発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

数寄を、いや「好き」を追いかけ、多読で楽しむ「大河ばっか!」は、大河ドラマの世界を編集工学の視点で楽しむためのクラブです。
ナビゲーターを務めるのは、筆司(ひつじ)こと宮前鉄也と相部礼子。この二人がなぜこのクラブを立ち上げたのか?それは、物語好きな筆司たちが、過去の大河ドラマを編集工学の型によって紐解き、その魅力を分かち合いたいという思いからです。
大河ドラマを支えたスタッフにも、またドラマあり?! 裏側を教えてくれる本をご紹介します。
*
「村八分」。仲間外れを意味する言葉だ。この言葉を知るきっかけは大河ドラマ「花神」だった。1977年放送、司馬遼太郎原作のこのドラマは、日本近代兵制の祖である村田蔵六(のちの大村益次郎)を主人公とする。蔵六が学んだ適塾の創設者・緒方洪庵の通夜の晩、攘夷論を唱えたことから、同塾の塾生だった福沢諭吉が「あいつを相手にするな」と触れ回ったことによる。小さかった私は、父に「村八分ってなぁに?」と聞いた。父が辞書をひけ、と言ったので眠い目をこすりながら-なぜなら日曜日の夜8時45分は、当時の私には相当に遅い時間だったから-、辞書を引いて村八分の意味を知った。
大河ドラマが歴史に近づく一歩になった、という人が多いのではないだろうか。もし「花神」を見ていなかったら。靖国神社の参道どまん中に立つ大村益次郎像を「なんだろう、これ」としか思わなかったに違いない。失礼を承知で言うならば、幕末を飾る綺羅星のような志士たちの中ではどうしても、一段華やかさに欠ける人物だからだ。
では、なぜ彼が取り上げられたのだろうか。春日太一『大河ドラマの黄金時代』の中で、「花神」のセカンド・ディレクターを務めた村上佑二は、大村益次郎を「まったくそれまで日本になかったリーダー像」だと言った。原作者・司馬遼太郎の「知識を持った一種のテクノクラート、技術官僚が明治維新を制したという見方」を極めて珍しい維新論だとして興味が湧いたと語っている。スタッフの興味が、新しい維新像を生み出すことへとつながったのだ。
大河ドラマに関わってきたスタッフ達の証言を通じて、長く続いているからこそ、挑戦も失敗もあり、また失敗を越えた新たな挑戦が続いてきていることがわかる。「花神」は視聴率は振るわなかったものの、司馬遼太郎は傑作だとしてほめたそうだ。「人間が土足で上がってくるようなところがいい」のだと。歴史がずかずかと動き出し、息づかいをリアルに感じることができる作品だったからだろうか。
何年も経って、靖国神社参拝の折、参道で像を見上げた時、主役を演じた中村梅之助の少し錆びた声が耳に甦ってきたことが忘れられない。
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多読アレゴリア「大河ばっか!」では、このように編集工学の視点から大河ドラマを深く読み解いていきます。クラブ内で語り合いながら、登場人物の成長や葛藤、物語に隠されたテーマを掘り下げ、大河ドラマに流れ込む豊かな支流を一緒に生み出していきましょう。どうぞお楽しみに!
多読アレゴリア「大河ばっか!」
【定員】20名
【開講日】2024年12月2日(月)
【申込締切日】2024年11月25日(月)
【受講費】月額11,000円(税込)
*2クラブ目以降は、半額でお申し込みいただけます。
1クラブ申し込みされた方にはクーポンが発行されますので、そちらをご利用の上、
2クラブ目以降をお申し込みください。
【開催期間】2024冬 2024年12月2日(月)~2025年2月23日(日)以後順次決定
お申し込みはこちらから
https://shop.eel.co.jp/products/detail/765
アイキャッチ画像:大河ばっか!×山内貴暉
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大河ばっか!①:「大河ばっか!」の源へ(キャラクター・ナレーター編)
大河ばっか!③:「大河ばっか!」の源へ(温故知新編)
群島ククムイ(今福龍太監修):Coming soon
千夜千冊パラダイス:Coming soon
身体多面体茶論:Coming soon
音づれスコア:Coming soon
相部礼子
編集的先達:塩野七生。物語師範、錬成師範、共読ナビゲーターとロールを連ね、趣味は仲間と連句のスーパーエディター。いつか十二単を着せたい風情の師範。日常は朝のベッドメイキングと本棚整理。野望は杉村楚人冠の伝記出版。
【多読アレゴリア:大河ばっか!②】「大河ばっか!」の源へ(キャラクター・ナレーター編)
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コメント
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2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。
2025-06-30
エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。
2025-06-28
ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。