夏が到来している。世界気象機関は7月27日に観測史上、最も暑い月となる見通しを発表。地球上で12万年ぶりの暑さとなることを指摘する専門家もいる。過酷な気温に負けず、豪徳寺の編集工学研究所では明治から昭和初期の文人・幸田露伴(1867~1947)を読む講義が7月30日に開催された。いつも使っている編工研1Fの本楼のネットワーク環境が不調のため、13時の開始直前に2Fの学林局へ大急ぎで移動。前回の第三輪の最後に示された宿題(露伴の『連環記』を読んで図像化)の発表が第四輪冒頭で行われる。複数の参加者から宿題が提出された中で、受講生である座衆Мと座衆Aと、講師役である輪読師・高橋秀元の交し合いを今回レポートする。
座衆Мの発表が始まった。図像では「自然(じねん)」「生物っぽい?! 露伴の史伝」「男と女の確執の間で」の3つのタイトルで分類された。座衆Мが一番面白いと強調したのは露伴の史伝。虚飾、粉飾を盛り込み、生き物っぽさが出ている。普通の著者が書かない「此の物語は疑わしいかどもあるが、まるで無根のことでも無かろうか」というセンテンスに露伴らしさが出ていた。高橋は露伴が注目した自然(じねん)を賞賛する。これは人間も自然の中に含まれ、等しく、共に生かされている存在との見方だ。そして、高橋はヨーロッパ哲学には自分が入っていないことに触れ、自身が歴史の一員である自覚を持つこと重要であると主張した。歴史を紡いでいる感覚を持ていないことが現代人の不幸であり、様々な社会の問題の要因になっているのだ。社会を編集し、さらに編集を社会にする感覚を持てるようにしたい。
2番目の座衆Aの発表において、左側の図では『連環記』で対になって出てきたワード群に対して、それらのペアの間を露伴が繰り返して論じていた構造を描いたと説明する。前期の輪読座で取り上げた三浦梅園の方法である剖析(ぼうせき)と関係づけつつ、座衆Aは『連環記』の中の既知ワードを見据え、対となる未知ワードを見つけようとするカマエを持ちながら図像化に向かっていたのだ。
一方、右側の図では物語の中で「IF/THEN」の型が何度も出てきていることに注目し、その型を中央に置きながら、周縁に対して事件が歴史となり、感情が信仰になった要素などを配置した。説明を受けた高橋は図像化する際に、文章化できるかどうかのQを示した。具体的な露伴の文章の断片を引きながら仮説的な原理を立て、どこから始めてどこで終わるのかの説明の範囲を決めてから、文体編集を含めて露伴について論じることを勧める。ステレオタイプ化した自然言語系の生成AIであるChatGPTが出力するまとめ的な一般解釈ではなく、未知の露伴論を伴った図像を作るためのヒントを座衆Aに手渡していた。
その後、回線の不調を理由に学林局のカメラをOFFにした暗黒の輪読が行われ、座衆達は高橋から届く声に耳を傾けていた。次回の第五輪は8月27日(日)。輪読座ではアーカイブによる視聴がいつでも可能だ。門戸は常時、誰にでも開かれている。コチラをクリック。
畑本ヒロノブ
編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。
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