昆虫観察には、空間の切り取りに加えて、時間軸を切り裂くハサミをタテヨコ自在に走らせるのもおすすめ。この天使のようなミルク色の生き物は、数十分間の期間限定。古い表皮を脱ぎ捨てたばかりのクロゴキブリです。
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。
受講生のエッセイシリーズ「ISIS wave」の連載30回&アーカイブ化を記念したチーム渦座談会。3日連続公開の最後を飾るのは、「家族」と「わたし」。日常を扱ったエッセイ群をチーム渦で語り直します。
■■無意識でも編集している
角:はい、こちらは家族のシリーズ。
月:〈家族〉も意味の余白が大きい言葉です。
角:家族は誰しもが避けては通れない存在ですが、イシス編集学校の型を通すと、また別のカタチが見えて来ます。
【家族のなかで】
07)稽古の旅・旅の稽古―今野知09)ライターママの三位一体―前田真織
15)新米パパのイクメン日記―坂田裕俊
24)なあにが降って言葉が動く―荒井理恵
角:私のヒットは荒井理恵さんの記事。彼女は子育て中で、社会からもイシスからも離れてしまったという思いを抱えていたタイミングで、書き出すにもかなり悩んだそうです。でも書き出してみたら子どもとの対話の中にも型はあって、自分は編集していたんだ、イシスで学んだ事が消えていたわけではなかったと気づけたというのは、けっこう泣ける話でした。
柳:良いエピソードですね。
角:しかもゲスト編集者として阿曽祐子さんがディレクションしてくれています。
月:書き手の個性を活かしながらのディレクションは難しさもありますね。
角:この「ISIS wave」も、「書きたいけど書けません」と言う人は多いんです。そんなときのアプローチは2つ。好きなことを思い浮かべてもらう→その中で使っている型を探す。もうひとつは好きな型を思い出す→その型を生活や仕事で使っているシーンを思い浮かべる。「ISIS wave」は、型と日常を繋げるたくらみでもあるんです。
月:漫画家でマルチクリエーターの今野知さんも、エッセイでは「型を使わなくなった」と書かれていましたね。でもご本人もうっすら気づいるように、実は使っているんですよね。「渦のひと言」では、〈無意識の編集〉と表現させていただきましたが。
角:書いてもらうことによって、書き手の中の型が蘇るというか、自分の中の方法を確認する行為が起きているんですよ。
月:身体性じゃないですけど、数カ月間あれだけ集中して編集稽古して、何も身体に残らないわけはないですからね。師範代未経験ながらもこうしてエディストで活動している自分自身も実感してます。
▲荒井さんのエッセイには、切実さと発見がたっぷり詰まっています。
■■完璧主義からの脱皮
角:この【不足から始まる】も解釈が広いですね。ある意味みんな不足から始まっているわけですし。
柳:イシス編集学校はそもそも、「編集は不足から始まる」と掲げていますしね。
【不足から始まる】
02)本を売るということ―佐藤伸起05)「仮留め」が挑戦を加速させる―内野絹子
13)「地と図」で手に入れた新しい世界―北村彰規
20)お題と仲間と、時々校長―李康男
25)稽古も仕事も全ては仮留め―瀧澤有希子
27)私たちの中には“編集力”が潜んでいる―高田智英子
月:丸善の外商マンの佐藤伸起さんは、懐疑的だった編集稽古中に発した〈問いの力〉が大きかったですね。
角:すごい告白でした。
月:編集の本質を突いてくれたというか。〈問いから始まる〉という分類軸も作りたかったですが挫折しました(笑)。
角:《仮留め》の内野絹子さんはエッセイは、イシス編集学校の告知に使えそうな記事。
▲内野さんは忙しさを「仮留め」で乗り切りました。
柳:《仮留め》は人気があって、《地と図》と同じくらい良く使われています。
角:軽やかさをもらえるんでしょうね、完璧を手放してもいいんだ、という。一方で仮留めが安直に使われ過ぎていて、最近は、いい加減なものを出してくるって怒ってる指導陣もいますね。あ、これは内緒の話です(笑)。
柳:仮留めなのか、やっつけなのか。
月:仮留めって頭に汗をかくぐらいやって、それでも自己だけでは煮詰まる、非自己を取り入れたいってときに出すものじゃない?
角:しかも仮だから、出したあとも再編集し続けなきゃいけない。
柳:たしかに、仮留めなのに再編集がなかったらまずい。
月:私は仮留めのおかげで、学衆時代に完璧主義から脱せたクチです。
角:完璧主義者って裏を返すと自身の不足を良くわかっている人で、だからこそ勇気がなくなる場合もあるんだけど、背を押してくれるところがあるんですよね、仮留めという方法には。
月:型の力ですね。
角:はい、型の力で座談会もうまくまとまりましたかね(笑)。
チーム渦はまだまだ終わりません。アーカイブ化とこの座談会が再読の機となることを願いつつ、書き手も随時募集中ですので、自薦他薦問わずぜひご相談ください。
◎エッセイ <ISIS wave その先の日常> 原稿募集中!◎
当コーナーのエッセイを募集しています。イシス編集学校の[守]を終
えた方なら、どなたでもOK。どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。
○テーマ:日常(生活、仕事)の中の編集工学
○文字数:400~1000文字程度
○写 真:顔写真、エッセイに即した写真をご提供ください
○掲載先:遊刊エディスト
○連絡先:uzu_isis_edist@fuwamofu.com
【余談――編集後記】
その後もチーム渦ではさまざまな〈問感応答〉が飛び交った。別連載の企画について、エディストに書くことへのモチベーションについて、イシスと社会をつなげるならば、その社会を呼び込むための動線(広報宣伝)とは何か、などなど。
◎座談会バックナンバー
ISIS waveは渦を起こす――チーム渦◎座談会 vol.1
ISIS waveで書き手もうずうず――チーム渦◎座談会 vol.2
ISIS waveで渦を増やしたい――チーム渦◎座談会 vol.3(当記事)
◎アーカイブ
【Archive】ISIS wave コレクション #1-30
構成・文/羽根田月香
編集・レイアウト/角山祥道
チーム渦メンバー/吉居奈々、柳瀬浩之、羽根田月香、角山祥道
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
数学にも社会にも「いい物語」が必要―津田一郎 56[守]特別講義
数学は、曖昧さを抱え、美しさという感覚を大切にしながら、意味を問い続ける学問だ。数学者津田一郎さんの講義を通して、そんな手触りを得た。 「数学的には手を抜かないように、それだけは注意したんです」 講義終了後、学林局 […]
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コメント
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2026-02-24
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2026-02-19
棚下照生。この忘れられたマンガ家が、最近、X(ツイッター)で話題になっていた(なぜかは知らないが)。大人漫画のタッチで劇画を描くという、今となっては完全に絶滅した手法が、逆に新鮮に映るのかもしれない。代表作『めくらのお市物語』は、連載当時、大変な人気で、映画やテレビドラマにもなったのだが、現在では、タイトルに問題アリで、復刊の目途もない。もしも古本屋で見かけることがあったら絶対買いです。
2026-02-17
小川の水底での波乱万丈を生き抜き、無事に変態を遂げた後は人家の周りにもヒラヒラと飛んできてくれるハグロトンボ。「神様とんぼ」の異名にふさわしく、まるで合掌するかのように黒い翅をふんわり広げては閉じる。