2025年4月5日、伝習座に続き、55[守]纏界式が行われた。先日の感門之盟の冠界式で真新しい教室名を手にした師範代は、教室名をコンパイル&エディットして世界観を深め、A4一枚に教室のイメージを凝縮したフライヤーを作成する。そのフライヤー発表の場が「纏界式」(てんかいしき)と名づけられた。『見立て日本』(著・松岡正剛/写真・太田真三)を持ち出し、阿久津師範が開会宣言をする。
「纏い」とは、ふだんとは違うものをカッコよく身につけること。
写真からはりりしさ、決意が感じられる。江戸でいう「意気地」である。
「冠界式」で与えられた教室名を、自分のものとして纏うイニシエーションの場が「纏界式」。90秒の持ち時間で、師範代はそれぞれの教室フライヤーをカッコよく発表した。
トップバッターは、カエル・スイッチ教室加藤則江師範代だ。いきなり聴衆を立たせ、座らせたあとに「何を信じましたか」と問いかける。のっけから相互編集を仕掛けた手腕が見事である。
ゴリ夢中教室菅井明子師範代は、黒地に赤いゴリラのフライヤーが印象的だ。佐治晴夫『宇宙の不思議』を取り出し、にこにこ笑顔で、タイムキーパーが出した「終了」の合図をものともせず語り切った。
三番手は、ヤキノリの香ばしさが漂ってくる辻志穂師範代。ヤキノリ微塵教室の炎には、編集用語が織り込まれている。
田中志穂師範代はアイヌとボームの言葉を持ち出し、山派レオモード教室の世界観を語る。消しゴムハンコで作成した「山」の字が幽玄な雰囲気を漂わせる。
うたしろ律走教室の藤井一史師範代は「纏ううたしろ・ほとばしる律走」とミメロギアする。
桜色のシャツを羽織って登場したのは、類想ゼスト教室の松山香織師範代。ZESTの根底に遊びと自由がある、と宣言した。
マグロワンダフル教室の稲森久純師範代は、港で撮影した映像を届けた。「マグロケット」というニューワードを発する。
異遊トラベルソ教室田中志歩師範代はドイツから。静かな語り口でたっぷりの間を取りながら「もっと自由に」と切実に訴える。
加藤万季師範代(インプロ宝珠教室)は、フライヤーの原画を持参。色のにじみ具合が美しい水彩画だ。
かけはしヒコーキ教室の渋江徹師範代は、就活中の学生や、定年退職直後の人など、具体的なターゲットを設定して[守]をアピールする。
[守]の副読本である『知の編集術』『インタースコア』が飛びだす編集ドロップ缶をフライヤーに描いたのは、たまさかドリトル教室の石塚智美師範代。
同じく缶で編集への愛を語ったのは、連環フィリア教室の長池直之師範代。ヘヴィメタのメタリカのTシャツを纏いながら、ソフトヴォイスで発表する。
斜線オテンバ教室の石田利枝子師範代は、派手と過激をめざした。ペガサスが履く水玉のハイヒールがキュートだ。
第1部、第2部の学長ロールを着替えた酒上夕魚斎教教室の田中優子師範代は、「相互編集」を強調し、これからの教室運営への意気込みを見せた。
「見るな!」と勢いよく発声し、聴衆をぎょっとさせたのは山下雅弘師範代。「“禁”があるから世界がおもしろい」と聴衆を煽る。[守]の開講期間は105日。一日1つ禁を破れば、百禁を越えられる、とフライヤーに不足していた「百」を語りで見事に補った。
ヴィヴィッドな色合いのアスパラガスを描いた手包みソヴァージュ教室の安田奈穂子師範代。情報が多すぎることの不安を編集する。潔く梳き、アスパラソバージュに託したことで堂々としたフライヤーになった。
登壇するなり、緊張した身体をほぐす方法を伝授した佐藤賢師範代(抜力一の糸教室)。ジャケットのポケットからゆで卵を出す演出が巧み。かたい殻を破って、やわらかくなろうと訴える。
(真ん中が佐藤賢師範代)
フライヤーには、師範代のありったけの編集が注ぎ込まれている。多色のクレヨンで重ね塗りされた「歩」の駒。「蛙界変転」から始まる、カエルのたくさんの言い替え。見る人の視線と学びの過程を意識したジグザグの道のり。凝った細部に唸らされ、練った言葉にうっとりする。55[守]の各教室は、早くも個性的に輝き始めた。すごい期になりそう。直感がそう告げる。それぞれの教室が紡ぐ物語に、すでに心が弾んでいる。
◆イシス編集学校 第55期[守]基本コース募集中!◆
稽古期間:2025年5月12日~8月24日
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu
写真:阿久津健(55[守]師範)
北條玲子(55[守]師範)
若林牧子(55[守]師範)
加藤万季(55[守]師範代)
アイキャッチ:阿久津健(55[守]師範)
福澤美穂子
編集的先達:石井桃子。夢二の絵から出てきたような柳腰で、謎のメタファーとともにさらっと歯に衣着せぬ発言も言ってのける。常に初心の瑞々しさを失わない少女のような魅力をもち、チャイコフスキーのピアノにも編集にも一途に恋する求道者でもある。
ちょうど10年前、[離]の太田香保総匠のピアノの話に触発されて、子どもの頃に習っていたピアノレッスンを再開した。そのことを松岡校長はことのほか喜んでくれて、何かの機会で会うたびに「最近どう、やってる?」と話しかけてくれ […]
黒の服に白色っぽいズボンのすらりとした眼鏡の若者が豪徳寺駅に立っている。頭文字A教室の笹本直人師範代だ。7月13日土曜日午後14時40分。事前の案内で時間だけ伝えて日付を忘れるというハプニングがあったものの、なんとかこ […]
関東地方が梅雨明けした日、53守の夜空に3つのオンライン汁講の星が輝いた。そのひとつが、第一回進塁ピーターパン教室汁講。約2時間のあいだに5人の学衆が出入りした、自由な往来の汁講である。総山師範代は、あらかじめ組んでい […]
53期[守]師範による「数寄語り」シリーズの第二弾は、イシス歴16年目という福澤美穂子だ。着物もワンピースも着こなし、粋人と少女とを共在させる福澤は、10年前の師範代時代に学衆の回答に胸キュンしたことも、昨夜の53守の師 […]
【青林工藝舎×多読ジム】大賞・夕暮れ賞「言葉を越えるものを伝えたい」(福澤美穂子)
多読ジム出版社コラボ企画第五弾は青林工藝舎! お題本は、メディア芸術祭優秀賞受賞の傑作漫画『夕暮れへ』。アワードの評者は『夕暮れへ』の著者・齋藤なずなさんだ。エントリー作品すべてに講評がつき、多読ジムSeason14・春 […]