ようこそ!2024年新春の本楼エディットツアーへ<体験レポート>

2024/02/03(土)08:00
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 一年で最も寒い時期である二十四節気の最終節「大寒」は1月20日でした。群馬県の温泉地では寒さに負けない男たちが温泉の湯をかけ合うような豪快なお祭りが行われていたようです。

 同じ時期、東京世田谷区の豪徳寺にあるイシス編集学校でも暖かさを呼び込むような「目次読書法」を学ぶエディットツアーが開催されました。日本文化を中心した約2万冊が格納された本棚がある秘密の空間「本楼」において、カジュアルでファッショナブルに読書するための方法の型を使いながらナビゲーターを務めたのは中原洋子多読ジムという講座で松岡正剛の読書術を受講者に伝えるロール「冊師」を受け持っています。

 今回ツアーでは、同じく冊師属性を持つライターの畑本も受講者と椅子を並べて参加しました! 講者一人のもとに10人くらいの学習者が1グループとなって、その日の読み手の順番に従ってテキストの当該箇所を読む江戸の読書会のようなプログラムを冊師の目線(吹き出し)でレポートいたします。

 

 

 

 まず初めに、本を手掛かりにして物事を深く思考し、自らの考えや仮説を組み立てる手段としての「読書」が強調されました。書物の中のメッセージを一方的に受け取るのではなく、メッセージを土台にして、新しい見方を発見するのです。完璧な理解よりも思い切った仮説を立て(アブダクション)、正解を追求するよりも、新たな読みを呼び込むような「問い」の創出が大切なのです。

 提示されたルールに従いつつ、たったの3分間で本楼内の中から書物を選びます。この後のプログラムを円滑に進めるためのおススメは目次の充実した新書でした。

 ・目次がある

 ・小説や写真集以外

 ・今まで読んだことがない

 

 自己紹介タイムがスタート。保険業務のKさんは『日本人であるということ』(福田和也、高木書房)を選んでいました。グローバル社会の中の日本人の位置づけについて疑問に思っていたようです。

選んだ本には外国人について日本について突然聞かれたとしても堂々と語るヒントがありそうです。


 ニュースアプリ制作会社に勤めるAさんは「民衆の美」を主張した柳宗悦が興した民藝に対する興味を持ちながら本棚を巡り、関係づけができそうな『武士道の逆襲』(菅野覚明、講談社)を選択されています。

日本人にはキリスト教に比肩しうる道徳の伝統があるということを強調した新渡戸稲造の『武士道』や、いつだって死んでいる覚悟(常住死身)を求めた山本常朝の『葉隠』を置いて三冊セットを作りたくなりました。


 同じ勤務先のIさんは歴史の中で警察と対立しつつも暗躍してきた組織が現代まで生き延びている理由について知りたくなり、『ヤクザに学ぶ組織論』(山平重樹、筑摩書房)を選びました。

こちらの本に対しては、江戸社会に出現して入れ替わっていったアウトローたちの動向を丹念に追った猪野健治の『やくざと日本人』が参考になりそうです。


 3人とも日本を背景にした書物を選ばれています。AIDA受講中のわたしは第4講で学んだ脳神経外科医・浅野孝雄さんのブッダの世界観に関係づけることができそうな『宗教と日本人』(岡本亮輔、中央公論新社)を手に取りました。

 

 

 方法読書とともにイシス編集学校で学ぶ情報収取の型の1つである「地と図」についての説明がありました。コップという「図」となる情報も、背景や場面や文脈である「図」をお店から工場、陶芸家、洗面台へと次々と変化させることで、商品から製品、作品、水呑と見方が変わります。

 さらに、編集学校で学ぶ三間連結という「ホップ・ステップ・ジャンプ」の型を使いながら、中原と縁の深い軽井沢のイメージを「図」の情報にして、「地」を江戸時代、明治から昭和時代、平成から令和時代に変えたときの見方が紹介されます。江戸時代では参勤交代の宿場町でしたが、避暑地としての役割へと変わり、さらにはゴルフやスキーなどのスポーツのイメージへと変わったようです。

 

 

 選んだ本の目次情報の中から著者が強調したキーワードや、連想されるワード(ホットワード)などを収集し、選んだワードを三間連結などの型を使いながら可視化します。そして、どのような本なのかの仮説を立てたところで、本全体に目を通しました。

 その後、本文を読んで得た内容を自分自身の経験と重ね合わせながら、参加者同士で発見したことを披露します。このとき、一つ前に発表した人の見方をベースにして、自分の見方を連結していました。アナロジーを働かせて読んだ本の中で類似や相似となる部分を探す編集術が使われていたのです。

 

 『宗教と日本人』の帯にあった縄文ブームから始まり、古代の閉鎖性との共通点から江戸時代の鎖国へと繋がりました。さらに明治時代に入って武士道が軍部に利用されるような信仰心が注目され、アウトローの組織の構成員をマインドコントロールにも似ています。

鎖国、信仰心、マインドコントロールを通じて、最初に紹介した1冊目のタイトルに含まれる「宗教」へとイメージ連想が繋がったことで、共読による見方の循環性を感じ取れました!

 

 プログラムの最後に、中原から書物が思考ツールとなる理由が語られました。書物と交際することで世界の中のモノの見方を深め、新たな問いを生むことができますね。

 目次読書で仮説を立てつつ、本文の中の著者の視点を借り、お互いの「地」となる経験を交えつつ共読しました。そのおかげで短時間でも複数の本を読む濃密な時間を過ごせた実感があります。

 基本コース[守]に興味を持った参加者は、どのような稽古がイシス編集学校で行われているのかが一目でわかる紹介動画を見て、次の53期の開講を想いつつ本楼を後にしました。次回のツアーは2月22日(水)に開催予定。申し込みはコチラです。

  • 畑本ヒロノブ

    編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。