春風に、決意を纏う――55[守]纏界式

2025/04/13(日)12:00 img
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2025年4月5日、伝習座に続き、55[守]纏界式が行われた。先日の感門之盟の冠界式で真新しい教室名を手にした師範代は、教室名をコンパイル&エディットして世界観を深め、A4一枚に教室のイメージを凝縮したフライヤーを作成する。そのフライヤー発表の場が「纏界式」(てんかいしき)と名づけられた。『見立て日本』(著・松岡正剛/写真・太田真三)を持ち出し、阿久津師範が開会宣言をする。

 

「纏い」とは、ふだんとは違うものをカッコよく身につけること。
写真からはりりしさ、決意が感じられる。江戸でいう「意気地」である。

 

「冠界式」で与えられた教室名を、自分のものとして纏うイニシエーションの場が「纏界式」。90秒の持ち時間で、師範代はそれぞれの教室フライヤーをカッコよく発表した。

 

トップバッターは、カエル・スイッチ教室加藤則江師範代だ。いきなり聴衆を立たせ、座らせたあとに「何を信じましたか」と問いかける。のっけから相互編集を仕掛けた手腕が見事である。


ゴリ夢中教室菅井明子師範代は、黒地に赤いゴリラのフライヤーが印象的だ。佐治晴夫『宇宙の不思議』を取り出し、にこにこ笑顔で、タイムキーパーが出した「終了」の合図をものともせず語り切った。

 

 

三番手は、ヤキノリの香ばしさが漂ってくる辻志穂師範代。ヤキノリ微塵教室の炎には、編集用語が織り込まれている。

 

田中志穂師範代はアイヌとボームの言葉を持ち出し、山派レオモード教室の世界観を語る。消しゴムハンコで作成した「山」の字が幽玄な雰囲気を漂わせる。


うたしろ律走教室の藤井一史師範代は「纏ううたしろ・ほとばしる律走」とミメロギアする。

 

桜色のシャツを羽織って登場したのは、類想ゼスト教室の松山香織師範代。ZESTの根底に遊びと自由がある、と宣言した。

 

マグロワンダフル教室の稲森久純師範代は、港で撮影した映像を届けた。「マグロケット」というニューワードを発する。

 

異遊トラベルソ教室田中志歩師範代はドイツから。静かな語り口でたっぷりの間を取りながら「もっと自由に」と切実に訴える。


加藤万季師範代(インプロ宝珠教室)は、フライヤーの原画を持参。色のにじみ具合が美しい水彩画だ。

 

かけはしヒコーキ教室の渋江徹師範代は、就活中の学生や、定年退職直後の人など、具体的なターゲットを設定して[守]をアピールする。

 

[守]の副読本である『知の編集術』『インタースコア』が飛びだす編集ドロップ缶をフライヤーに描いたのは、たまさかドリトル教室の石塚智美師範代。

 

同じく缶で編集への愛を語ったのは、連環フィリア教室の長池直之師範代。ヘヴィメタのメタリカのTシャツを纏いながら、ソフトヴォイスで発表する。

 

斜線オテンバ教室の石田利枝子師範代は、派手と過激をめざした。ペガサスが履く水玉のハイヒールがキュートだ。

 

第1部、第2部の学長ロールを着替えた酒上夕魚斎教教室の田中優子師範代は、「相互編集」を強調し、これからの教室運営への意気込みを見せた。

 

「見るな!」と勢いよく発声し、聴衆をぎょっとさせたのは山下雅弘師範代。「“禁”があるから世界がおもしろい」と聴衆を煽る。[守]の開講期間は105日。一日1つ禁を破れば、百禁を越えられる、とフライヤーに不足していた「百」を語りで見事に補った。

 

ヴィヴィッドな色合いのアスパラガスを描いた手包みソヴァージュ教室の安田奈穂子師範代。情報が多すぎることの不安を編集する。潔く梳き、アスパラソバージュに託したことで堂々としたフライヤーになった。

 

登壇するなり、緊張した身体をほぐす方法を伝授した佐藤賢師範代(抜力一の糸教室)。ジャケットのポケットからゆで卵を出す演出が巧み。かたい殻を破って、やわらかくなろうと訴える。

 

  (真ん中が佐藤賢師範代)

 

フライヤーには、師範代のありったけの編集が注ぎ込まれている。多色のクレヨンで重ね塗りされた「歩」の駒。「蛙界変転」から始まる、カエルのたくさんの言い替え。見る人の視線と学びの過程を意識したジグザグの道のり。凝った細部に唸らされ、練った言葉にうっとりする。55[守]の各教室は、早くも個性的に輝き始めた。すごい期になりそう。直感がそう告げる。それぞれの教室が紡ぐ物語に、すでに心が弾んでいる。


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稽古期間:2025年5月12日~8月24日
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写真:阿久津健(55[守]師範)

   北條玲子(55[守]師範)

   若林牧子(55[守]師範)

   加藤万季(55[守]師範代)

アイキャッチ:阿久津健(55[守]師範)

 

  • 福澤美穂子

    編集的先達:石井桃子。夢二の絵から出てきたような柳腰で、謎のメタファーとともにさらっと歯に衣着せぬ発言も言ってのける。常に初心の瑞々しさを失わない少女のような魅力をもち、チャイコフスキーのピアノにも編集にも一途に恋する求道者でもある。

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