ISIS 25周年師範代リレー [第50期 三浦一郎 編集の熱気球となって世界にさしかかる教育者]

2024/10/03(木)08:45
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三浦一郎

2000年に産声をあげたネットの学校[イシス編集学校]は、2025年6月に25周年を迎えます。第52期の師範代までを、1期ずつ数珠つなぎにしながら、25年のクロニクルを紹介します。

 

◇◇◇

2022年10月、コロナ禍が終わりを告げようとしていた。日本政府が、新型コロナウイルスの水際対策を緩和、海外から入国する人の数も大幅に増え、外国からの旅行客の入国が解禁された。

 

そんな折に開講となった50[守]指導陣の中に、三浦一郎師範代の姿があった。先が見えないコロナ禍のなか、果敢にも姫路からチェコへの赴任を果たしたばかりの三浦だった。家族とともにプラハに移り住み、同時に師範代を引き受けるという、並々ならぬ覚悟の時期を過ごしたのだ。

 

三浦師範代は現在、現地の日本人学校で教鞭をとる。もともと姫路で教員をしていた時に、学校に科学道100冊プロジェクトがやってきたことが編集学校に入門するきかっけとなった。科学道とは、理化学研究所と編集工学研究所の共同プロジェクトで、書籍を通じて科学者の生き方・考え方、科学のおもしろさを伝える取り組みだ。三浦師範代の学校には、学林局から佐々木千佳局長がワークショップに出向き、校庭から子供たちとともに気球を飛ばした。気球を前にした子供たちが得たイメージの膨らみを活かしながら、学びに結実させていく手腕に、編集の本髄をみた。この時、教員・三浦に、編集工学への炎が灯された。

 

三浦師範代の教室運営は群を抜いていた。もともと教員という職業柄、どうすれば場を動かせるのかが常によく考えられている。開講直後、学衆の質問に師範代が答えるのでなく、他の学衆に答えることを促し、「逆質問にみんなで答えよう」という掛け声で、一気に交流が始まった様子は鮮やかだった。学衆からは、教室に参加する一人ひとりの事情をよく汲んでくれ、後ろ向きであることを否定しない器の大きさが魅力であり、後ろ向きでも、徐々に前に進む方法が見つかるよう指南することを評されている。

 

欧州の編集学校ネットワークを活かし、チェコから感門之盟へオンライン参加し、欧州ビールかけで祝した姿も、記憶に新しい。三浦師範代が海外赴任を終えて、再び日本へ戻ってくる日も近い。25周年を迎えたイシス編集学校に欧州の風を吹き込んで、編集工学探求の熱気球をいくつも飛ばしてくれるだろう。

◎師範代メッセージ◎


 

>あのときメッセージ>

「三笘の1ミリ」が世界を大きく揺るがした2022年後半。否が応でも節目を感じずにはいられない50[守]というタイミングで集った学衆、師範代をはじめとする指導陣。「何かを仕掛けてやろう」というエンジンを噴かす音がいたるところから聴こえてきていた。

 

>これからメッセージ>

小さな小さな兆しをやさしく捕まえて、編集に遊び、社会に解き放つ。巻き込み上手、そして何よりも巻き込まれ上手でありたい。巻き込み、巻き込まれることは、その言葉の通り「渦」を生み出す。

 

参画さしかかる教室 三浦一郎

 


 

●あの日!あの時!千夜千冊!●

『心とことばの起源を探る 文化と認知』

◯フラジャイルな幼年期に触知する

1816夜 マイケル・トマセロ 『心とことばの起源を探る 文化と認知』
…2023年2月06日

1813夜 アンガス・フレッチャー 『アレゴリー ある象徴的モードの理論』

◎アレゴリーはコンティンジェンシー(別様の可能性)の切り札

1813夜 アンガス・フレッチャー 『アレゴリー ある象徴的モードの理論』...2022年12月31日

▼ISIS 25周年師範代リレー
第48期 畑本ヒロノブ:深掘りをつづける編集工学の継続者
第47期 中村慧太:急成長する近大のハニカミ王子
第46期 角山祥道:ちょっと頼れる「映画に出てくる方の」ジャイアン
第45期 梅澤光由:編集工学の求道者
第44期 佐藤裕子:すわ、御一新!20年目のすさびぶり
第43期 阿曽祐子:どろんこ遊びのごとく学び遊ぶ
第42期 網口渓太:令和のイシス的バーチャルアイドル
第41期 山田細香:苦行を足場に、見晴台へ
第40期 後田彩乃:物語ることは生きること
第39期 内海太陽:スーツと袴と作業着と ビジネスと古武道の求道者
第38期 大塚宏:牛歩む野辺のひろしや後の月
第37期 山田泰久:編集学校NPOネットワークの先導役
第36期 藤田小百合:愛と気っぷで富山を編集王国に
第35期 福田恵美:圧倒的オラリティが織りなすネットワーク
第34期 奥本英宏:頼れる兄貴はマショウの男
第33期 竹内裕明:本家本元のISIS祭でビジネス編集
第32期 長田陽子:エディストの原型はこの人のもんどりにあり
第31期 敷田信之:義に厚く、知に熱い。野武士のようなメディアマン
第30期 竹川智子:編集工学で”知の倍返し”を
第29期 田端弥生:編集の国に住み着いたアリス
第29期 石原卓也:穏やかさに潜む一種合成の魅力
第28期 真武信一:編集工学はライフワーク
第27期 鵜養保:飄々と方法をぶつけ合う神出鬼没の実験者
第26期 川野貴志:至宝が照らすイシスの10年
第25期 小坂真菜美:「胸の津波」を引き受けて
第24期 渡會眞澄:境界を見つめるラディカル・ウィル
第23期 白木賢太郎:10周年に誕生したレジェンド教室
第22期 ゆう恵朱:世界各国から指南するザ・ナラジアン
第21期 大泉智敬:全身投企する師範代夫婦
第20期 松永真由美:編集を重ねる“感”チェロ奏者
第19期 浅羽登志也:鳴り止まないセッション
第18期 福嶋秀樹:黒革の手帖にしたためた編集的方法
第17期 古田茂:編集第一線で変革期を支える
第16期 大武美和子:暖簾の奥からのぞくウィットあふれる女将
第15期 塩田克博:編集バッカス一時代を築く
第14期 竹島陽子:難波モードで腕がなる
第13期 成澤浩一:一本芯が通った兄貴な師範代
第12期 平山智史:ビジネスを再編集する国際派
第11期 伊藤真由美:指南とは学衆をいきいきとさせるもの
第10期 保坂恭史:編集的自由に向かうビジネスマン師範代
第9期 土井内英子:2期連続で走り抜ける
第8期 鈴木元一朗:編集の型でトップをとったレジェンド
第7期 古川柳子:デジタル化時代の師範代登板
第6期 立岡茂:つらなる熱烈回答ツリー
第5期 島津昌代:教室横断!讃岐大汁講
第4期 堀口裕世:初の師範代面談を経て
第3期 武沢護:唯一の走破者
第2期 川崎隆章:一字一句うちこんだお題
第1期 山田仁:てんやわんやの船出

 

 

アイキャッチデザイン:穂積晴明・山内貴暉

 

  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。